2021年9月26日日曜日

Sly Dunbar ‎“Sly, Wicked And Slick”

1979年。スライ・ダンバー、2枚めのソロ名義作品。
このアルバム、タイトルはざっと「抜け目なく、いやらしいほど巧妙に」みたいな。だからこの音に「気をつけろよ」、だから「注目しろ」といったところでしょうか。その通りに精緻な演奏が楽しめるインスト集です。

1991年のCD版は、“Sly, Wicked And Slick -Extra Version” として、スライの前年の初ソロ作 “Simple Sly Man”(1978年)からも全曲を収録。これはお得です。
どうせなら、ソロ名義での3作め “Sly-Go-Ville”(1982年)もまとめた仕様で、(CD2枚組の形ででも)いつか改めてリリースされないかと期待をしておりますが。
スライ・ダンバー単独のソロ名義アルバムというのは3作あり。どれにもスライ&ロビーの基本とも言えるインスト曲が、ぎっしりと詰まっております。

この2作めの目玉曲といえるのは、なんといっても、“Queen Of The Minstrels” でしょうか。
レゲエ好きで嫌いな人はいないはず、というこの曲、スライ&ロビーの手がけた他のアルバムにも幾度か収録されておりますが(タムリンズ The Tamlins やディーン・フレーザー Dean Fraser のもの等々)。

Cornell Campbell “Boxing”

1982年。コーネル・キャンベルのボーカル版は、多々ある “Queen Of The Minstrels” の中でもお気に入り。全曲のバックがスライ&ロビーというアルバム自体、聴きごたえあるし。



2021年8月22日日曜日

Pino Palladino And Blake Mills “Notes With Attachments”

2021年。ピノ・パラディーノ、ブレイク・ミルズの連名ですが。特にピノはキャリア47年めにして初のオリジナル・アルバムだそう。ディアンジェロ D’Angelo の “Voodoo”(2000年)からも20年以上。ふたりとも、とにかく待たせます。
記念に、両者を並べた一枚。



2021年8月8日日曜日

Gwen Guthrie “Padlock (Special Mixes By Larry Levan)”

1985年。スライ&ロビーがバッキングに参加している、グエン・ガスリーのアルバム(“Gwen Guthrie” と “Portrait”)から、ダンサブルな5曲を集めたミニ・アルバム。
全曲がラリー・レヴァン Larry Levan によってリミックス。より踊れる用に、ダンス・フロア向けに。
引き締められたビートは、当然スライ&ロビーというよりもパラダイス・ガラージかサルソウルか、といった趣向です。

2008年リリースのこのCD版には、ボーナスとして7曲が追加。各曲、元となるアルバム・バージョンが追加されているので、違いを聴き比べるのも楽しく。

そのオリジナル・アルバムの元々から、レゲエというよりもディスコ向けなグエン・ガスリーですが、彼女を知るには手っ取り早いベスト盤も有り。

Gwen Guthrie “Ultimate Collection”

1999年。1曲を除いた残りの13曲が、すべてスライ&ロビーがらみです。クセのないボーカルは親しみやすく、踊る邪魔もせず。

しかし、こういったディスコティックなサウンドのさらに向こう側に、アーサー・ラッセルによる Sleeping Bag Records レーベルのような音があったり。
あるいは Liquid Liquid といったバンドや、“Zero Set” のようなアルバムを思い浮かべたり。繋がっているのかいないのか、とにかく80s、心躍らされます。




2021年7月17日土曜日

Grace Jones “Private Life: The Compass Point Sessions”

1998年。これは、ひたすらにカッコ良いサウンド、数あるスライ&ロビー関連の中でも外せないアルバムでしょうか。80s独特の、とんがってる、といいますか。

グレイス・ジョーンズの3枚のオリジナル・アルバム、
“Warm Leatherette”(’80)、“Nightclubbing”(’81)、“Living My Life”(’82)から集めた曲を主にしたコンピ盤です。
単純な寄せ集めのベスト盤ではなく、12インチ・バージョンや未発表だったロング・バージョン、そのダブ・バージョンまで多数てんこ盛りのCD二枚組。
コンパスポイント・スタジオでのレコーディング・セッション、というタイトルの通りに、スライ&ロビーを始めとする演奏パート、バックトラックに焦点が当てられた形であります。

