2023年12月23日土曜日

The Best Man: Music From The Motion Picture

Me’Shell NdegéOcello
“Untitled”

1999年。映画「ベストマン」のサントラ盤。スパイク・リー製作、従兄弟のマルコム・D・リーが監督・脚本ながら日本未公開、日本語版はビデオのみ(DVDなし)、という作品。サントラに関しては日本版CDありで、高名な顔ぶれが並ぶ中、ここにミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello のアルバム未収録曲も。これがファンク。

ミシェルのファースト・アルバム “Plantation Lullabies”(1994年)にも同じタイトルの曲がありますが、それとは別物。
こちらのプロデュースは(ギター、キーボード、プログラムも)Allen Dariest Cato 、歌とベースを始めその他の演奏がミシェル。要はふたりで制作したものでありましょうか。
“You Make Me Feel So Good” と幾度も繰り返される、この歌からは非常にセクシャルな印象も受けます。

曲の前半は、その色っぽいところも含めて、もしかするとプリンス?というシンセの音色やフレーズなどもあって。これは殿下へのリスペクトかと思わせつつも、それでは終わらず。
曲の後半は、余計なものを削ぎ落としたファンクに一転。ソリッドに刻まれるリズム・ギターが腰にきて、ミシェルも気持ち良さげな風、ベースを弾くのも止めてしまいます。
この部分は90年代末らしい、ディアンジェロ D’angelo の登場以降の音に。ミックスはそのディアンジェロのファースト・アルバムにも関わったボブ・パワー Bob Power 。

もしもプリンスからディアンジェロ、80’sから90’sを経て00’sへ、というラインを意図したものであれば、ビートは止まらず、継承されていく的なことでしょうか。(リスペクトどころか)過去のひと扱いをした、と捉えられてしまいそう。
アルバム未収録ですが、クレイグ・ストリート Craig Street と組んでダンサブルとは少し離れた “Bitter”(1999年)にはやはり似合わないですか。としてもミシェルの代表作のひとつと呼べるのでは。



2023年12月9日土曜日

Down In The Delta (Music From And Inspired By The Miramax Motion Picture)

Me’Shell NdegéOcello With Keb’ Mo’
“My Soul Don’t Dream”

1998年。映画「ダウン・イン・ザ・デルタ」のサントラ盤。ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello とケブ・モ Keb’ Mo’ の連名による共演曲を収録。

これが頭にドが付きそうな典型的なブルース、ミシェルがこの手を(ライブはともかく)録音して残したのはこの曲ぐらいでしょうか。アルバムには未収録。
典型的(つまりありきたりな?)、と申し上げたスタイルですが、ミシェルが歌うと新鮮に聴こえる、というとひいきの引き倒しでしょうか。ブルース向きとは言いがたい彼女の声ですが、ケブ・モの出番がもっと少なくても、いっそミシェルだけでも、ファンとしては構いませんけれど。

ミシェルは歌とベース、ケブ・モは歌とギター(ナショナル)。またアコースティック・ギターでAllen Dariest Cato 、ドラムは(ライ・クーダー Ry Cooder でお馴染みの)ジム・ケルトナー Jim Keltner 。プロデュースはクレイグ・ストリート Craig Street 。

神にも見放されたような失落感を歌うリリックはミシェルによるもの、曲は彼女と Allen Dariest Cato の作。
ミシェルにしろケブ・モにしろ、このヘビーな(つまり少々大げさな?)アレンジの音で歌うのはチャレンジだったのではないかという気も。それとミシェルの曲で “Soul” という言葉が出てくると引っかかります。

ミシェル自身がありきたりか、と思ったかどうかはともかく、この曲でも、聴きどころのひとつが曲の後半。どブルースから一転、スローなファンクに。涼しげな音がリフレインされますが、それまでのブルース・パートがあるからブルージィーに聴こえます。
もし前半がもう少しライトな曲調であったなら、この対比も弱かったのかも。



2023年12月3日日曜日

White Man’s Burden (Original Motion Picture Soundtrack)

Me’Shell NdegéOcello
“Time Has Come”

1995年。映画の邦題は「ジャンクション」。これビデオ化はされたようですが、日本版のDVDは無いもよう。このサントラ盤に、ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello によるあの古典名曲のカバーを収録。

