2025年9月28日日曜日

Lizz Wright “Fellowship”

Fellowship
Feed The Light

2010年。リズ・ライトは米国の歌手。ジョージア州出身で、ハイ・スクール時代は聖歌隊に参加だそう。
ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello はベースで二曲に参加。といっても特に目立つこともなく、正直、彼女でなくてもという音ですが。
“Fellowship” はミシェル作の曲ですが、アルバム “Comfort Woman”(2003年)に収録されていたオリジナル版はレゲエでした。

リズ・ライトは、ミシェルとは関わりが多いよう。

ミシェルのアルバム “Bitter”(1999年)をプロデュースしたのがクレイグ・ストリート Craig Street でしたが、リズ・ライトも彼をプロデューサーとして迎えて2ndアルバムを制作。
そのアルバム “Dreaming Wide Awake”(2005年)には、“Chasing Strange” というチョコレート・ジニアスの曲が収録されていて。
チョコレート・ジニアス Chocolate Genius Inc. によるオリジナル版は “Black Yankee Rock”(2006年)というアルバムで聴けますが、このアルバムのプロデュースがクレイグ・ストリート、ミシェルもベースで参加で。

またリズ・ライトは、ザ・バンド The Band のトリビュート作に参加。アルバム “Endless Highway: The Music of The Band”(2007年)に収録されたカバー曲 “Whispering Pines” では、ジェイコブ・ディラン Jakob Dylan とデュエット、プロデュースはジョー・ヘンリーが。
で、ジョー・ヘンリー Joe Henry のアルバム “Scar”(2001年)をジョーと共同でプロデュースしたのがクレイグ・ストリート、でミシェルも一曲 “Mean Flower” でベースを。
元々、ジョー・ヘンリーはクレイグ・ストリートがプロデュースしたミシェルのアルバム “Bitter” に、一曲 “Wasted Time” にボーカルで参加していました。

そしてリズ・ライトは、ミシェル自身のアルバム “Pour une Âme Souveraine: A Dedication to Nina Simone”(ニーナ・シモン追悼作)(2012年)にゲストとして参加することに。“Nobody’s Fault But Mine” で歌っています。

なにかと接点が多いような。でもってリズ・ライトの新しいアルバム “Shadow”(2024年)では、再びミシェルがゲストに招かれています。



2025年9月14日日曜日

Karl Denson’s Tiny Universe “Brother’s Keeper”

2009年。カール・デンソンは米国のサックス吹き、兼ボーカル。
自身のアルバムや活動に加えて、ジャズ畑からロック・ポップス界隈まで数多くの(有名スター級の)方々との共演やバックを努めていて、幅広く活動している方のよう。

こちらは、自分の歌が主役のR&Bなアルバム。
全編、60-70年代のレトロなスタイルを重視したR&Bバンドといった趣きで。一曲めが、まるで往年のモータウンを思わせるような曲。まさにソウル歌手という線で歌っております。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello はベースで全面的に参加。
カール・デンソンとミシェルは、これまでいくつかのアルバムで、同じゲストとして参加し名を連ねたりもしていますが、同じ曲で直に共演というのはなかったような。
ミシェルのプレイはいつも通り間違いなく。バンドの一員として収まっていますが。

収まりすぎといいますか、それ以上、を期待するとなるとどうも。バランスが大事という見方もありますが、その点は刺激に欠けるかも。
歌のない、インスト曲が一曲だけあって。ベースのリフも走りますが、この曲ぐらいはもう少し各プレイヤーたちに暴れさせるとか。歌伴ではないバンドの見せ場があっても良いかも。

ミシェルもこの時期、モータウンやスタックス、アトランティック等の、60年代末のナンバーをけっこうカバーしていますし。せっかくだから(ベース弾きという以上に)彼女を活かして、何かもう一味、レトロ趣味にプラスしていただければ。



2025年8月17日日曜日

Jason Lindner “Gives You Now Vs Now”

Worrisome
Big Pump

2009年。米国ジャズの鍵盤弾き、ジェイソン・リンドナーのアルバム。
“Now Vs Now” とは、マーク・ジュリアナ Mark Guiliana のドラム、パナギオティス・アンドリュー Panagiotis Andreou(パナギオティス・アンドレオウ、パナジョティス・アンドリオウ、ギリシャ出身らしい)のベース、というトリオを核としたグループ名でもあるよう。
「ジェイソン・リンドナーがあなたに贈る NOW VS NOW」と表記されたジャケットは、白と黒の鍵盤をシンプルに表したものでしょうか。

