2024年6月22日土曜日

Just Because I’m A Woman - Songs Of Dolly Parton

Me’Shell NdegéOcello
“Two Doors Down”

2003年。ドリー・パートン Dolly Rebecca Parton へのトリビュートであるアルバム。ドリーの曲はそもそも誰彼となくカバーされて、多数ヒットもしていました。
映画の主題歌になって特大ヒットした “I Will Always Love You” とか、Zapp まで濃厚なカバーを披露していましたが。カントリー畑とソウル畑は隣りあわせの結びつき、という良い例でもあります。
こちらのアルバムは、そのドリー本人まで参加で一曲歌っていますから、まさに公認でしょうか。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello が、数あるドリーの曲の中でもこれをカバーすることになったのは、元曲の方に2バージョンがあって、アルバム版と、加えてディスコティックなシングル盤向けバージョンがあるから、でしょうか。ミシェルにぴったり、なんて単純な理由かもしれません。
なんにしても、ミシェルはこの歌を自分らしい色に染めあげていますけど。

元曲にある、いつまでも閉じこもっていないで(ふたつドアの向こうの部屋で開かれている)パーティに、思いきって顔を出しにいこう、という前向きさ、健康さはまるで失せています。
同じ曲、歌詞でも、立場の違う者が歌っているという感じ。

同じ2003年に発表されたミシェルのアルバム “Comfort Woman” は、ミシェルと Allen Dariest Cato のプロデュース、それにドラムのクリス・デイヴ Chris Dave を交えた三人が核となって作られたものでした。
ドリーをカバーしたこちらの一曲では、クリス・デイヴとミシェルの二人のみ。ドラム以外の、ギター、シンセ、プログラム、それにボーカルをミシェルが担当している形となっています。
この顔ぶれでの流れを引き継いで、今回もまたソリッドな。歌のバックでざくざくと鳴るミシェルのギターも印象的、ロックしてる感じ。

さてミシェルの色といいますが、説明するとなると難しい。



2024年6月8日土曜日

Disappearing Acts

Black Beautiful & Independent (Remember)

2000年。米国のテレビ放映向け映画、日本語版は「フェイス・イン・ラブ」の邦題でDVDとビデオ化もされた、というドラマのサントラ盤。
ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello の、アルバムには未収録の一曲がここに。

ミシェルの作、プロデュースはミシェルと Allen Dariest Cato 。
二人としては、先に映画「ベストマン」のサントラ盤 “The Best Man: Music From The Motion Picture”(1999年)に収録された、ミシェルの “Untitled” に続いての仕事です。曲のタイトルは “Remember” の場合もあり。

シンプルなビートに、起伏の少ないメロディ。ほのかな甘さと、セクシャリティ。じわじわと染みこんでくる良い曲であります。
抑えに抑えた音ですが、それでもいける、という自信もうかがえるような。

ライブでも主にギターを担当することが多い Allen Dariest Cato は、ミシェルとはバンド仲間で身内のようなものでしょうか。この二人が組むと、独特のソリッドな音になるようです。かなり、貢献の男。

この後、二人は “Cookie: The Anthropological Mixtape”(2002年)、続いて “Comfort Woman”(2003年)と二枚のアルバムをプロデュース。外部からのプロデューサーの力を借りることなく、自分たちでまとめ上げることに。
ファンカデリック Fankadelic の曲のカバーを含んだり、ラッパーをゲストに招いたり、あるいはレゲエしながら、自分たちにしか出せない音で、ひとつの節目になるような作品にまとめ上げます。




2024年5月25日土曜日

The Hurricane (Music from and Inspired by the Motion Picture)

Me’Shell NdegéOcello
“Isolation”

2000年。映画「ザ・ハリケーン」のサントラ盤。レイ・チャールズ、ボブ・ディランら超大物からそれなりの名前が並ぶコンピ盤。
ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello が提供した一曲は、ミシェルの作、プロデュースはミシェルとデヴィッド・ギャムソン David Gamson(ミックスも)。クレジットの記載はこれだけで、詳細はわからず。

演奏は二人だけなのでしょうか。
タイトルの通りに、孤立、隔絶された状態について、ミシェルがつぶやいていきます。シンプルなビートに、不穏なムード、誰かをなじるというよりは、現状への不満をタラタラとぼやいているような。