オリジナルはチェンバース・ブラザーズ Chambers Brothers 、1967年のアルバムから。
アルバム版では11分におよぶ長尺の曲、(シングル版にはない)中盤からの、歪んだギター音が飛び交うサイケ仕様の展開が有名で。ロック・バンドによるカバーも多いようですけど、ブーツィーもこの曲やっていました。このリリックがまた。

I’ve been loved and put aside (Time)
I’ve been crushed by tumbling tide (Time) 
And my soul has been psychedelicized (Time)

ミシェル版では、後半部分をどうしたかというと。ロックな曲調から一転、ぐっとテンポを落としてスローなファンクに。それもマーヴィンの “Inner City Blues (Make Me Wanna Holler)” を思わせる展開です。
深読みすれば、1967年の曲から1971年の曲へと飛ぶこの間に、何があった?と連想できますか。映画のテーマにも関わる点かもしれません(未見ですけど)。

曲の後半になって、何気にすっとファンクに持ちこむというのは、他でもミシェルがよくやる奥の手。さりげなく今回も、腕の立つメンバーを揃えています。

ミシェルは歌とベース(カウベルも)、ドラムはジーン・レイク Oliver Gene Lake 、加えてオルガン(とコーラス)でバーナード・ライト Bernard Wright 、リードギターのデヴィッド・フュージンスキー David Fiuczynski 、Allen Dariest Cato はリズムギター(とコーラス)、プロデュースはデヴィッド・ギャムソン David Gamson 。



2023年12月1日金曜日

Batman & Robin (Music From And Inspired By The “Batman & Robin” Motion Picture)

Me’Shell NdegéOcello
“Poison Ivy”

1997年。映画「バットマン & ロビン Mr.フリーズの逆襲」のサントラ盤。ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello による、あの古典名曲のカバーを収録。

オリジナルはロサンゼルス出身のグループ、コースターズ The Coasters 。
Leiber & Stoller コンビ作による1959年の Doo-Wop ナンバー。R&Bチャート1位、Billboad Hot100チャート7位を記録だそう。1963年には当時新人のストーンズがこの曲のウブなカバーをシングル盤で披露、ビートルズもコースターズの他の2曲をカバーしていたり。
という歴史・古典ですが、今聴いてもカッコ良く。なにしろ Leiber & Stoller のコンビは、エルヴィスのハウンド・ドッグとかスタンド・バイ・ミーとか、あれもこれも不滅。

ポイズン・アイビー “Poison Ivy” は曲のタイトルであり、映画に登場するスーパーヴィランの名前でもあり。
ミシェルは歌とベース、副プロデュースも。プロデュースは(ドラム、プログラミングも)デヴィッド・ギャムソン David Gamson 。ギターでデヴィッド・フュージンスキー David Fiuczynski の名前もありますが、奥に引っこんでサポート役、あまり聴こえず。ミックスはゴウ・ホトダ Goh Hotoda 。

シンセポップといいますか、元曲と比べると拡がりのあるアレンジで、映画向けらしい感じ。ミシェルのベースはまったく目立ちませんが、ボーカルに徹してクールに歌い上げています。終盤のアレンジに、彼女らしさを感じるような。映画は未見。



2023年11月26日日曜日

Me’Shell NdegéOcello “Earth”

The Teaching (Non-Album Track)

2002年。全5曲入りのシングル盤。アルバム “Cookie: The Anthropological Mixtape”(2002年)からの曲を主にしたこちらにも、ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello のアルバム未収録曲 “The Teaching” が収録されています。

セカンド・アルバム “Peace Beyond Passion”(1996年)からに続いて、再び収録というのも珍しく。
素っ気なく “(Non-Album Track)” と表示されているだけなので、単純に同じ曲かと見過ごされそうですが、サントラ盤の “Money Talks - The Album” とシングル盤 “Stay (Soul Power Mix) / The Teaching”(1997年)に収録された最初のバージョンとは、かなり違うミックスが施されています。

実際、聴き比べれば細部まで音が違っていて。(例えばハウス仕様のダンス・ミックスとかではなく)同じ曲調のままで、最終的な仕上げをやり直したという感じ。
イントロからして、ミシェルの分厚いベースがのたうつように響いて。ドラムの音もぐっと大きく、スローなファンク・ナンバーに変わったような印象です。