涼しげなラテンや激しめのロックまで、色々とやってみたという感じですが、なにをどうやっても(変なドラムとかも)安定して聴かせる実力派たちであります。
この三人だけで演奏した曲というのは一曲のみですが、それには “Friendship and Love (aka Pretty Three)” とタイトルされております。仲が良いようです。

プロデュースはミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello で、それに(with とある)ジェイソン・リンドナーと Eric Elterman という方(録音等、エンジニア系のよう)。ミックスはボブ・パワー Bob Power が。

ミシェルは二曲の演奏にも参加。“Worrisome” にはベースで、“Big Pump” にはボーカルで。といっても途中で少しだけ登場してくるとか、歌うわけではなく少しコーラスを入れたという程度。この辺り想像すると、裏方仕事にこもらずに、ここでベースでもやってみたら、という感じで楽しげな録音だったのかななんて。

ジェイソン・リンドナーとマーク・ジュリアナですが、この後、共に、D. ボウイの遺作となるアルバム製作のセッションに参加することになります。



2025年8月14日木曜日

Myron “Myron & The Works”

2008年。マイロンなる方が全曲を歌いプロデュースも本人がというアルバム。
ジャケットのデザインからするとジャズ系、少し小難しそうな印象もありますが、フックの効いたわかりやすい曲ばかり。案外に、切ない系、夏の終わりにいかがみたいな。

全9曲、チャールズ・ヘインズ Charles Haynes のドラムに、ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello がベース、エレピ(ローズ、ウーリッツァー)でロバート・グラスパー Robert Glasper という顔ぶれ。その他のギターやシンセをマイロン本人が。

充分に、ディアンジェロ D’angelo 好きにもお勧めできるような、歌ものアルバムであります。バンドの演奏も楽しめますし。
もしもディアンジェロがもっと頻繁に、3年置きほどにアルバムを発表していたら、このような一枚もあったかも、とそんな気もしないでもないような。

シンプルにラヴソング、夏の夕暮れに、みたいな風情で、親しみやすいジャケットにしてアピールするのも似合うかも。
とはいってもこの顔ぶれですから、歌伴にとどまらずに、さらに自由な演奏も聴いてみたいところ。一曲ぐらいインストを入れるとか、もう少しジャズに寄せたような。

なお、CDトレイの内側にはギターを抱えたマイロンの写真が。お気に入りなのでしょうか、Tシャツの胸にはジミの顔が。
本国盤CDを見ると、この写真がジャケットに使用されています。ですが、モノクロ 二階調化されていて、その際に加工したのか、ジミの顔も消されて別の模様に差し替えられています。




2025年7月27日日曜日

Steve Lehman “Demian As Posthuman”

Vapors
Logic - Meshell
Community

2005年。スティーヴ・リーマン Steve Lehman はニューヨーク生まれのサックス吹き。ジャズ、それに実験的 experimental music と紹介されていますが(ウィキペディアより)。
ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello がベースで参加したのは3曲。ドラムはエリック・マクファーソン Eric McPherson が、2曲でピアノのヴィジェイ・アイヤー Vijay Iyer も、という顔ぶれ。それに Turntables, Electronics としてDJの Jahi Lake が変な音を差しこんできたり。

緊密な無駄のない演奏。タイトながらバネがきいているというのか、引きこまれます。
この3曲を一日で録音したと記されているのですが、何回ほど練習したのか知りたいところ。やっぱり最初は譜面を渡されるのでしょうか、事前にデータで聴いているのでしょうか。
実験的といっても小難しいわけではなく、自分にとってカッコ良い音を狙ってる感じでしょうか。

なお全曲がスティーヴ・リーマンの作とクレジットされていますが、アルバムのエンディングでもあり “Community” と題された(共同体?仲間?)曲だけは、リーマンに加えて上記の参加者4名による作となっています。澄ました顔してそこはポイントだったのかも。



2025年7月6日日曜日

Mike Stern “Who Let The Cats Out?”