隔絶といえば、例えば男女の性差や、宗教観や国籍の違い、あるいは牢屋の中と外とか、状況もさまざまでしょうけれど。当事者として、分け隔てられた側から歌われる歌詞は、簡単には翻訳できず。意訳というか解釈もかなり必要な。
ミシェルの曲の中では、音楽よりも歌詞、言葉の方に寄った一曲でしょうか。とはいえ、まるでブーツィーか、というブチブチのベースも聴かせていますけど。

歌の後ろでずっとハーモニカが聴こえますが、ミシェルとも何度か共演しているグレゴア・マレ Grégoire Maret かもしれません。
ミシェル自身のアルバムには未収録。これ以降に、デヴィッド・ギャムソンとの仕事はなかったかと。



2024年5月18日土曜日

Scritti Politti “Anomie & Bonhomie”

Die Alone
The World You Understand (Is Over + Over + Over)

1999年。スクリッティ・ポリッティはグリーン・ガートサイド Green Gartside を中心とした英国のロック・グループ。80年代に、彼らと密接に関わっていたデヴィッド・ギャムソン David Gamson が、このアルバムの数曲にプロデュースやミックスで参加。その内の2曲に、ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello もベースとボーカルで参加。

デヴィッド・ギャムソンは、ミシェルのファースト・アルバム “Plantation Lullabies”(1994年)とセカンド・アルバム “Peace Beyond Passion”(1996年)にプロデュース等で関わった人物。
アルバムの他にも、ミシェルとはサントラや企画もの等のコンピ盤のためや、ゲストに招かれたりといった単発の仕事を数多くこなしてきた人物。
両者とも多方面の幅広いジャンルに対応できますし。お互いに招いたり招かれたりの協力関係だったかと思われますが。

このアルバムには、ミックスでボブ・パワー Bob Power や、ウェンディ&リサのウェンディ・メルヴォイン Wendy Melvoin 、それに Allen Dariest Cato といった方々も参加。ミシェルの仕事でもその後も見かける顔ぶれです。
2曲ともにミシェルのベースが走って、ボーカルも少々。特に “Die Alone” の冒頭1分ちょっとはミシェルも引き立って、このパートがずっと続いても良いのですが。

この年のミシェルの三作めのアルバム “Bitter” のプロデュースはクレイグ・ストリート Craig Street に。



2024年5月3日金曜日

Indigo Girls “Come On Now Social”

We Are Together
Compromise

1999年。インディゴ・ガールズ Indigo Girls はジョージア州アトランタ出身の女性デュオ。小学校で出会って以来のつきあいという二人だそうですが、多くにフォーク・ロックなどと紹介されております。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello は2曲にベースで参加。さわやかめの曲に激しめの曲と、デュオそれぞれの持ち味が活かされたという2曲ですが。
ミシェルに関しては、さほどの聴きどころは認められないような。

ベースのプレイはズビズビといつも通りの手抜きなし。ですが両曲ともに、これといって印象に残らず。使い方でしょうか。たまたまやっていた曲に参加してもらった、なんてこともあるでしょうから。

ところでライナーノーツの最後のページには、“Resources” として九つほど活動団体の名前とアドレス、活動内容の紹介が記載されています。いずれも弱者や少数派を支援するような団体等のようで、例えば筆頭に挙げられているのは、
Women’s Action for New Directions (WAND)

(楽曲よりも)こんなところでミシェルとつながっているのかも、なんて思ったりもして。



2024年4月27日土曜日

Holly Palmer “Holly Palmer”

Come Lie With Me
Lickerish Man

1996年。ホリー・パーマーは米国の女性シンガー。フォーキーながら案外ダンサブル、穏やかめのロック、といったところのデビュー作。2曲にミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello が参加。

デビュー作という割には、ジャケットが地味なイラスト、ポートレートの写真じゃないの的な、カントリーのような、70年代のような。
ホリー・パーマーはカリフォルニアはロサンゼルスを拠点に活動、生まれも海に面した街サンタモニカだそう。
ミシェルといえば、どちらかといえば東海岸なイメージでしょうか。陽光きらめく西海岸の女性ボーカルとの組み合わせでありますが。あくまでイメージですが、米国の東と西というのは、ジャズでもヒップホップでも匂いや肌ざわりの違いがつきものでした。