元々の最初のバージョンの、プロデュースとミックス、それにドラム・プログラムはデヴィッド・ギャムソン David Gamson によるもの。今回のクレジットではプロデュースとだけ残されていて、その辺りをミシェルの音に入れ換えてあるのかもしれません。
ミシェルの歌を継いで盛り上げていた Allen Dariest Cato によるギターも残されてはいますが、少し引っこめられて、代わりにまた新たなブレイクを追加していたり。

今回の新しいバージョンは、ミシェル自身の意向によるものなのでしょうか。どのような意図や経緯があっての再収録だったのでしょうか。
売れ線のファンクばかりを期待される中、クレイグ・ストリート Craig Street を招いてのアルバムを制作(1999年)というエピソードもありますし。そして、Pファンクやヒップホップを思わせるようなジャケットをした “Cookie: The Anthropological Mixtape” を造ったものの、このシングル盤 “Earth” が、スローな曲ばかりを集めたもので。クレイグとの仕事を経て、とんでもなく凝った深い音を聴かせる曲ばかり。

さて、“The Teaching” の2つのバージョンですが、どちらが上ということはなく。どちらもぐっと来る曲なのは変わらずです。
Allen Dariest Cato は、ミシェルと連名で “Cookie: The Anthropological Mixtape” の大半の曲をプロデュース、またギター等でも活躍。



2023年11月20日月曜日

Money Talks - The Album

Me’Shell NdegéOcello
“The Teaching”

1997年。90年代ブラックムービーのサントラ盤、映画の邦題は「ランナウェイ」。こちらに、ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello の数多いアルバム未収録曲の中でも、代表となるような一曲が収められています。
アルバム未収録ですが、ミシェルのセカンド・アルバム “Peace Beyond Passion”(1996年)からのシングル盤にも収録。

Stay (Soul Power Mix) / The Teaching


1997年発売。曲としてはセカンド・アルバムと同時制作だったのか、映画のための新録音だったのかは不明ですが。
アルバム・ボツ曲だったのかもしれませんが、そうとしても、このまま彼女のオリジナル・アルバムに収めるのもちょっと違うか、というぐらいストレートな三拍子のソウル・バラード(アレサのナチュラル・ウーマンみたいな)。
プロデュース、ドラム・プログラム、ミックスはデヴィッド・ギャムソン David Gamson 。ミックスのヘルプとしてボブ・パワー Bob Power の名前も。そして Allen Dariest Cato のギター。歌とベースを始めその他の演奏がミシェル。

ミシェルのボーカルにしても、(らしからぬほどに)情感がこめられています。 
最愛の恋人を失くしたという歌詞ですが、ひょっとするともっと大きいものを(例えば信仰を)見失ってしまったと歌っているのかも、と聴こえてしまうぐらい。
それほど歌いあげているミシェルというのもなかなか、でありましょうか。

“Stay (Soul Power Mix) ” もアルバム版に比べると、よりしっとりとした雰囲気に生まれ変わって。シングル盤ではうまい具合に、Stay(ここにいて)から The Teaching へと対になったような流れですし。
そしてこの曲 “The Teaching” には、まだ続きがあります。



2023年11月7日火曜日

Rare On Air (Live Selections From KCRW’s Morning Becomes Eclectic, Vol.3)

Me’Shell NdegéOcello
“Ecclesiastes: Free My Heart”

1997年。米国のラジオ番組 Morning Becomes Eclectic で放送したライブのコンピ盤。カリフォルニアはサンタモニカのラジオ局 KCRW の、現在も続いている音楽番組だそう(ウィキペディアより)。
ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello のセカンド・アルバム “Peace Beyond Passion”(1996年)に収録の曲を、ライブ版で聴けます。

あのセカンド・アルバムのほとんどの曲で叩いていたドラムのジーン・レイク Oliver Gene Lake が、こちらでも。このドラマーがまた、スティーヴ・コールマン Steve Coleman を始め大変な顔ぶれの皆々さまと共演しているツワモノで。ミシェルもそのつながりの中の(若かった)ひとりであると、いえるかも。
なお、この曲のアルバム版で目立っていたギターのデヴィッド・フュージンスキー David Fiuczynski は不在、代わりのギターはミシェルとは関わりの深い Allen Dariest Cato が。