KT
Texas

2006年。マイク・スターンは米国ジャズの有名ギター弾き。80年代の若手時代には、マイルスやジャコともやっているくらいですから、フュージョンとかロックといった方面は当然のこと、スタンダードなジャズももちろん。
このアルバムもギター一辺倒でがむしゃらに弾き倒すわけではなく、ベテランとして、管楽器や鍵盤も交えたバンドで、自作曲を色々と展開しています。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello は2曲に参加。
どちらの曲も7分から8分と、じっくりと聴かせる長さで。正直、似たような曲調の2曲ですが、それだけに、あえて前には出てこない、ミシェルのスタイルが堪能できます。太く重いベースで曲を支えつつ、要所では、けっこうズビズビ走ったり跳ねたり。
“KT” には、トランペットでロイ・ハーグローヴ Roy Hargrove も参加。

また、別にヴィクター・ウッテン Victor Wooten が参加の曲もあり。これもアタマにどの字が付くようなファンクなベース。ミシェルとはまた違うスタイルですが。
ヴィクターの超絶技巧ぶりに関しては、彼がメンバーであるハードフュージョンなアルバムの諸作品でたっぷりと聴くことができます。強烈です。



2025年6月16日月曜日

Joshua Redman Elastic Band “Momentum”

Greasy G

2005年。ジョシュア・レッドマンは米国ジャズの有名サックス吹き。という彼の、ジャズ・ファンクなと紹介されることの多いアルバム。わざわざバンド名義の扱いにしてある、というのもそれっぽいところでしょうか。

Elastic とは、弾力のある、伸縮自在、しなやか、だそう。ブーツィーのラバーバンドとまったく同義、重なる名前なのですけども。
例えば先にロイ・ハーグローヴがグループとして発表したアルバム Roy Hargrove Presents The RH Factor “Hard Groove”(2003年)と比べてみても。このアルバムを聴くのは、大半がジャズ好きの方ではないかなという印象であります。部屋で座ってリスニング、みたいな。

主役のサックスが丹念にフレーズを重ねて、なにしろ真面目さが伝わってきます。真面目すぎて、部屋の掃除でもしながら、とか晴れた日のドライブに、には向いていないような。取っつきやすい歌もの曲もなし。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello は一曲に参加。太く重く、さすがにファンクなベースを聴かせます。
ゲストとしては、他にドラムのクエストラブ Questlove もプレイしている一曲があり。

ヒップホップよりは人力の、70年代なノリが溢れるサウンドですから、これはいっそライブ・アルバムとしてやってくれたらどうなのかな、なんて。ジャズ好きからは却下でしょうか。
それと、ジャケットのデザインはモノクロ写真で地味ながら、ブックレットの中面は転じて鮮やかなカラー写真に。それも本人の顔写真ばかり。バンド・メンバーやらスタッフやらは一切なし。



2025年5月24日土曜日

DJ Logic And Jason Miles “Global Noize”

A Jam 4 Joe

2008年。鍵盤のジェイソン・マイルス Jason Miles と、米国のDJ、ターンテーブリストによる連名のアルバム。
このDJ ロジックはジェイソン・マイルスのアルバムには先に幾度か参加していて、同じように、今作にはジェイソンのアルバム “Miles to Miles”(2005年)にゲスト参加した顔ぶれが引き続いて呼ばれたりしています。
ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello とドラムのジーン・レイク Gene Lake や、バーニー・ウォーレル Bernie Worrell 等、といった面々。

ミシェルが参加したのはアルバムのオープニングを飾る曲。
ミシェルのベースに、ヴァーノン・リード Vernon Reid によるギター、という組み合わせで。サックスでボブ・バーグ Bob Berg も、彼は1984年にマイルス・デイヴィス・バンドに参加して名を上げた、というジェイソン・マイルスと同じようなキャリアのお方。
聴きものはなんといっても、ミシェルのぐいぐい走るファンクなベース、アッパーなカッコ良さ。ヴァーノンもジェイソンも引き立て役に廻って、珍しくミシェルが主役でしょうか。

バーニー・ウォーレルの参加は2曲(2曲め “Spice Island” と9曲め “Pool Of Honey”)。曲も良いし、いつもの通りのバーニーの指さばき、鍵盤使いでこれも充分に楽しめます。 

このアルバム、世界中の音というタイトル通りにインドはボンベイ出身という女性ボーカルもいたりとエキゾチックな面もありますが、基本はダンサブルなインスト集。ビル・ラズウェル Bill Laswell をぐっとくだけさせたような具合でしょうか。あれほどインテリっぽく気取ってはいませんが。
クラブ向けのちょっとマニアなサウンドを聴かせそうなジャケットも、これがよく見るとチープ、なかなか雑な写真の切り貼りで。
その後、この Global Noize というグループ名で活動、スライのカバー・アルバム等を出しておりますが、やはりジェイソンという方は、スムースジャズの人のようであります。

