2017年2月26日日曜日

Material “Hallucination Engine”

“The Hidden Garden / Naima”

1994年。ビル・ラズウェル(Bill Laswell)の関わる幾多の録音の中でも、マテリアルは総本山となる名義でしょうか。ウェイン・ショーターまでゲストに招かれて、アラブとかインドとかエスニック風味もたっぷりに、ビルの多様な音が総決算的に詰めこまれています。

クレジットによれば生ドラムはスライ・ダンバー一人ですが、ベース担当はビル・ラズウェル(Bill Laswell)、ヨナス・エルボーグ(Jonas Hellborg)、それにブーツィー・コリンズ(Bootsy Collins)の3名の名前が並んでいます。
これはブーツィーのスペース・ベースと判るのが、“The Hidden Garden / Naima” の前半部。バーニー・ウォーレル(Bernie Worrell)もエレピ、ハモンド・オルガンでいますが、無理にでもアラビック風味を盛りつけてあります。


Aiyb Dieng “Rhythmagick”

1995年。ビル・ラズウェル(Bill Laswell)の関連作品で必ず見かけるお名前の方、アイーブ・ディエンのアルバム。
専門である打楽器だけで展開される曲もあるものの、エスニック風味というよりはやっぱりビル・ラズウェルによる無国籍なダブ寄りのサウンドでしょうか。

“Boka Devotion” はブーツィーのベースだと思うけども、“Sabar” や “Soweto Funk” での、ギターのリズミカルなプレイが、バーニーのオルガン、クラヴィネットと共に目立っています。ダブなファンクが気持ち良く。
他に、ファラオ・サンダース(Pharoah Sanders)参加のジャズ風もあり。


Deadline “Dissident”

1991年。デッドラインのこのアルバムは、ヨナス・エルボーグ(Jonas Hellborg)とビル・ラズウェル(Bill Laswell)のプロデュース。それにブーツィー・コリンズ(Bootsy Collins)が加わって、ベース奏者の曲者3人と、鍵盤でイェンス・ヨハンソン(Jens Johansson)に、バーニー・ウォーレル(Bernie Worrell)等、というメンバー。

作曲クレジットを見ると、主役はヨナス・エルボーグとなりましょうか。誰かのソロ演奏やインタープレイがじっくりと展開されたりという場面はなく。音響の方、いつものビル・ラズウェルによるダブかなと思えるアルバムです。

作曲にブーツィーの名前はありませんが、ダンサブルなビートに乗ってスペース・ベースがバキバキと登場する曲があったり、歪んだ変な音を出していたりします。



Praxis “Sacrifist”

“Deathstar”

1993年。プラクシスの2作目アルバム、ブーツィーの存在はとても薄くなり。ビル・ラズウェル Bill Laswell とバケットヘッド Buckethead によるプロジェクトという色が強いでしょうか。
その代りに一曲のみ、ブーツィー単独の作としてクレジットされている、しかもこれが10分近いという曲が収められています。

この長尺の間、左右のチャンネルからブーツィーのスペース・ベースのソロ演奏が垂れ流しされます。
弦をかきむしるだけ、みたいな効果音や轟音が描くのは、曲名通りのとても荒涼とした風景です。起伏も展開もなく、演奏というよりは音響です。

ブーツィー自身のアルバムでは、とても聴けない一曲ですね。これを聴けるだけでも感謝です。ルー・リードやソニック・ユースのように、ギターの轟音(だけの)アルバムがブーツィーにあっても、まったくOKなのですが。


2017年2月25日土曜日

The Golden Palominos “This Is How It Feels”

1993年。ビル・ラズウェル Bill Laswell のプロデュース作。クレジットにはブーツィーのギター、バーニーのハモンド・オルガンとあるのですが、これというほどの演奏は聴けず。バックに徹しきっています。