アルバムのトップを飾るのは、プリテンダーズのクリッシー・ハインド Chrissie Hynde 作 “Private Life” のカバー。もうイントロからして、わしづかみ。
デヴィッド・ボウイやロキシー・ミュージック、ポリス等々ロック畑の曲のカバーも多いのですが、本家との聴き比べも楽しく。

80年代アタマらしいロックやニュー・ウェーブ寄りの匂いに、“Feel Up”、“Pull Up To The Bamper” といった思い切りダンサブルな曲まで。一言、クールです。

2021年7月16日金曜日

Arthur Russell “The Sleeping Bag Sessions”

2009年。ニューヨークのインディ・レーベル、The Sleeping Bag Records のコンピ盤。80年代独特の、エレクトロでディスコな、好きな人には直撃!という音が詰まっています。とんがってる、といいますか。これにブーツィーがらみの一曲が収録。
ボンゾ・ゴーズ・トゥ・ワシントンの名義で、1984年に12インチ盤でリリースされたもの。

Bonzo Goes To Washington
“5 Minutes (B-B-B Bombing Mix)” 3:18
“5 Minutes (R-R-R Radio Mix)” 4:07

トーキング・ヘッズ、モダーン・ラヴァーズで知られたジェリー・ハリソン Jerry Harrison と、ブーツィーのベース。アーサー・ラッセルはテープ・エディットで参加。

当時の米国大統領であるロナルド・レーガン氏の声を大胆にサンプリングした、エレクトロなファンクであります。そのレーガン氏がまだ俳優だった頃、50年代に出演していたコメディ番組に登場するサルの名前が、ボンゾだそう。上京したボンゾ、俳優上がりの大統領をエテ公呼ばわりですね。サンプリングされたセリフがまた大変な失言で。

硬質な音、ビートにブーツィーのベース・ラインもしびれますが、他の曲もゴツっとゴリっと魅力的。このレーベルに人気があるのも納得。



2021年6月17日木曜日

Still Wish You Were Here: A Tribute To Pink Floyd

“Shine On You Crazy Diamond (Parts 6-9)”

2021年。ピンク・フロイド・トリビュートということで、アルバム「炎~あなたがここにいてほしい~」を丸ごとカバーした、という全5曲入り。
「総勢20名以上のロック/プログレ豪華アーティスト陣」が参加だそうで、ブーツィーは完全に畑違いの存在。守備範囲から外に出かけての他流試合というのも久しぶりでしょうか。

この曲、12分30秒を超えて展開する長さで、ブーツィーが前に出てくるのは中盤から。短めではありますが見せ場も用意されています。ばっちりスペース・ベースを聴かせてくれますが、短めのちょいの間ですね。
どうせなら異質の存在として、もっと大きめの音量で、もっと不気味な音を轟かせてくれ、と思いますが。ちょっともうそれも厳しいのかな。
そもそも基本、ロックというよりなんだか演歌みたいな一枚ですけども。ピンク・フロイドのオリジナルは知りません。

2021年5月29日土曜日

Sly & Robbie Meet Nils Petter Molvær Feat Eivind Aarset And Vladislav Delay “Nordub”

2018年。トランペットでニルス・ペッター・モルヴェル(Nils Petter Molvær)、ギターでアイヴィン・オールセット(Eivind Aarset)、そしてヴラディスラヴ・ディレイ(Vladislav Delay)という北欧組みと、スライ&ロビーが組んだ一作。

