2000年。ビル・ラズウェルは、バーニーやブーツィーらのPファンク勢を招いて繰り返した90年代前半の録音が、あまり良い評価をされないままです。
Pファンクをどうするつもり?と文句を言っていたのは主に黒人音楽ファンだったと思いますが、そもそも、ビル・ラズウェルがそちらに向けた黒人音楽を制作していないことは明白でした。
そういった後の90年代後半も、さらに独自に間口を広げていったビル・ラズウェル。誰かとのコラボ作などさまざまな名義を使い捨てては止まらない彼ですが、ニューヨークのレーベル ROIR には、自分自身の名前で5枚のダブ・アルバムを残しました。
“Sacred System - Chapter 1 - Book Of Entrance” (1996)
“Sacred System - Chapter 2” (1997)
“Dub Chamber 3” (2000)
“Book Of Exit : Dub Chamber 4” (2002)
“Version 2 Version : A Dub Transmission” (2004)
ビルのダブ・アルバムというのはオープニングがなんともカッコ良いですね。
ダブといってもレゲエに止まらず、ファンク、ジャズ、マイルス、民族音楽調のパーカッション類など、さまざまな音楽が、溶けこむというよりレイヤー分けされて。
特定の演奏というのではない、全体像とか、アンビエンス、BGM?。
Pファンクとの試みも、きっとダブとファンクの関係を探っていた過程の内のひとつだったのでしょう。
5枚の内、この2000年のアルバムには、トランペットでニルス・ペッター・モルヴェル(Nils Petter Molvaer)、ベースでジャー・ウォブル(Jah Wobble)、ピアノでクレイグ・タボーン(Craig Taborn)が参加。それぞれが自身のアルバムを発表している強者たちです。
地鳴りのような重低音や、SF映画で使われるような効果音の合間に絶妙に入ってくる、親しみやすいエレピの音にくすぐられたりします。