ライブ版とはいえ、曲としてはアルバム版とほぼ同じ感じ。もちろんアルバム版とは熱量、迫力が違います。当時のライブ動画を見ると、ミシェルは歌に集中したいのか、歌うときはベースは弾かずに、スタンドに立てかけていました。
さてクレジットでは、Track 11: 20-06-96. と記されていますが、これが放送日なのかライブ収録した日なのか、そして番組上では他にも曲を放送したのか不明です。とにかく、元となるミシェルのライブ音源が何処かに存在しているということで。



2023年11月5日日曜日

The Fusion Syndicate “A Speedway On Saturn’s Rings”

The Bottle

2023年。この曲の作者はギル・スコット・ヘロン、彼とブライアン・ジャクソンの二人の名義のアルバム Gil Scott-Heron / Brian Jackson “Winter In America”(1974年)に収録。そもそもこの元曲が良いわけですが、きっちりと作りこまれた、印象的なカバーになっております。

ドラムはカーマイン・アピス、ギター、ベースでフェルナンド・ペルドモと、Carmine Appice & Fernando Perdomo Project のコンビに加えて、さらにフルート、エレピでオリジナル版のご本人であるブライアン・ジャクソンが参加。ブーツィーのボーカルも聴かせる仕上がりに。

この曲、都市の生活をシリアスに歌った内容ですから、おいそれと(例えば白人のロッカーが気軽に)カバーできるような曲ではないのも確かで。今回はその辺りもクリアしたブレンド具合、ミルク多めの黒すぎない出来ばえでありましょうか。

ジャズ・ロックなんて懐かしの名前も思いだされる、ジャズというよりは温度高めのガッツ溢れるギター・インストといった曲が並ぶ中、唯一ボーカル入りのこの一曲が、あえてのギル・スコット・ヘロン、あえてのブーツィー起用とは。ロック好きにはどのように聴こえるのでしょうか。
バンド名というかアルバムの名義が、フュージョン連合(そのまま訳せば、混じり合った集まりとも)ですが。

先に挙げたピンク・フロイドのカバー集に、このアルバムと、ブーツィーのゲスト参加作が重なりましたが、(どちらも同じ系列の会社からの発売とはいえ)とにかくブーツィーが聴ける機会が増えるのは感謝であります。




2023年10月20日金曜日

Meddle Reimagined - A Tribute To Pink Floyd

One Of These Days

2023年。このアルバム、先の2021年にリリースされた “Still Wish You Were Here: A Tribute To Pink Floyd” に続くトリビュート企画の一枚。つまりピンク・フロイドのカバー集ですが、「炎~あなたがここにいてほしい~」に続く、タイトルを訳せば「おせっかい再考」でしょうか。前回に引き続いて、今回もブーツィーの抜擢であります(理由は?)。

アルバム1曲めの(邦題もあまりに有名な)「吹けよ風、呼べよ嵐」にブッチャー、じゃないブーツィーが参加。スペース・ベースをぶにょぶにょ、ベンベンやってます。ドラムはカーマイン・アピス Carmine Appice が。
前作では12分30秒以上という長さの “Shine On You Crazy Diamond (Parts 6-9)” でしたが、今回はその半分くらいの5分40秒で、ベース・プレイもよりストレートに目立ってます。

ピンク・フロイドのアルバムを丸ごとカバー、というのも凄いのか安易なのかわかりませんけど。ブーツィーも連続してのゲスト参加ですから、このシリーズ、もし3作めもあればまたお願いしたいところ。次はどのアルバムかな、と予想するのも楽しいでしょう。(ピンク・フロイドを聴いたことがありませんけど)次回は、ブーツィーが主役となるような曲で、スペース・ベースの轟音ソロもぜひ。




2023年10月14日土曜日

Living Single (Music From And Inspired By The Hit TV Show)

Chaka Khan “Pain”