ジャズ屋として評価も高いニルス・ペッター・モルヴェルですが、自分のアルバムを発表している傍ら、ビル・ラズウェルがらみのダブ盤に参加していたり。“Dub Chamber 3”(2000年)や、“Radioaxiom:A Dub Transmission”(2001年)。後者ではすでにスライ・ダンバーと共演していました。改めて、満を持してのスライ&ロビーとの共同作業といったところでしょうか。

良く練られた曲が並びます。きちんと展開、盛り上がりもあって。薄明の、ダークな音には違いありませんが、暖かみもあります。
これはスライ&ロビーとしても2010年代を代表するような、ミュージシャンシップに溢れた一作となりましょうか。真面目すぎて、ちょっと遊びが足りないぐらい?

続きの次作も期待されるところですが、それは果たして何年後か。続編ではありませんが、オマケ的な一枚も有り。

Vladislav Delay / Sly Dunbar / Robbie Shakespeare “500-Push-Up”

2020年。こちらはヴラディスラヴ・ディレイとスライ&ロビー連名の一作。
ダブという以上に、音響効果の歪んだノイズに、電子音が吹き荒れます。連名とはいえスライ&ロビーによる演奏も、そのリズムまでも、加工するための素材に過ぎず、であります。
その点、ダブといえども踊りたいもの、という向きには、少々ノリが悪いと感じてしまうかも。

2021年4月28日水曜日

Sly & Robbie + Groucho Smykle “Dubrising”

2014年。スライ&ロビーと、ポール・グルーチョ・スマイクル Paul “Groucho” Smykle によるミックス。これがなんと両者の顔合わせは30年ぶり、という新たなダブ盤の登場でした。
ヴァイナル盤に加えて、配信でも簡単に入手できます。

スライ&ロビーの“Dub Experiance”、ブラック・ウフルの“Dub Factor”といった盤と地続きの、あの音が好みという方を裏切ることのない一枚です。
元ネタの曲は、スライ&ロビーが TABOU 1 レーベルに残した各曲のよう。ホレス・アンディのアルバム(Horace Andy + Sly & Robbie “Livin’ It Up”)から等。
この TABOU 1、スライ&ロビー好きにはたまらないフランスの会社であります。頭が下がります。

配信といえば、他にも。

“Raiders Of The Lost Dub”

1981年。ポール・グルーチョ・スマイクル Paul “Groucho” Smykle が選曲というダブ盤。隠れ名盤とも評されるこちらも、現在は配信で簡単に入手できます。
スライ&ロビーがらみの曲を中心に、中でもブラック・ウフルの4曲、Sinsemilla、Guess Who’s Coming To Dinner、Sponji Reggae、Journey のダブ版が聴けたり。

CDとしては、“Time Warp Dub Clash - Old School Vs. New School”(1993年)というコンピ盤に、全曲が収録。オリジナル盤とは異なる形ですが、タイトル「タイム・ワープ〜」やジャケのデザインがお気に入り(オリジナル以上かも)。



2021年4月12日月曜日

Sly & Robbie ‎“Version Born”

2004年。ビル・ラズウェル Bill Laswell によるプロデュース。ギター、鍵盤、それにアレンジも。彼とスライ&ロビーとの仕事は何年ぶりでしょうか。

このアルバム、クセがあるというか。スライ&ロビーの名義ではありますが、やはりビル・ラズウェル、彼の存在がうかがえて。

全12曲の内、Dub とタイトルされているのものが4曲。これはボーカル無しのダブ(インスト)であり、スライ&ロビーらしいといって良いもの。
しかも、“Right Stuff Dub” はタイトル通りに、ブラック・ウフルの(アルバム “Chill Out” 収録の)曲を引っ張り出してきて、楽しませてくれるというサービスぶりです。

クセがあるというのが残りの8曲で。ラッパーやボーカルも加わったこちらは、ビル・ラズウェルの主導ではないかというもの。
スライ&ロビーがどうもバック・プレイヤー的なものに後退して聴こえるような。この8曲がどこまで好みか、というのが分かれ目になりますでしょうか。ジャケットのオモテ面に大きくビル・ラズウェルの名前を出すべき。あまりレゲエ好き、ダブ好きにはお勧めしにくいか。