アルバムは1、2曲を聞いている内はいいのですが、同じような曲、ムードが続いて興味が続かず。この辺りはインストながらロバート・マッソのギター・アルバムの方が上手に聴かせてくれます。ブーツィーにバーニー、これはもったいないとしか。
翌年にもほぼ同じ音で、The Golden Palominos “Pure”(1994)も有り。


Robert Musso “Active resonance”

“All Funked Up”

1992年。ビル・ラズウェル Bill Laswell の関連作品で必ず見かけるお名前の方、ロバート・マッソ。 ギターが主役のジャズ・ロックなサウンドで、ビル・ラズウェルの多彩な世界をノリ良く聴かせてくれます。

ブーツィーはボーカルで一曲に参加。といっても歌うわけでなく、掛け声とかはやし立てているだけ。
JBズを下敷きにしたようなホーンも活躍するこの曲のベースは、ヨナス・エルボーグ(Jonas Hellborg)。彼の高等プレイをはじめ、達者な演奏がアルバムのあちこちでさらりと展開されますが、全般に万人向けのジェントルな仕上がり。

クレジットによれば、ほとんどのベースをビルがやっているようですが、彼のベースラインを聞いていると、どうしても、もう少しダブっぽく処理しても良いかも、と思ったり。


2017年2月24日金曜日

The Last Poets “Holy Terror”

“Homesick”
“Men-Tally”
“Funk”
“Black And Strong (Homesick)”

1993年。ビル・ラズウェル Bill Laswell のプロデュースによるラスト・ポエッツ名義のアルバム。 ベース、ギターでブーツィー、鍵盤でバーニーも参加、クールなカッコ良いバックトラックが聴けます。

白状しますと、主役であるウマー・ビン・ハッサン(Umar Bin Hassan)とアビオドゥン・オイエウォレ(Abiodun Oyewole)、ゲストであるグランドマスター・メリー・メル(Grandmaster Melle Mel)のボーカル、ラップがない方が、もっと演奏に集中して聴けるのにな、と思ったり。

“Homesick” をベースに、ジョージ・クリントン親分の歌うテーマ部分などを追加して11分を超える長さに伸ばされたバージョン “Black And Strong (Homesick)” は、輸入盤にのみ収録。

また同年、ビル・ラズウェルのプロデュースによるウマーのソロ名義作 “Be Bap Or Be Dead” も有り。“Am” という曲でブーツィーはギターを弾いていますが、音の質感がまったく同じ。


2017年2月19日日曜日

Gettovetts “Missionaries Moving”

“Death Command”

1988年。映画「ワイルド・スタイル」(1983)にも登場していたラメルジー(Rammellzee)とショックデル(Shockdell)のアルバムを、ビル・ラズウェルがプロデュース。ブーツィは1曲にベースとボーカルで参加。

ギターのリフが印象的なナンバーですが、8分40秒ほども繰り返しされます。激しい曲調に、あわただしいベース演奏が聴けますが、これはブーツィには珍しいかもしれない。


Afrika Bambaataa & Family “The Light”

“Clean Up Your Act”
“Zouk Your Body”
“World Racial War”

1988年。アフリカ・バムバータのアルバムの中で、ビル・ラズウェルのプロデュースした3曲に、ジョージ・クリントン(George Clinton)と共に参加。
この3曲はメドレー的に繋がり、主役はクリントン親分とブーツィーのボーカル。

ブーツィーのベースもうねる “Clean Up Your Act” を筆頭に、スライ&ロビー(Sly & Robbie)にイエローマンまでも参加したレゲエの “Zouk Your Body” 、これと “World Racial War” の2曲ではバーニー(Bernie Worrell)の鍵盤も聴ける、という3曲で、占めて19分の展開。
この時期のビル・ラズウェル/マテリアルのアルバム “Third Power”(1991年)につながるようなサウンドが聴けます。ブーツィーのギターが気持ち良く。


2017年2月18日土曜日

Buckethead “Monsters & Robots”

“Jump Man”
“Sow Thistle”
“Jowls”
“The Shape Versus Buckethead”