強烈なキャラとか声高になにか主張するといったタイプではないホリー・パーマーですから、この2曲もさらりと聴かせてくれる良い曲。
“Come Lie With Me” の出だしで、歌の裏にベースが入ってくる瞬間などはミシェルの細やかなプレイが聴けて、“Lickerish Man” では童謡のようなメロディをプリンスを思わせるようなファンク仕立てに。
なおこの2曲にはマーク・プラティ Mark Plati も参加、90年代にボウイと多くの仕事を行った彼とのつながりで、後にボウイのアルバム “hours...” と、そのツアー(1999年)にホリーが参加することになったのかも。

ミシェルにとってはマドンナだろうとホリーだろうと(呼ばれさえすれば)関係ないのでしょうけれど、彼女が後に三作めのアルバム “Bitter”(1999年)のプロデュースを、クレイグ・ストリート Craig Street に頼むことになるのも、案外こんなところからつながっていったのかもしれません。



2024年4月20日土曜日

Madonna “Bedtime Stories”

I’d Rather Be Your Lover

1994年。ヒップホップ全盛という時期のマドンナのアルバムに、ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello がベースのゲスト・プレイヤーとして、一曲に参加。

contains a sample of “It’s Your Thing” performed by Lou Donaldson, used courtesy of Blue Note Records

ルー・ドナルドソン Lou Donaldson の “It’s Your Thing” をサンプリングしているよとのこと。元々はアイズレー・ブラザーズ The Isley Brothers 1969年の代表曲ですが、これを同じ年にジャズ屋のルーがカバーした、インスト・バージョンであります。
えらくモダンなセンスといえましょうか。チャールズ・アーランド Charles Earland のオルガンにもしびれます。
これが収録されているルー・ドナルドソンのアルバム “Hot Dog” 自体が、ヒップホップ好きにはたまらない定番ネタの宝物庫で。

“It’s Your Thing” をストレートに使ったこのトラックに、ミシェルもカッコ良いベース・ラインを乗っけています。

Special guest on bass and in your face: Me’Shell NdegéOcello

クレジット上で、ベースはゲストとしてミシェル、どんなもんだ!みたいな紹介をしておりますが、それも納得のプレイですが。
どうだといっているくらいなのだから、これで終わらせずに、もう少しミシェルを目立たせても良いでしょ、とも。もっとベースを前に出したインスト版、あるいはもっと自由にプレイさせたジャズ版、そんなバージョンがあれば理想ですが。このトラックがすべて、みたいな曲ですし。

それにしても主役のボーカル、無表情であります。



2024年4月7日日曜日

John Mellencamp / Me’Shell NdegéOcello “Wild Night”

1994年。ジョン・メレンキャンプ John Mellencamp とミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello 連名のシングル。

ジョン・メレンキャンプはアメリカ合衆国はインディアナ州シーモア出身なのだとか。
ほぼ白人ばかりの州とか、ラストベルトとか、草の根の置いてけぼりされた人たち、共和党にトランプ氏とか、そっち系のキイワードにも事欠かないかと思いますが。

このジャケットのモノクロ・ポートレートにも、驚かされた方が多いような気がしますけれど。

曲は、ヴァン・モリソン Van Morrison が1971年に発表したロックンロール・ナンバーのカバー。
Wild night is calling 荒っぽい夜が呼んでるぜ、という書を捨てよ、町へ出よう的な歌詞。イントロのミシェルによるベース・ラインからしてワクワクのノリノリの。ちょっとモータウンっぽいアッパーな誘われかたで。

ミシェルにしてみればファースト・アルバムを出した年、すでに様々な人と共演していて、すでに相手を選ばないわけでありますが。それでもこの仕事は小さくはなかったのでは。
(珍しくも)かなり弾けたボーカルも聴けて楽しいですし、それだけでも特別です。

John Mellencamp “Dance Naked”


Wild Night
The Big Jack

1994年。メレンキャンプ氏の同年のアルバムには、もう一曲ミシェルが参加しています。 こちらも一直線なロックンロール・ナンバー。ミシェルは歌わずにノリの良いベースに専念。歌詞に、ビジネススーツで固めた日本人、なんて一節があります。

こちらのアルバムのジャケットも、インパクト大。ミシェルとのポートレートといい、メレンキャンプ氏としては何かチャレンジだったかと思われます。
そしてこの後も、接点もなさそうな、縁遠いような界隈の方々とも広く交流していくミシェルであります。



2024年3月30日土曜日

Marcus Miller “Tales”