2021年4月8日木曜日

Sly & Robbie “Blackwood Dub”

2012年。2010年代に入ってからの、まるっと一枚、新録のダブ(インスト)・アルバム。
モノクロのジャケット写真も良い感じですが、スライ&ロビーの二人の前に見えるのは車の屋根。これがタクシーで、これからプレイするため下車したところなのか、終わって仕上げた後に帰るため、乗車するところなのか。そんな一幕も連想される絵です。

ブラックウッドというのも意味ありげなタイトルですが、これはプロデュース、ミックスを手がけた Alberto “Burro” Blackwood という方の名前からだそう。名前がタイトルに、なんと名誉なことでしょうか。

1曲めからカッコ良く、ドライブしていくスライ&ロビーのプレイ。特にスライのドラミングが堪能できます。その分、音響効果は出しゃばらずに控えめ、ダブとしては渋めの一枚でしょうか。

Sly & Robbie “Underwater Dub”

2014年。そして続編といえるアルバムがこれ。基本路線は変わらず。いくぶんか派手めの曲が増えたような、でもアルバムの顔になるような目玉の一曲に欠けるか。一番変わったのはジャケットですか。隠しトラック有ります。

これより以前の2000年代にも、ちらほらと目立つダブ盤がありました。

Horace Andy + Sly & Robbie “Livin’ It Up”

2007年。大御所といって良いかと思われるホレス・アンディの、スライ&ロビーのバッキングによるアルバム。
70年代的な音づくりで、いくつかの曲で後半がダブに突入したり。やっぱりホレス・アンディはダブが似合う男。レコーディング風景を撮影したDVD付きで、これもグッときます。

Sly & Robbie Present Chezidek “I Grade”

2009年。通常のボーカル盤とダブ(インスト)盤のCD2枚組み。
これのプロデュースにはスライ&ロビーと共に、Alberto “Burro” Blackwood の名前が。この方、ホレス・アンディのアルバムの方にもからんでいまして。やはりどんな年代になろうと、やりたいのはダブ、という人物か(だと頼もしい)。ダブはたっぷりエコー多め。

2021年4月5日月曜日

Michael Rose / Sly & Robbie “X Uhuru”

1998年。ブラック・ウフルを抜けたその後のマイケル・ローズですが、スライ&ロビーと組んだものといえばこれ。
アルバムに先行して、スライ&ロビー名義のコンピ盤に含まれた曲があったりも。

Sly & Robbie ‎“Sound Of Sound: Volume 2”(1993年)
Sly & Robbie Present The Taxi Gang ‎“Hail Up The Taxi”(1995年)


ひたすら反復されるデジタルな打ち込みリズムは、ブラック・ウフルの頃とは違うノリ。これがけっこうアフロな何かを感じさせたりもして、中毒性も高く。
その魅力は、さまざまなボーカルの収録されたコンピ盤で聴く方が楽しいかも。スライ&ロビーのコンピ盤は90年代のものであってもやっぱり楽しい。
ただ、ベースの弦らしい(振動する)音は聴かれませんが。

後の2005年には、アルバムから7曲がダブ(インスト)としてもリリース。こちらは配信のみですが、トラックの魅力を改めて再確認。

Michael Rose + Sly & Robbie “Taxi Sessions Version + Dub”


ところで、90年代にスライ&ロビーがアルバム一枚をバッキング、プロデュースをした他の作品ですが。

Ini Kamoze “Here Comes the Hotstepper”
Yami Bolo / Sly & Robbie “Freedom And Liberation”


アイニ・カモーゼの1995年のアルバムなどは、相当に刺激的なサウンドですし。ヤミ・ボロの1999年のアルバムでは、リー・ペリーのあの “Curly Rocks” をカバーしている一方で、スティーヴィー・ワンダーの “Boogie On Reggae Woman” もファンクにカバーしていたり。
当のマイケル・ローズのソロ作以上に、これはブラック・ウフルの延長にあるかも、となんとなく感じたりも。