1999年。ブーツィーは4曲にボーカルで参加。“Jump Man” 以外の3曲には作者としてもクレジットされています。バケットヘッドの94年 “Giant Robot” とつながる音を聴かせるアルバムですが、完成度や聴かせどころがぐっとアップした印象で。

メインとなるメンバーはバケットヘッドとドラムのブレイン(Bryan “Brain” Mantia)、そして今回のキモとなるベースのレス・クレイプール(Les Claypool)。
マニア向けは間違いないでしょうが、カッコ良いダンサブルなロックが聴けます。


2017年2月13日月曜日

菊地雅章 “Dreammachine”

1992年。このビル・ラズウェル(Bill Laswell)のプロデュースによるアルバムを聴く限り、ちょっとハービー・ハンコック(Herbie Hancock)の “Perfect Machine” にそっくり、似ているなとまず思いますが、ことブーツィーを聴くということであればこちら。バーニーもいるし。
“Black Star Dub” はまさにラズウェルのダブ曲。そんな中で菊地雅章のソロ曲 “Straylight” が美しい。


Herbie Hancock “Perfect Machine”

1988年。ビル・ラズウェル(Bill Laswell)のプロデュースで、「処女航海」の再演も。
全6曲中、ビートのきいた5曲のクレジットに、連名でブーツィーの名前が記載されており、"Vibe Alive" ではマイコ・ウェイヴ(Mico Waves)の名前も含まれている。
ブーツィー目当てとなると、その “Vibe Alive” と “Beat Wise” の2曲でしょうか。どちらもボーカルにシュガーフット(Leroy “Sugarfoot” Bonner)が参加。

“Maiden Voyage/P.Bap” は「処女航海」のエレクトロ版。後半の “P.Bap” なんていう曲名からして、ブーツィーにはもう少し前に出てきて欲しいところ。ここでベースがひと暴れする山場があれば、このアルバムの目玉になったかも。
ラストを飾る “Chemical Residue” は主役のハンコックのソロ曲ですが、これが美しい。




2017年2月12日日曜日

Manu Dibango “Afrijazzy”

“Makossa ’87”

1986年。元は1972年のヒット曲 “Soul Makossa” を、ビル・ラズウェル(Bill Laswell)のプロデュースにより再演。
16分を超える長さになったこのファンクなバージョンは、マヌ・ディバンゴがブロウするテーマをスライ&ロビー(Sly & Robbie)ががっちり支えて、ブーツィーのスペース・ベース、ギターが切りこんできたり、ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)のピアノ、バーニー(Bernie Worrell)のシンセが彩りを添えたりして、カッコ良くドライブしていきます。

一聴派手めな音ですが、きめ細かく音を重ねて16分を展開。あくまでダンスフロア向けに、クールに決めてきます。

このヒット曲、マヌ・ディバンゴのアルバム “Gone Clear”(1980年)でも、先に再演されていました。そこでのタイトルは “Reggae Makossa”。スライ&ロビーが同じくバックを務めるアルバム自体が、レゲエな一枚でしたが。
ファンク版とレゲエ版のどちらにしても、気持ち良く魅力的であります。



2017年2月11日土曜日

Doug Wimbish “Trippy Notes For Bass”

1999年。ダブとファンクの関係といえば、それを誰よりも体現しているのがこの男。ダグ・ウィンビッシュ。

スキップ・マクドナルド(Skip McDonald)のギター、キース・ルブラン(Keith LeBlanc)のドラムと組んだリズム・セクション。シュガーヒル・ギャングバンドにエイドリアン・シャーウッド(Adrian Sherwood)のON-Uサウンド、タックヘッド、そしてリヴィングカラー。
これらキーワードだけで問答無用のベース野郎、初のソロ作がこちら。

アルバム・タイトルがすべてを語っています。ダブです。サウンドの要はエイドリアン・シャーウッド。暴力的なSE、効果音が不意をついてきますね。これが気持ちいいこと。
バーニー・ウォーレル(Bernie Worrell)の名前もありまして黒いピアノが聴けます。