1997年。アメリカの人気TVコメディ番組「リヴィング・シングル」のサントラ盤、だそう。どんな番組なのかは未見ですが、チャカ・カーンは彼女自身の役で出演とのこと(ウィキぺディアに記載が/ Chaka Khan as herself (Season 5, Episode 6))。
番組内では歌コーナーがあって、そこでのスタジオ・ライブなのでしょうか。音を聴く限りそのような感じに聴こえますが。バックの演奏は前もっての録音なのかもしれません。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello のベースを始め、ドラムはレオン・ンドゥグ・チャンクラー Leon Ndugu Chancler 。
他の顔ぶれとしては、ギターにワーワー・ワトソン Wah Wah Watson、サックスにジョシュア・レッドマン Joshua Redman、プロデュースは(キーボード&プログラミングも)デヴィッド・ギャムソン David Gamson、とこの辺りはミシェルのファースト(1993年)とセカンド(1996年)のアルバムでもお馴染みな。
ベースに関してはもう一人、アコースティックベースのクレジットもあって。ジャズなパートではそちらが、ダンサブルなパートに関してはミシェルがプレイと、凝ったアレンジのされた曲であります。チャカは難なく乗りこなして歌いあげてますけど。
豪華なバッキングですが、それに見合うボーカルですもの。

この曲も、それからチャカのベスト盤 “Epiphany: The Best Of Chaka Khan Volume One” (1996年)に収録されていた新曲も、チャカのニューアルバム “Dare You To Love Me”(1995年)として、まとめられて発売予定されていたらしい。そしてこの曲は元々が、ロージー・ゲインズ Rosie Gaines のアルバムのために用意された曲だったらしく、歌詞の方でプリンスが絡んでいたそうな。
結局、どちらのアルバムにしても発売中止で。これは奇遇、というか、そんなことは米国ではよくある話なのかもしれません。



2023年10月7日土曜日

Chaka Khan “Epiphany: The Best Of Chaka Khan Volume One”

Never Miss The Water
Every Little Thing

1996年。チャカ・カーンの、ベスト盤。それまでのヒット曲、代表曲を集めた前半に加えて、後半には現在進行の新曲を並べて構成された一枚。
新曲の方にはデヴィッド・ギャムソン David Gamson も関わっていて、そのつながりか、ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello が2曲に参加している形です。

“Never Miss The Water” は当時最新のチャカ・カーンを伝えるフロア向け曲。
ミシェルのなめらかなベース・ラインが曲の土台を支えながら、要所に入る彼女のボーカルもキモ。個人的にはチャカ・アンド・ミシェルとしても良いぐらいでしょうか。
シングル盤にはリミックス版も多数あって。ちなみにギターでワーワー・ワトソン Wah Wah Watson の名前も。

“Every Little Thing” は比べれば地味めながらジャズの香りが。こちらの曲でもミシェルのクールなベースが走っています。

チャカのボーカルは余裕しゃくしゃく、年季というものを楽しませてくれます。 
チャカ・カーンは、やはりジャズを忘れないですね。ここでも、エラ・フィッツジェラルドの(愛すべき)想い出に捧ぐ、と謝辞を記していたり。エラの最晩年は泣けますし。チュニジアの夜もやってます。



2023年9月24日日曜日

Stolen Moments: Red Hot + Cool

Me’Shell NdegéOcello Featuring Herbie Hancock
“Nocturnal Sunshine”

1994年。ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello の、彼女自身のアルバムには未収録の曲や、ゲスト参加をしたような曲が、見逃がすには惜しいと気づかされたのは、この曲からだったような。
こっちの水も甘くて、そして深かったというか。

ミシェルのベースとクラビネットに、ハーヴィー・メイソン Harvey Mason のドラム、ワーワー・ワトソン Wah Wah Watson のギター、という顔ぶれに、仕上げにハービー・ハンコック Herbie Hancock のピアノを乗せて。
プロデュースは(キーボード&プログラミングも)デヴィッド・ギャムソン David Gamson。
彼も関わったミシェルのファースト・アルバム “Plantation Lullabies”(1994年)から、地続きのサウンドを聴かせてくれます。ミックスはボブ・パワー Bob Power 。

あのファースト・アルバムのカッコ良いところを、ここにぐっと凝縮したような。それともアルバムの全曲を、もしもこちらのメンバーでやっていたらどうだったろうか、みたいな。一度限りだからこその名人芸、ではありますけども(ハービーのピアノはちょっと五月蝿いけど)。