Rush Over

1995年。マーカス・ミラーのアルバム、その内の一曲にミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello が参加。
マーカスとミシェルの共作という一曲ですが、彼女はボーカル、シンセ・ソロとクレジットあり。ミシェルらしい、暗いながら美しい曲、といいたいところですが、どうもそこまでは。ひと味足りない按配、でしょうか。

有名ベーシストのマーカスですが、いわゆるフュージョンな音、ベースが主役のお披露目会というアルバムであります。
どの曲にしても、とにかくベースを聴かせたくてしょうがない、というご様子。ミックスにしても、そこまで、というほどベースの音がでかいし。押しの強さは充分、まるでヒップホップのラッパー並み。

ミシェルが、歌に語りとやっていながら、印象に残らないようなのも、むべなるかな、でありましょうか。惜しいかな、聴かせたいばかりで、別に踊らせたいわけではなく。



2024年3月16日土曜日

Eric Benét “A Day In The Life”

Ghetto Girl

1999年。エリック・ベネイのセカンド・アルバム。プロデューサーやプレイヤー、ボーカル等々のゲストが色々と招かれていますが、その内の一曲にミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello もベース、ボーカルで参加。

ミシェルのベースに関しては、この曲では主張することはなく。シンセ・ベースのような音をボンボンボンと鳴らしていますが、それ以上の進展はなく。

歌ものアルバムなのだから当然なんでしょうけれど、歌が主役という主従関係がかっちりと固定されて揺るぎませんので、もういっそ無駄な音は出さない方が良し、と徹したのか、あるいはカットされたりしたのか。
ミシェルの声も少し登場しますが、さほど活かされているとは。

曲のタイトルや歌詞にあるゲットーの彼女、とそのように呼びかけられて、これはピンとくるのでしょうか。ほめ言葉なのでしょうか。
リアルな彼女が必要なんだと訴えかけますが、それもたっぷりの感情をこめて揺るぎなく歌われているだけに、どうなんでしょうか。



2024年3月9日土曜日

Lynden David Hall “Medicine 4 My Pain”

Sexy Cinderella

1997年。ロンドン生まれのリンデン・デイヴィッド・ホール、UK発のデビュー・アルバム。本人のプロデュースですが、数曲にボブ・パワー Bob Power もプロデュース、ギター、ミックスで参加。そのつながりか、ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello がこのシングル盤にもなった曲に参加、ベースをプレイ。

この曲、ディアンジェロ D’Angelo のあの曲 “Brown Sugar” を連想させます(と言いきって構わないでしょう)、どちらもボブ・パワーがらみということでは、その1995年のディアンジェロのデビュー・アルバムに、もしやミシェルが参加していたかもという可能性が(少しは)あったのか、なかったのか、と想像してしまうのですが。

ディアンジェロの “Brown Sugar” を含むアルバムを今聴きますと、ジャズの部分が隠し味という以上に強く感じられるような。その辺りは、こちらのリンデンの曲には匂わないような。
リンデン・デイヴィッド・ホールはディアンジェロに比べれば薄口の旨味(と言いきって構わないでしょう)、それだけに、日本ではまた独自の人気を集めたかもしれませんけれど。

ミシェルのベースに関しては、この曲では主張することはなく。文字通りにベーシックな音(だけ)で縁の下を支えていますが、それ以上、そこから出てくることもなく。
 (惜しいことに)もしやディアンジェロのバックを彼女が務めていたらどんな音に、という模擬にでもなっていたら、という淡い期待にはまったく。

セクシーなシンデレラという表現ですが、これは、UKではピンとくるのでしょうか。ほめ言葉なのでしょうか。
もしかするとブラックのシンデレラということを伝えたかったのかもしれませんが、この曲ではそんなことを歌っていることはなく、ただ逃げないでという歌詞だけのようです。



2024年3月2日土曜日

Inner City Blues: The Music Of Marvin Gaye

Nona Gaye
“Inner City Blues (Make Me Wanna Holler)”

1995年。1984年にマーヴィン・ゲイ Marvin Gaye が亡くなってから10年あまり、モータウンからリリースされた(邦題もそのままの)マーヴィン・ゲイ・トリビュート。ロック、ポップス方面から参加の顔ぶれも半分ほどというコンピ盤。マーヴィンのファンやR&B好きに絞らない幅広い層向け、というのもモータウンらしいでしょうか。
オープニングを飾る曲を歌うのがノーナ・ゲイ Nona Gaye です。
父親がマーヴィン・ゲイ、祖父はジャズ・ミュージシャンのスリム・ゲイラードだというから、これはおそろしい限り。まさに叫び出しそう Make me want to holler! です。