2021年4月1日木曜日

Gregory Isaacs + Sly & Robbie Live 85

2015年。これが配信のみですが、グレゴリー・アイザックスとスライ&ロビーの1985年のライブ。素晴らしく、気持ち良く楽しませてくれます。

まずアタマの8曲がスライ&ロビー達によるインスト・コーナー、そしてイントロをはさんでのグレゴリーの12曲。
Sly & Robbie (Taxi Gang / Ini Kamoze / Half Pint / Yellowman) “Live 86” と同じ進行が聴けるわけですが。

こちらでは、なんといってもあの “Queen Of The Minstrels” が聴けます。スライ・ダンバーのソロ作でもかってカバーされていました(Sly Wicked And Slick)。レゲエ好きで嫌いな人はいないはず、というこの曲。
そうして熱くなったところで、グレゴリーの登場となります。音も良いし、もう満足。

2021年3月22日月曜日

Sly & Robbie (Taxi Gang / Ini Kamoze / Half Pint / Yellowman) “Live 86”

2014年。ブラック・ウフルのライブ盤と同じく、こちらもスライ&ロビーの80年代のステージぶりがたっぷりと楽しめる一枚であります。

自分たちタクシー・ギャングによるインスト・コーナーに始まって、アイニ・カモーゼ、ハーフ・パイント、イエローマンをフロントに立てた4部構成で。
ブラック・ウフルでもおなじみの、各曲を途切れることなく連発しながら、終幕まで突進していくスライ&ロビーのハンドルさばきが、CD2枚組というボリュームに渡って展開されます。

ただこのCD、決定的に残念な点が。各曲がメドレー的に展開していくというその曲間に、なんと1秒ほどの空白(無音状態)が入ってしまっています。
全曲がこうも分断されてしまっては、どうにも興ざめで。手間ですが、各曲をデータで取りこんで空白部分を削除した上で、CD-Rに焼き直しました。

ブラック・ウフルの熱っぽさと比べれば、クールに、軽やかに感じられるステージですが、それもフロントの個性の違いによるものでしょうか。
次から次にヒット曲が繰り出されていく、スライ&ロビーのドライブに気持ち良く乗っかって引きづられていくだけです。





2021年3月14日日曜日

Black Uhuru “Live In Chicago 1984 With Sly & Robbie”

レゲエ・シーン最前線で、圧倒的な異彩を放ち突き進む、
冷たく光る黒い稲妻こと、ブラック・ウフルが、
全米進出ヒット作「チル・アウト」以来、2年ぶりにおくる
最高無比の、そして完璧なまでのダブ・ポップ・アルバムの登場。
待望の初来日直前、ついに姿を現した
スーパー・ユニットの強烈なハートビートが、ブラック・サマーを直撃する。
(「讃歌」¥2,800  7月21日発売) 

これは雑誌「ミュージック・マガジン」1984年8月号に掲載された、ブラック・ウフルの新作アルバム「讃歌」のカラー広告から。劇的な調子のキャッチ・コピーであります。
アルバムの発売に加えて、彼らの初来日公演までも告知するものでしたから、宣伝文句としては劇的なのも当然。当時のファンの気持ちを代弁するかのような、勢いにあふれた名調子でした。

1984年の真夏、スライ&ロビーと共に訪れた7-8月の来日公演の後に、「讃歌」はラスト・アルバムとなり。それから、さらに数年を経て。
ブラック・ウフルのファンに届けられた、ライブ音源がふたつ。すでに歴史のひとコマとなって久しい出来事ですが、残されたサウンドはいまだ熱く。

Black Uhuru “Live In Chicago 1984 With Sly & Robbie”

2008年発売。

Black Uhuru “Live At Rockpalast - Essen 1981”