このコンピ盤は、ほかの曲も聴きごたえのあるものが多く。
バーニー・ウォーレル Bernie Worrell も参加した曲もあって。
Groove Collective With Bernie Worrell “Rent Strike (DJ Smash Remix)”

2023年9月18日月曜日

Higher Learning (Music From The Motion Picture)

Me’Shell NdegéOcello
“Soul Searchin’ (I Wanna Know If It’s Mine)”

1994年。ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello は自分のアルバムでは独自のアーティスティックな方向や、内省的な世界へどんどん踏みこんでいきますが、それがこういったコンピ盤に提供したような曲では、案外と親しみやすかったりも。
自分のアルバムには未収録も多くて、結果として、別の流れができています。

1995年に公開された映画「ハイヤー・ラーニング」のサントラ盤に収められたこの曲も、イントロから気持ち良く誘いこまれて、ミシェルのボソボソとした呟きボーカルとブチブチのベース・ラインが始まります。
基本的な演奏はミシェルひとりによるもの。タイトルを直訳すれば、ソウルを探す(それは私のものなのかどうか)。自分探し。
プロデュースはミシェルと連名でデヴィッド・ギャムソン David Gamson 。印象的なイントロはおそらく彼によるもの、それにドラムも。90年代のミシェルにとってキーパーソンのひとりでしょうか。

ミシェルのアルバムには未収録、なのですがアルバム “Peace Beyond Passion” (1996年)の日本版CDにはボーナス曲として収録。続けて聴くには少々の違和感も。美しいイントロですし、ミシェルのボーカルも聴きどころ多し、やっぱり単独で聴きたいところ。

このサントラ盤には他にも、ラファエル・サディーク Raphael Saadiq “Ask Of You” や、スタンリー・クラーク Stanley Clarke “The Learning Curve” など、今でも聴ける傑作な曲が多々有り。



2023年9月9日土曜日

Harvey Mason “Ratamacue”

Scream

1996年。米国は西海岸を代表するという人気ドラマー、ハーヴィー・メイソン。あの70年代アタマのヘッドハンターズでの演奏などは、ファンク好きにもようく知られたところ。
この90年代半ばのアルバムでは、スムース・ジャズや、あるいはヒップホップ/ファンクの人気ぶりを横目に見ながらの、王道フュージョンを聴かせてくれます。

かなりポップな曲やボーカル入り曲もあって、全曲飽きさせないよう工夫されていますが。
ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello がベースで参加したこのインスト曲では、彼女のズビズビとうごめくベースが聴きどころ。音もくっきりとして聴きやすく。

ところで日本盤CDのオビには、主な参加メンバーの名前が。その数も多めながら、ここにミシェルの名はなし。当時まだ若手のミシェルよりも実績あるだろうベテランの方々が列挙されていて。ハーヴィー・メイソンのCDを購買するようなファン層には、彼女の存在はアピールしないと判断したということでしょうか。

確かにアルバムとしては、(実験的とか意欲的というよりは)全方位的な安定感あるサウンドでありましょうか。先に挙げたボニー・ジェイムスに続けて聴いても、ドラムの音量も大きめ、曲調も多彩ではありますが。



Boney James “Seduction”

Got It Goin’ On

1995年。「スムース・ジャズの人気サックス奏者のヒット作」と日本盤のオビに売り文句が有り(2015年の再発盤CDに)。確かにボニー・ジェイムスという方、現在までコンスタントにアルバムを発表して、本国では売れているようです。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello がベースで参加した曲はアルバムの2曲め。リズミカルにバウンスして、心地良くこちらを持ち上げてくれます。ボーカル無しのインスト、タイトルの “Got It Goin’ On” とか “Who - Hoo” とか、いかにも90年代なノリで掛け声が入りますが、あくまでジェントルに、ソフトに。
もしもミシェルがらみでお気に入りの曲を集めたベスト盤を自作するなら、これはオープニングの1曲めに続いての2曲めが似合うでしょうか。

アルバムとしては、穏やかめの同じような曲が多く。スムース・ジャズという音楽スタイルははっきりと分かりませんが、カフェで流しても邪魔にならないような。でも艶やかなサックスの音色とか、フレーズとか、ひたれる感じ。アルバム・タイトルは「誘惑」、「そそのかし」。
アルバム全体に柔らかな流れが続く中で、ホール&オーツの「サラ・スマイル」も同様にカバーしています。