ジェイソン・マイルスとミシェルのつきあいは古いようで、元々、米国のTV映画のサントラ盤だという “People: A Musical Celebration Of Diversity”(1995年)に収録されている、
Dave Koz and Jason Miles “Cara’s Theme”
という一曲があって。劇中曲でしょうか、これにミシェルがベースで参加している模様。この曲は翌年のジェイソン・マイルスのアルバム “Mr. X”(1996年)にも再収録。



2025年5月6日火曜日

Jason Miles “Miles to Miles”

Guerilla Jazz

2005年。鍵盤のジェイソン・マイルス Jason Miles という方、実際にマイルス・デイビス Miles Davis やマーカス・ミラー Marcus Miller とも共演しているそうですが、そのマイルスをネタにしたアルバム。
正式なアルバム・タイトルは “Miles to Miles: In the Spirit of Miles Davis” と紹介されている場合もあり。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello が参加したのはアルバム中でも地味な曲。
ミシェルはベースのみ。ドラムのジーン・レイク Gene Lake と共に、徹底して単調に、けして前には出てこないプレイに始終しています。
この二人なのだから、ちょっともったいない使い方かもしれませんが、それよりも、ミックスとかで、もっとズブズブと地を這うような、泥臭いファンクにも仕上げられるだろうなと思ったり。

このアルバムは、ミシェルも参加したロイ・ハーグローヴの Roy Hargrove Presents The RH Factor “Hard Groove” やジャック・シュワルツバルト Jacques Schwarz-Bart の “The Brother Jacques Project - Inspiration”(どちらも2003年)に近い音ではありますが、もっとスムースジャズ的といったら良いのでしょうか。よりBGMな。

他にも、“Voices On The Corner” という曲もあって、バーニー・ウォーレル Bernie Worrell とジェイソンの鍵盤同士二人だけでプレイしています。On The Corner ということでマイルスのあれをバーニーが!?と思いがちではありますが、まあ軽い冗談みたいなもので。肩すかしといいますか、これにしても藪の中に分け入っていくようなことはせず。

アルバム最大のおすすめ曲といえば、“Flamenco Sketches” かもしれません。
マイルスからインスパイアされた(と思われる)曲が並ぶ中で、唯一のマイルスのカバー曲。あのメロディを、愛されるスタンダード、あるいは人気の高いポップ・ソングとして、しっかりまとめたような。
ドラムはジーン・レイク、ピアノは松居慶子 Matsui Keiko が。とても気持ち良く。



2025年5月2日金曜日

The Brother Jacques Project “Inspiration”

Home

2003年。Brother Jacques とは、ジャック・シュワルツバルト Jacques Schwarz-Bart の別名(dubbed)とのこと(ウィキペディアより)。 
サックス吹きである彼は、カリブ海は西インド諸島のなか、フランスの海外県であるグアドループ Guadeloupe の生まれだそう。ジャック・シュヴァルツ - バルト、カタカナには難しい名前であります。

彼は、ディアンジェロ D’Angelo の2000年ライブ・ツアー The Voodoo Tour に参加、あの The Soultronics の一員でありました。
そしてロイ・ハーグローヴがグループとして発表したアルバム Roy Hargrove Presents The RH Factor “Hard Groove”(2003年)にも全面的に参加。プレイヤーとしてはもちろん、本人の作による一曲、“Forget Regret” も収録されて。ここでボーカルを取った Stephanie McKay は、彼の奥さまなのだとか(ウィキペディアより)。

そんな流れの延長にこのアルバムも。ジャック・シュワルツバルトに加えて実力派のメンツ(ドラムは Terreon Gully 、ベースは Jonathan Maron 、鍵盤の Jason Lindner )が、じわじわと聴かせます。
ロイ・ハーグローヴが色あざやかとすると、こちらはモノトーンな印象でしょうか。静かめながら、ファンクしてます。