2016年発売。





2021年3月6日土曜日

Black Uhuru “Brutal Dub” “Positive Dub”

マイケル・ローズ Michael Rose がいなくなった、その後のブラック・ウフルですが、アルバム2作品をスライ&ロビーが手がけており。どちらもダブ・アルバムあり。
これはスライ&ロビーのダブ(インスト)盤として興味の惹かれるところですが。

“Brutal Dub”

1986年のアルバムのダブ版は、ロックなギターやシンセの音も飛びかう、けっこう派手な音づくり。みっちり盛られた音は個性的かも。残響が拡がる系のスペースなものではなく。

“Positive Dub”

1987年のアルバムのダブ版は、ぐっと落ち着いた音。日本盤は “Burning Dub” から始まる曲順で、これがリラックスして入っていける幕開けとなっており。またオマケで一曲多い9曲入りなのでお得。フランス盤も同じ仕様のよう。

発売元がアメリカの会社だし、やはり米国向けかという印象でしょうか。ブラック・ユフルとしてはピークを過ぎた後のもの、というよりも別物として、これはこれで楽しみたいところ。
とはいえ実際のところ、スライ&ロビーがらみとしては、他に間違いのない作品が幾らでもあり。

先に挙げたようなコンピ盤は楽しいですし、人気も高いのか同様なものが何種類も。さらにスライ&ロビーによるバッキング曲を集めたフル・アルバムもあったりと。

Dennis Brown “Brown Sugar”(1988)
Sugar Minott “Sugar & Spice”(1986) 


デニス・ブラウン、シュガー・マイノットという定番中の定番ですが、スライ&ロビーによる、という点でも名高いアルバムです。曲によってはバージョンも収録で、80年代のあのサウンドがたっぷり、文句なしです。ここにハマると、なかなか抜け出せない。



2021年2月11日木曜日

Sly & Robbie “Taxi Fare”

1988年。スライ&ロビー本人たちのシングル盤曲や、他人のバッキングで手がけた曲など、80年代前半のあちこちからの寄せ集め曲集。

ボーカル曲が主でダブ盤ではありませんが、この時期というのはボーカルの後ろでダブな音が鳴っていたり、全体に統一感もあって気持ち良く。
アルバム “Reggae Greats (A Dub Experience)” の元曲などもあって、意外にあれと対になる一枚かも。

Sly & Robbie “Unmetered Taxi: Sly & Robbie’s Taxi Productions”


2004年。英国の “Pressure Sounds” レーベルからリリースされた、こちらもスライ&ロビーがらみの寄せ集め曲集。
上記の “Taxi Fare” と数曲ダブりますが、全曲がボーカル版に続いてバージョンも収録。悪酔いを誘うようなジャマイカ流のブーストされた音が詰めこまれています。
ここで聴けるブラック・ウフルの “Shine Eye Girl” とそのバージョンの2曲も聴きもの。

他のアルバムCDで聴けるような “Shine Eye Girl” とは、立体感や迫力が違います。ダブ・プレート音源らしいですが、ジャマイカ盤7インチに針を落として聴いてみた、この音で踊っているのかという感じ。
詳細のクレジットはなしですが、さすが “Pressure Sounds” は少々マニアック。



2021年2月8日月曜日

Sly & Robbie “Reggae Greats (A Dub Experience)”

1984年。こちらはスライ&ロビー名義のダブ・アルバム。「アンセム」と同じく、ポール・グルーチョ・スマイクル Paul ‘Groucho’ Smykle によるリミックス集であります。

オープニングはブラック・ウフルの一曲、“Chill Out” のダブ・バージョンから。“Destination Unknown”(目的地不明)と別タイトルが付けられていますが、これが元曲よりカッコ良さ倍増の、実にダブ、実にファンクで。一気に引きこまれます。

ブラック・ウフル以外からもさまざまな曲が集められていますが、ここでは、スライ&ロビーとポール・グルーチョ・スマイクルの名前はまったく同列。「アンセム」と並ぶ鋭角、硬質なダブ・サウンド、音の遊びがたっぷり楽しめる一枚です。