1971年に発表されたマーヴィンのこの代表曲、2024年の今年に聴いても突きつけられるような歌詞を持っていますが、こちらのカバーは。
プロデュース、ベースはミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello によるもの。
そして副プロデュース、ギターのウェンディ・メルヴォイン Wendy Melvoin と、キーボードのリサ・コールマン Lisa Coleman という、つまりウェンディ&リサも参加。
また、ハイハットとして Terry Linn Carrington(Terri Lyne Carrington)やパーカッション等にジャズ屋の名前が。顔ぶれを見ても楽しそうな、単なるゲスト・プレイヤーの集まりではないような。ミックスはボブ・パワー Bob Power です。

マーヴィン・ゲイに関しては、これまでも歌詞に名前が出てきたり、ベース・ラインがとある曲そっくりに似せた曲があったりと、ミシェルも思い入れが強いのではと思われますが。
トリビュートに参加できて、この曲のカバーを仕切ったことは喜ばしい限り。ではありますが、これよりさらに、これ以上に、となると。
もしもミシェル自身がボーカルをやって、もっとメンバー各自が好きにプレイしていたら、などと想像してしまうことも確かで。やっぱり、そちらを聴いてみたい気持ちに。

曲がエンディングを迎える最後の引き際になって、静かにミシェルの声が聴こえます。Listen, Listen to me と歌います。Yes, もちろん貴女を聴いています。





2024年2月17日土曜日

Ain’t Nuthin’ But A She Thing

Vanessa Williams
“Open Your Eyes You Can Fly”

1995年。ヴァネッサ・ウィリアムス Vanessa Williams は1983年、アフリカ系アメリカ人初のミス・アメリカに選ばれた(ウィキペディアより)という快挙を成し遂げた後、ポップス畑で活躍する歌手(ディズニー映画の主題歌まで)、出演作多数の女優(日本のCMにまで登場)と活躍、本国では超がつくほどの有名人でしょうか。

そのような方が歌うバックで、ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello がベースをプレイ。
曲そのものは明快です。それまで低いところを悶々とウロウロしているような風情だったのが、サビに入った途端に、視界がぱっと開けて、大空に向けて舞い上がるようなメロディに。明るく歌われているのがタイトルのままの歌詞 “Open Your Eyes You Can Fly” 、ポップです。わかりやすい展開、さわやかなボーカルです。

アルバムは、(ジャケットを見るとまるでカントリー系みたいな絵柄ですが)幅広くから女性歌手ばかりを集めたコンピ盤。女性の権利のためのチャリティー作品だそうで、日本版には日本人女性の曲も収録されているようです。各曲がこのための新曲だったのかは不明ですが。
曲の冒頭にはミシェルじゃないかと思われる声で、チャンスをつかむことを怖れないでと聴こえます。アルバムの趣旨を知った上での参加なのでしょうか。彼女のファースト・アルバムが発表されたのが前年(1994年)のことでした。

(ミシェルのファンとはいいませんが)ファンク好きであれば、肝心かなめの、このポップで前向きなサビがなくても、かまわないのですけれど。悶々とウロウロしたまま、ミシェルのベースがブチブチ、べベンと鳴っていてくれれば、その方が気持ち良いわけです。
このサビ、この手の似たような曲は、応援ソングといいますか、日本でも通じるというのが不思議。



2024年2月11日日曜日

Guru - Jazzmatazz Volume II (The New Reality)

For You

1995年。ジャズ マ タズは、ギャング・スター Gang Starr のグールー Guru がソロ活動で当てたシリーズ、その第二作め。
ジャズ屋を始めとしてレゲエ方面からも等、様々なゲストが広く呼ばれています。
グールーの相棒であるDJプレミア DJ Premier も参加していて、シングル盤にもなったその曲にはチャカ・カーン Chaka Khan とブランフォード・マルサリス Branford Marsalis が参加、という具合。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello がベースとボーカルで参加したこの曲には、ケニー・ギャレット Kenny Garrett のサックスが。
ミシェルの場合、ヒップホップとジャズという似たようなコンセプトを持ったコンピ盤 “Stolen Moments: Red Hot + Cool”(1994年)に、すでに参加済みでした。あちらでは自分が取り仕切った曲が自分の名義で収録されていましたが、こちらはあくまでもゲスト・プレイヤー。