“Forget Regret” も、こちらの方のメンバーでの演奏版で収録。ロイ・ハーグローヴ版とどちらを先に録音したのかは不明ですが、ボーカルは同じく奥さまが。この方、アルバムの数曲を歌っておりますが、他にも独自に活動している模様。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello がベースで参加したのは、アルバムのラストを飾る曲。ジャックと共に作曲(Composed)、副プロデュースとミシェルの名前がありますが、かなり地味であります。
ドラムがミシェルとはもちろん、スティーブ・コールマン Steve Coleman 等で叩いている実力派のジーン・レイク Gene Lake ですが。たまたまスタジオ見学に来たら即興でできたのかな、とそんな感じもする、良くいえば、素材の味深いオマケ曲でありましょうか。

このアルバムはフランスではストレートに、Jacques Schwarz-Bart “Rise Above” として発売(2010年)。2曲がカットされて、中盤の曲順も異なっていたりして、おそらくファンクな印象を強めたダイエット仕様ではないかと思われます。ジャケットもシャープなデザインに。

現在、ジャック・シュワルツバルトはフランスを拠点に、もっとカリブ海寄りの音を意識したジャズを聴かせたりしているようです。聴いてみたいアルバムもあり。
なお、鍵盤を担当したジェイソン・リンドナー Jason Lindner ですが、2009年の彼のアルバムはミシェルがプロデュースをすることに。ドラムはマーク・ジュリアナ Mark Guiliana が叩いておりますが、その後、ジェイソンとマークの二人は共に、D. ボウイの遺作となるアルバム製作のセッションに参加します。



2025年4月12日土曜日

Chocolate Genius Inc. “Black Yankee Rock”

2006年。チョコレート・ジーニアス Chocolate Genius Inc. は、マーク・アンソニー・トンプソン Marc Anthony Thompson によるプロジェクトとのこと。本人を含めてニューヨーク在住のミュージシャンが多数参加、音楽的な集まり Musical Collective なのだそう(ウィキペディアより)。

実際、チョコレート色の才人(株)などと名乗っている、この主役(社長か)を皆で応援しているからこその集まりなのでしょうけれど、音の方は真面目というか地味め。アルバムの日本版にあるオビの宣伝文句には、「シルキーでメランコリックな美が詰まった真夜中の音楽」とありますが、その通りであります。
プロデュースはクレイグ・ストリート Craig Street が。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello も参加者の一人ですが、クレイグとのつきあいはアルバム “Bitter”(1999年)からとして、この後の2010年代に入っても続くことに。
プリンス Prince やディアンジェロ D’Angelo のような黒っぽい曲があったり、ディランだったり、ミシェルやクレイグも参加したジョー・ヘンリー Joe Henry のアルバム “Scar”(2001年)を思い起こさせたり。要は米国らしい多彩な曲が並んでおりますが、キーワードは都会でしょうか。
チョコレート・ジーニアスの黒っぽさを前に出さないボーカルは、肌の色を売りにせず、自由に多くの曲を歌い演奏したいからでしょうか。

ミシェルの存在は特に目立たず、はっきりこれと聴きとれるような曲もなし。他の有名プレイヤーたちも同様で、まず曲ありきのアレンジ。クレジットも参加者たちの名前がひとくくりで並べてあるだけで、担当した楽器やら曲目といった詳細はなし。

強烈な個性やポップなつかみがなくても。じわじわと、聴くほどに彼のパーソナルな世界に引きこまれて。いつのまにか好きになっているような。
チョコレート・ジーニアスのアルバムは手元にもうひとつ、

Chocolate Genius. “Black Music”


があり(1998年)。名義には、Inc. がつかず。
アルバム “Black Yankee Rock” の方のジャケットが、色を変えた戦闘旗、南軍旗を連想させたり、アルバムのタイトルからして激しめの、強面のようではありますが。
こちらはマックスウェル Maxwell みたい(失礼)なジャケットですが、写真は本人にはピントは合っておらず、後ろの背景の方がくっきりしていて。
どちらもシルキーで内省的ばかりではない音であることは伝わります。

やっぱり真夜中度高し。





2025年3月22日土曜日

Exit Music: Songs with Radioheads

Me’Shell NdegéOcello & Chris “Daddy” Dave
“National Anthem”

2006年。英国のバンドであるレディオヘッド Radioheads のカバー集。
ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello はクリス・デイヴ Chris Dave と組んで参加。元曲を、そのままといって良いくらいにカバー、あのベース・ラインもそのまま。