2023年8月15日火曜日

The RH Factor “Hard Groove”

Poetry
Kwah/Home

2003年。ロイ・ハーグローヴ Roy Hargrove のこのアルバム、言うまでもなくカッコ良く、気持ち良く。
ディアンジェロ D’angelo のアルバム “Voodoo”(2000年)に参加したとか、その流れから(ジャズ界隈のファンを忘れることなく)独自に作成されたとか、というような背景を知らなくても、とにかく気持ち良く。

そのディアンジェロを始め、あの人もこの人も参加、と気になるゲストの名前が散見されるアルバムですが、ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello の名前が記されたのは2曲。
特に “Poetry” は、このアルバムの気持ち良さを代表するような曲。
ミシェルを始めとして、参加メンバー皆が絶妙で。もしもミシェルがらみでお気に入りの曲を集めたベスト盤を自作するなら、これはオープニングの一曲めに置きたいほど。

ボーカルはエリカ・バドゥ Erykah Badu ですが、各メンバーそれぞれの個性を活かした使い方に、ロイ・ハーグローヴの巧者ぶりがうかがえます。
ロイ・ハーグローヴは彼女のアルバム “Mama’s Gun”(2000年)と “World Wide Underground”(2003年)にも参加していますが、ひょっとすると彼女のアルバムよりも魅力的に聴こえたりして。

ミシェル・ンデゲオチェロもデビュー以来、ゲストとしてさまざまなアルバムに参加。数多くの曲が方々に散らばっています。
ベースのプレイにしても、ボーカルにしても、もちろん唯一無二のプレイヤー。どこであろうと、素晴らしい働きぶりを聴かせます。ではありますが、自由というか節操がないというか、とっ散らかっています。



2023年4月8日土曜日

The Power of the One

2020年。前作の “World Wide Funk”(2017年)と、そして今作と、どうもうまく馴染めないところが。正直、一枚聴き通すのが長いというか。

前作は新規の歌ものが多め、そして今作ではいかにもPファンクな曲を(また焼き直して)やっていたりするだけに、なおさらに。
“The Funk Capital of the World”(2011年)と比べても、ドラムのビートが早急で、直線的なノリに。この一本調子は意図してのもの、なのでしょうが。
平板なバランスを突き破るような異物、スペース・ベースも、、、。

以前のアルバムを聴けば、バーニーやるよな、ホーニーホーンズってシャレてたな、等々、やはり単純に楽しく。とはいっても、すでに古い仲間は遠く。今や孤軍奮闘といってよいのかどうか、案外、これで若返りを図っていたりするのかもしれないし。

それでもアルバムの締めくくり、最後の曲である、“Stolen Dreams” には救われました。
若手のボーカルとか、ジャズ屋の巧いプレイとか、ブーツィー以外が弾いているベースとか、別に聴きたいわけでもないそんな部分は無くても。この曲だけは、もっと倍の長さがあれば良いのに。
ブーツィーのゴムもだいぶ硬くなってしまった、としても、この曲のような部分は変わらないか。



2023年1月2日月曜日

World Wide Funk

2017年。この前年には、バーニー・ウォーレルが旅立ってしまいました。ブーツィーの傍らで、あのストレンジな音が鳴ることはなくなり。
アルバム “The Funk Capital of the World”(2011年)で、一区切りがついた、といえましょうか。

そしてこれ、CD盤を入れた内袋には、グッドヴァイヴの新しい福袋、と大きく記載。
World Wide Funk Music Is The New Fresh Bag Of Good-Vibes

ベース・プレイに関してはブーツィーが一歩下がって、他のベース弾きを前に立てた、そんな曲が目立ちます。若手と思われる面々も多く起用されていますし。
アルバムの終盤には、アッパーな曲をたたみかけて(いつになく)ストレートに盛り上げたり、というサービスまでも。

The New Fresh な、というのが何かはともかく。それがバーニー不在の代替となっているかもさておき。
なにより、このアルバムからは、ブーツィー自身のベース・プレイがますます控えめに。なにやら分厚くて派手な音に紛れこむように引っ込んでいます。