Black Uhuru “The Dub Factor”


1983年。アルバム “Red” と “Chill Out” からの曲のダブ・バージョンを収めたアルバム。こちらも同じくポール・グルーチョ・スマイクル Paul ‘Groucho’ Smykle によるリミックス。ブラック・ウフル名義の直系の一枚ですし、外せない。
2003年のリマスター盤CDには、上記のスライ&ロビー “Reggae Greats (A Dub Experience)” から “Destination Unknown” が、ボーナスの一曲として追加されています。



2021年2月7日日曜日

Black Uhuru ‎“Anthem”

1983年。マイケル・ローズ Michael Rose がいたブラック・ウフルとして、最後のアルバム。
邦題が「アンセム 讃歌」。レゲエがまだ新しく、刺激的なものと注目されていた、当時を物語るような劇的なタイトル、であります。
バッキングはスライ&ロビー。彼らが独自の個性あふれる音を聴かせていた1980年代前半の、異質なほどの魅力をたっぷり味わうことができます。

84年発売時のヴァイナルの日本盤LPというのが、英国向けの UK-Remix 仕様と同じもの。ポール・グルーチョ・スマイクル Paul “Groucho” Smykle によるリミックス版でした。「アンセム」といえばこれ、と刷り込まれましたが。
実は各国の市場に合わせて、オリジナル、英国向け、米国向け、ダブ盤と多くのバージョンが用意されていたアルバムでした。

後の2005年にリリースされたCD4枚組みのセットには、未発表曲も加えてとにかく全部収められていて、こんなスペシャル仕様が実現するほど、ファンの思い入れも強く。
今も、その時々で4つの仕様からどれかを選んでは楽しんでいる、まさしく愛聴盤であります。

ところでスライのカバー “Somebody’s Watching You” には、バーニー・ウォーレルも参加。スライ&ロビーとバーニーの共演というのは、誰のアイディア、お膳立てによるものだったのでしょうか。
なお余談ですが、セットの購入当時には、発売元の “Hip-O Select” レーベルのキーホルダーがオマケでもらえました。



2021年1月2日土曜日

The Legendary Henry Stone Presents Bobby Byrd: Back From The Dead

“It’s In My Blood”
“Tell Me What’s On Your Mind”

featuring Bootsy Collins, Maceo Parker, and Fred Wesley, Background Vocals by Vicki Anderson and Martha High

2005年。ボビー・バード、全11曲入りのコンピ盤。少々問題ありの一枚なのですが、これにブーツィーのからんだ2曲が収録。

両曲ともボビー・バード作とクレジット、御大JB風のご機嫌ファンクと、泣きのスロー曲。
プログラミングされたドラムなど、他の曲と比べてこれだけは異質なほど録音は新しく。ブーツィーのベースに、フレッド・ウェズリー、メイシオ・パーカーもしっかりと吹いています。
とはいえ、これで完成品とは言い難く。まだラフな段階のものといいますか。ボビー・バードのソロ作を製作するため的な、お試し、プリプロ、デモ版といった類なのでしょうか。

ジェームス・ブラウン御大とも関わりの深いヘンリー・ストーン氏ですが、その名前の冠された一枚。ということで、秘蔵音源の蔵出し集かと期待された盤でしたが、とにかくなにかと粗っぽい。
選曲にしても、74年のシングル盤からA面B面曲で始まり(板起こしで針の音入り)、ライブ音源で終わる(これが途中でブチ切れたりする)、単なる寄せ集め。音質も良くないし、ジャケットはインクジェットの印刷、紙質も良くない。なによりCDR盤です。

実に残念な、粗雑品です。ごくごく一部のローカルで小数配布されていれば、マボロシ扱いもされていた? 否、ボビー・バードを始め、ここに記載された名前の誰一人でもなにか得をしたとは思えず、、、