どうしたと訊きたいくらいの素直さですが、元も元ですから、やりすぎや、変態的にならないようなアプローチということでしょうか。
元曲の後半にあるあの盛り上がりをミシェルはどのように展開するか、というのも聴きどころでしょうか。

チャールズ・ミンガス Charles Mingus にインスパイアされた、という盛り上がりパートですが。
レディオヘッドのボーカルであるトム・ヨーク Thom Yorke が、ミンガスのライブ・アルバム “Town Hall Concert”(1964年)を挙げて、“organised chaos” と評しています(ウィキペディアから)。このベース・ラインの方は、16才の時に思いついたとカッコ良くも発言し、ついでにベースも弾いているのがトム・ヨークであります。

こちらのクレジットでは、プロデュースにアレンジはミシェルとクリス・デイヴ、二人に演奏者(Performer)とあって、歌とベースがミシェル、ドラムはクリスとなっていますが、加えてホーンでケビー・ウィリアムズ Kebbi Williams も。アトランタ出身で、テデスキ・トラックス・バンド Tedeschi Trucks Band に参加したり、クリスとも幾度かプレイしているサックス吹きです。ミックスはボブ・パワー Bob Power が。

元曲のホーン・セクションを混じえての盛り上がりのキイワードとなるのが、“free jazz” だそう(これもウィキペディアから)。そこは、ミシェルを始めツワモノな顔ぶれによる余裕のカバーであります。もう少し時間を伸ばして、元曲にない、さらなる盛り上がりの第二波なんて加えて暴れてみたら(しつこいだけか)。
レディオヘッドの曲に関しては、他にもミシェルによるカバーを聴いてみたいような曲が、多々あるような気も。




2025年2月23日日曜日

Interpretations: Celebrating The Music Of Earth, Wind & Fire

Me’Shell NdegéOcello
“fantasy”

2007年。アース・ウィンド・アンド・ファイアー Earth, Wind & Fire のカバー集。
モーリス・ホワイト Maurice White の名前まで(エグゼクティブ・プロデューサーと)クレジットされています(が実際になにを務めたのかは不明)。これが2006年に再始動した新生スタックス・レコード Stax Records から発売された初の新録アルバムとのこと。

どれも有名、聴いたことがあるような曲ばかりで。真面目に、良いメロディを良い歌で伝えようとカバーしたものが多く。直球ど真ん中狙い、というのがこのアルバムの Interpretations(解釈とか理解)ということになりましょうか。
ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello だけは、遊びというかひねりを効かせた、アルバムのラストに配置するしかないような変化球に仕上げてきました。
ミシェルのこのカバー、プロデュースの名義が、A Different Girl (Every Night) となっております。

同じ年に、ミシェルのオリジナル・アルバム “The World Has Made Me the Man of My Dreams”(2007年)、邦題「夢の男」が発売されており。
日本版に収録されたボーナス曲のタイトルが、毎晩違う女の子、A Different Girl (Every Night) であります。
歌詞としては、あんたは毎晩違う女の子がお望み、こっちは毎晩違う女の子になりたいの、みたいな。ミシェルがなにやらリスナーに向けてぼやいたような内容ともとれる歌詞であり、で、You’re a fucking cunt と言っていたりも。 
その通りに、確かに聴き手であるこちらは毎晩のようにCDを取っ替え引っ替えしてはあれこれとリスニングしたいですから。そしてこのアルバム「夢の男」で目立つのが、ロックな曲、激しめのアレンジであったりします。私は違う女の子になりたいの、という通りに、これまでのミシェルのアルバムとはまた違う音を鳴らしています。

アースのカバーにしても一筋縄ではいかない、とんがったものに。
ベース、ドラム、ギター、パーカッション、ボーカルは、アルバム「夢の男」の方にも共通して参加している面々で。特にドラムのディアントニ・パークス Deantoni Parks は、アルバムの数曲で叩いていて重要な役割を担っています。

他の曲の、良い歌をまっすぐに聴かせようという、当たり前な判りやすさと比べれば、ミシェルはやはりカーブ球でありましょうか。これをキレ味鋭いと取るか、危険球すれすれと取るかは聴き手次第。
そんなオルタナティヴな役割の曲をもう少し数曲ほど入れていたら。そうすると理解されない、売れない?
ミシェルの場合はけして引き立て役では終わらないのは確か。



2025年2月8日土曜日

Soul Men: Original Motion Picture Soundtrack

Me’Shell NdegéOcello
“Water”