全曲のプロデュース、アレンジ、ミックスを担当しているのはグールー。ですが、正直、興味は主役よりもインスト・パートの方に。
ミシェルのベースは、ひたすら重心低く突き進んで、まるで The JB’s のブーツィーを思わせるようなプレイを聴かせます。サックスも合わせて辛抱強くフレーズを重ねて。
残念ながら、ここから自由に演奏するか、いよいよ展開するかというところで、エンディングに。

ジャズに突入していく手前で止まるわけですが、いっそ主役のラップよりも、ミシェルに歌わせるとか好き勝手にブツブツつぶやいてもらうとか、その方が(今となってはなおさら)もっと面白かろうにとも。
それこそミシェルがらみでお気に入りの曲(とかオリジナル・アルバムには未収録の曲)を集めたベスト盤を自作するなら、まず第一集は主に彼女の90年代を代表するような仕事から選んだ曲目になるでしょうが、これはそこに食いこむほどではないか。

アルバム・タイトル Jazzmatazz も気になるところ、razz ma tazz というスラングがあって、そのまま jazz を引っ掛けたよう。元々、razzle-dazzle とか、ジャズ畑ではバカ騒ぎすることをそのように呼びならわしていたらしく。razz でからかうとか、逆にうるさがられるとか。他にも、pizzazz とか、Danceable Jazz を略して duzz とか。そうなると、jazz という名称の語源も、、、そもそも口語、、、

それと、ブルーノートを意識したジャケットだそうですが、米国と欧州でウラオモテの写真を入れ替えて印象を変えています。諸肌脱いだラッパー、それに昔日のニューヨークはハーレムのブラックマン、というイメージ2種ですが、まあどっちにしても。



2024年2月3日土曜日

How Stella Got Her Groove Back Soundtrack: Music From The Motion Picture

Me’Shell NdegéOcello
“Let Me Have You”

1998年。映画は日本未公開ながら、ビデオスルー(DVDスルー)ということで邦題は「ステラが恋に落ちて」。サントラ盤の方は日本版ありで、ジャム&ルイス Jimmy Jam & Terry Lewis による全面プロデュース、英米のヒットチャートに登場しそうな方々(のたぶん新曲ばかり)が並ぶコンピ盤です。

映画の舞台がジャマイカだからレゲエ寄りの人選が多いのも少し意外でしょうか。R&B寄りのレゲエという点では、マキシ・プリーストなどはヒットしそうな好曲ですが。
そんなにぎやかな顔ぶれの中に、ジャム&ルイスとミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello の組み合わせ。地味です。

結論からいえば、ミシェルのオリジナル・アルバムには未収録の曲ですが、そちらに収まっていても遜色ないスローナンバーです。
ジャム&ルイスは出しゃばらずにアシストしたという感じ。ヒットとは無縁の仕事ではありますが。
彼らが80年代に手がけたS.O.S.バンドの名バラード群なんかもありますし、ジャム&ルイスがプロデュースしたヒット狙いのミシェル、という曲ももっと他に聴いてみたいような。

この曲では副プロデュース、作者としてミシェルの名前がクレジットされていますが、それ以外の記載はなし。シンセ一台があれば事足りそうなシンプルなバックですから、ミシェル一人でコンポーズしたのかもしれません。流麗なストリングスも入ってくるのではありますが。
あなたを待っている、ここから連れ出して、という待ち人来らずな歌詞ですが、この曲タイトル “Let Me Have You” を直訳すると、わたしを離さないで、でしょうか。
ミシェルとしては、かってプリンスとも縁のあったジャム&ルイスのことをどう思ったのでしょうか。

もしもミシェルがらみでお気に入りの曲(とかオリジナル・アルバムには未収録の曲)を集めたベスト盤を自作するなら、まず第一集としては、主に彼女の90年代の仕事から選んだものになるかと。(と勝手に想定すると)この曲は、そのCDのラストに配置、第一集のエンディングを締めくくる曲として良いかも。
ミシェル氏、守備範囲は広がる一方で、節操なし。頼もしくも楽しい限り。



2024年1月28日日曜日

Rahzel “Make The Music 2000”