2008年に、“Trippy Notes For Bass & Remixes bonus tracks” として再発。エイドリアン・シャーウッドによるリミックスなど4曲が追加されてお得。
ON-Uからリリースされたオリジナルのジャケット・デザインは、本人のポートレイトに楽譜の模様をあしらった、これはこれで内容を伝えるものでした。再発盤はというと音のイメージでしょうか。


2017年2月10日金曜日

Jah Wobble, Bill Laswell “Radioaxiom:A Dub Transmission”

2001年。ジャー・ウォブルとビル・ラズウェル連名のダブ・アルバム。連名ですが、ビルの括りに連なる作品。前年のビルの “Sacred System - Dub Chamber 3” (2000)と重なるメンバー多し、音の質感も同じ。
ROIR レーベルからの発売ではなく、Dub Chamber シリーズには含まれない形ですが、兄弟作というか、同じ線上の音です。
“Sacred System - Dub Chamber 3” との違いとしては、ドラムがスライ・ダンバー(Sly Dunber)であることがポイントでしょうか。やはりこちらもオープニングの導入部の展開がカッコ良く。

そして両アルバムに参加しているトランペットのニルス・ペッター・モルヴェル(Nils Petter Molvær)ですが、彼はジャズ畑を中心に独自の活動を続けて、数年後にスライ&ロビーとがっちり組んだアルバム「ノルダブ」Sly & Robbie Meet Nils Petter Molvær Feat Eivind Aarset And Vladislav Delay “Nordub” を発表することに。

なおこのCD、日本盤に付けられている被せオビと同じ造りで、上から、プラケースをすっかり被うように紙が被せられています。サイズが同じで、デザインもオモテ面もウラ面もジャケットとまったく同じ絵柄です。内面には広告がありますが、外側には宣伝の売り文句が記載されているとか、なにか目立つ要素もなし。あまり意味があるようには思えませんが。




2017年2月9日木曜日

Bill Laswell “Dub Chamber 3”

2000年。ビル・ラズウェルは、バーニーやブーツィーらのPファンク勢を招いて繰り返した90年代前半の録音が、あまり良い評価をされないままです。
Pファンクをどうするつもり?と文句を言っていたのは主に黒人音楽ファンだったと思いますが、そもそも、ビル・ラズウェルがそちらに向けた黒人音楽を制作していないことは明白でした。

そういった後の90年代後半も、さらに独自に間口を広げていったビル・ラズウェル。誰かとのコラボ作などさまざまな名義を使い捨てては止まらない彼ですが、ニューヨークのレーベル ROIR には、自分自身の名前で5枚のダブ・アルバムを残しました。

“Sacred System - Chapter 1 - Book Of Entrance” (1996)
“Sacred System - Chapter 2” (1997)
“Dub Chamber 3” (2000)
“Book Of Exit : Dub Chamber 4” (2002)
“Version 2 Version : A Dub Transmission” (2004)

ビルのダブ・アルバムというのはオープニングがなんともカッコ良いですね。
ダブといってもレゲエに止まらず、ファンク、ジャズ、マイルス、民族音楽調のパーカッション類など、さまざまな音楽が、溶けこむというよりレイヤー分けされて。
特定の演奏というのではない、全体像とか、アンビエンス、BGM?。
 Pファンクとの試みも、きっとダブとファンクの関係を探っていた過程の内のひとつだったのでしょう。

5枚の内、この2000年のアルバムには、トランペットでニルス・ペッター・モルヴェル(Nils Petter Molvaer)、ベースでジャー・ウォブル(Jah Wobble)、ピアノでクレイグ・タボーン(Craig Taborn)が参加。それぞれが自身のアルバムを発表している強者たちです。

地鳴りのような重低音や、SF映画で使われるような効果音の合間に絶妙に入ってくる、親しみやすいエレピの音にくすぐられたりします。