2008年。映画「ソウルメン」のサントラ盤。監督はスパイク・リーの従兄弟のマルコム・D・リー Malcolm D. Lee ですが日本未公開、日本語版のDVDあり、という作品。

サントラは2006年に再始動したスタックス・レコード Stax Records からの発売。
ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello による往年のスタックス・ナンバーのカバーを一曲収録。
ミシェルがカバーしたのは、エディ・フロイド Eddie Floyd の1968年の曲。作者はスティーヴ・クロッパー Steve Cropper とエディ本人。エディといえば、“Knock on Wood”(1967年)でも知られる往年のスタックスの看板シンガーのひとり。

なにしろこの大元が相当にカッコ良いですから。ミシェル版にしても、オリジナルにならったようなアレンジで、往年のソウルな感じをそのまま持ってきて歌っております。
映画は未見ですから、どのように使われているものか、当時風のアレンジなのにも理由があるのか、不明ですが。オリジナルと聴き比べてしまうと、少々、落ち着きすぎのようにも。プロデュースはミシェル。

同じこの監督の映画では、先に「ベストマン」The Best Man (1999年)のサントラ盤にも、ミシェルのアルバム未収録曲が収められており。また、映画「アンダーカバー・ブラザー」Undercover Brother (2002年)のサントラ盤には、ブーツィーが参加というありがたい監督であります。

映画「ソウルメン」には、アイザック・ヘイズ Isaac Hayes が(本人として)出演。サントラにも彼の歌う一曲が収録されていますけれど。
ヘイズといえばやはり「黒いジャガー」、あのテーマ曲であります。
ニューヨークの街角をジョン・シャフトが歩くオープニングのシーンは忘れられませんとも。ヘイズが担当したサントラ盤 “Shaft”(1971年)は、往年のスタックス・レコードを代表するような一枚でありますが、新生スタックスからも、ヘイズの新作を出す予定があったそうです。2008年にヘイズは逝去。



2025年1月18日土曜日

Talk To Me (Music From Motion Picture)

Me’Shell NdegéOcello feat. Terence Blanchard
“Compared To What”

2007年。映画「Talk To Me」のサントラ盤。といっても、収録されているのは往年のソウル・ミュージックばかり、というヒット・パレードなコンピ盤。アトランティック・レコード Atlantic Records 発。
オーティスやサム&デイヴ等、60年代のヒット曲が11曲に、71年のドラマティックス The Dramatics の一曲も、という並び。そこに、新録としては一曲のみ、ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello のアルバム未収録曲が最後に収められている、という(なかなかに)大胆な構成。

映画はワシントン D.C. の人気ラジオ・テレビ・パーソナリティ、ラルフ・ピーティー・グリーン Ralph “Petey” Greene を描いたものだそう。この方、クスリ中毒やら強盗犯で受刑したやら、色々と経験を重ねたタレント兼地域活動家とのことで(ウィキペディアより)、60年代後半から80年代前半の期間を舞台に描いた物語だそう。

オマケのようにこの曲だけが新録、というミシェルの一曲がどこに流れるのかは未見ですが、これもカバーで、1969年にロバータ・フラック Roberta Flack が歌ったもの。作者はユージン・マクダニエルズ Eugene McDaniels という方。
同じこの方の作では、そのロバータを始め、マリーナ・ショウ Marlena Shaw や、それにディアンジェロ D’angelo もカバーした “Feel Like Makin’ Love” も有名でしょうか。

ミシェル版のカバーは、がらりと現在のアレンジ、質感ながら、元のロバータ版にならったのかジャズなウッドベースがボンボボンと走って。途中、いきなりファンクが差しこまれる、急展開も聴きどころ。このヘビーなパートのベースはミシェルでしょうか。

クレジットがそっけないもので、演奏(Performed)はミシェル、トランペットでテレンス・ブランチャード Terence Blanchard をフィーチャリング、そしてプロデュースはミシェル、とそれだけ。歌以外のドラムや鍵盤、ベースのすべてもプレイしているのでしょうか。かねてからウーリッツァーやプログラム担当みたいなクレジットはありましたけど。

ともかく、歌や演奏のアレンジは完全にミシェルらしさに溢れて。そこは映画「永遠のモータウン」“Standing In The Shadows Of Motown” でモータウンに歌い手として招かれた立場とは異なる点。元歌を尊重しつつ自分のスタイルで好きに調理しております。