Steal My Soul

1999年。ラゼール Rahzel はその筋では高名な、ヒューマンビートボックスの演奏者。90年代の後半には、ザ・ルーツ The Roots のメンバーとして活躍。このファースト・ソロ作の裏ジャケットにも、しっかりとザ・ルーツものと証明する “okay player.” のマークが。
ヒップホップ畑は特殊技能度の高い方が多い業界かと思われますが、中でもビートボクサーというのは相当に難易度の高い部類でしょうか。これぞガチのエンタメ。

アルバム自体、参加ゲストも多彩で。ライナーには曲毎に細かくクレジットが記載、それによるとこの曲は、
プロデュース、コンポーズ、アレンジはボブ・パワー Bob Power とラゼール。
ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello はボーカルで、またブランフォード・マルサリス Branford Marsalis もサックスで参加。
そしてラゼールは様々な役割を担当していると。Vocal Horns, Vocal Bass, Vocal Rohdes, Vocal Wawa とのこと(よく分からないものも)。

さらに、次のような英文が↓

This track contains no instruments, but Branford Marsalis on saxophone this is why they call Rahzel “The Bobby McFerrin of Hip-Hop”. incrediblel!!!

つまり、ブランフォードのサックス以外は、すべてラゼールがやっていると。ボビー・マクファーリンの名前も引き合いに出されていますが、ともかくすべてボーカルによる演奏だよ、というトラック。
incrediblel!!! 信じられない!とまでありますが、確かに言われなければ、これドラムやシンセだと普通に聴いてしまう音です。
さらにさらに、次のような文章も↓

I love it when Rahzel and Branford trade Riff for Riff, I think rahzel put the heat on Branford, what do you think???

ラゼールのボーカルとブランフォードのサックスがリフをやり取り、ということで。これもボーカルなのかとサックスやら楽器やら(と思って聴いていた)音にじっくり細かく聴き入ってしまいます。
何度もリピートして、ボーカルなのか楽器なのか判別しても、実際もう意味ないか。

ジャケットのデザインを見ると、楽器を持ち運ぶようなクッションの中に、自分(の顔)を収めているラゼール氏です。「自分自身が楽器」というアイデア、デザインや印刷にも、この頃はお金かかっています。
アルバムのタイトルですが、ビートボクサーであるラゼールにとっては、“Play The Music” でも、まして“Sing A Song” でもなく、やはり “Make The Music” ということなのでしょうね。80年代ヒップホップのスーパー・クラシック、Biz Markie “Make The Music With Your Mouth, Biz” のリメイクもやっています。

なによりもこの曲、良い曲です。派手すぎず、じわじわと染み出すカッコ良さ。曲の終盤には、遠いご先祖であるドゥーワップの歌を匂わしているようなベース・ラインも(はっきりボーカルと分かるように)聴かれます。



2024年1月6日土曜日

Lilith Fair (A Celebration Of Women In Music) Volume 3

Me’Shell NdegéOcello
“Soul Record”

1999年。リリス・フェアという音楽フェスから、出演者のライブを収録したコンピ盤。ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello も1曲が収録。
これが、ファースト・アルバム “Plantation Lullabies”(1994年)に収録された “I’m Diggin’ You (Like an Old Soul Record)” のライブ版となります。

ミシェルがこのフェスに参加したのは(Wikipedia によると)98年、99年らしいですが。
CDにはバンド・メンバーのクレジットはなし、ちなみに同じこの曲の97年だという動画を見てみると、ジーン・レイク Oliver Gene Lake のドラム、Allen Dariest Cato のギターと紹介していて、おそらくこの二人はこちらにも。

曲タイトルにある “Dig” はカッコ良いとか気に入ってるとか、掘る探すみたいな意味、“Old Soul Record” のようなとありますが、ライブ版では、御大ジェームス・ブラウン必殺の曲名も連呼したりと、アルバム版に比べてより強力にブラックネスへの共感を表明するアレンジに(どの曲名かはライブによって色々のようですが)。ただ、やはり(今はない)ソウルを探してということなのかも。
ここに収録されたバージョンは(編集もされているのか)短めですが、動画では後半の演奏や煽り部分がもっと長かったりも。

ミシェルのライブ音源ですが、まとまった形でのリリースは今だになし。
90年代のダンサブルな音源も良いのですが、新作アルバムでも、ライブ盤を出していただいて良いのでは、と思うのですが。
ミシェルの歌とベースに、ピアノだけといったシンプルな組み合わせとか、ジャズでよくありますでしょ。あるいはバンドによる思いきりファンキーな、JB御大の踊れるカバー集とか。ミシェル本人は興味ないか。