2020年10月4日日曜日

Brian Culbertson “XX”

“Dance Like This”

2020年で20作め、“XX” と書いてトゥエンティと読む、というブライアン・カルバートソンのアルバム。
ブーツィーをゲストに招くのは、アルバム “Bringing Back The Funk”(2008年)以来の二度め。この間には、“Funk!”(2017年)というそのままのタイトルを持ったアルバムもありますから、相当にお好きであります。

今回はまたストレートな明朗明快パーティ・チューン。ブーツィーはボーカルを乗っけたのみ。
前回の共演では、ブーツィーのスタジオにて録音、バーニー・ウォーレル(Bernie Worrell)にキャットフィッシュ・コリンズ(Phelps “Catfish” Collins)、それにフレッド・ウェズリー(Fred Wesley)、メイシオ・パーカー(Fred Wesley)らも参加という濃厚さでしたが。

アルバム制作の顔ぶれには、相当に腕達者のプレイヤー達が集められているようです。とはいえファンクの奥の細道、藪の中みたいな深さは、カケラも見せません。ブーツィーとの初共演から10年ちょっと経ったからといっても、この2020年だからといっても、徹底して匂わせもせず。



2020年9月20日日曜日

Bootsy’s Play-Cation (feat. The Rubber Band)

Bootsy Collins “Bootsy’s Play-Cation (feat. The Rubber Band)”
Bootsy Collins, Buckethead “Monster Mash”


2019年。どちらのシングル曲も、amazon.com では mp3 の配信だけでなくCDが売られているので、試しに買ってみた。残念ながら案の定、CD-R盤でした。ジャケット類もやっぱりオフセット印刷でなく、オンデマンド印刷というかプリンター出力。日本であれば不良品レベルだろうインク切れによる色ムラ、かすれも有り。

“Bootsy’s Play-Cation (feat. The Rubber Band)” は、曲自体はアルバム “World Wide Funk” に収録の “Snow Bunny” をベースに、ギター、ドラム、ピアノといった上物のソロ演奏を差し替えたもの。アルバム中でも聴かせる好曲を活かしての再利用です。

ブーツィーとの連名で、すっかり相棒となっているバケットヘッドですが、来たるブーツィーの新作ではどのような具合でしょうか。いつもの型どおりのファンクよりも、この “Monster Mash” のように軽めに暴れてくれた方が楽しかったりもしますし。



2020年9月2日水曜日

Five Alarm Funk “Big Smoke”

“We Play The Funk”

2020年。ブーツィーが全編にボーカルを乗せたこの曲は、2018年に配信開始されていたもの。アルバムの中でも強力な、Pファンク好きをストレートに披露した曲です。もしもここにクリントン親分まで呼んでいたら、さらに爆発していたかも、なんて想像させてくれます。

アルバムは特段、P印だけにこだわることもなく、他にも多彩なダンス・ナンバーが並んでいます。70年代風だったりと、生のライブ感にあふれたサウンドを押し出してきますが、案外あっさり風味。カナダのバンドだそうですが、なんだか日本にもいそうなバンドです。



2020年8月7日金曜日

Kokane “Finger Roll: Music For The Soul”

40 Below (feat. Bootsy Collins & Gipp Goodie)

2019年。名前はコケインと読むのでしょうか。踊る指というタイトルに鍵盤のデザインなど、随分と音楽寄りなデザイン。一見、まるでピアノ弾きのようでありますが。

この方のこれまでの一連のCDジャケットなどを見ると、まさにギャングスタ、まるでヒップホップ・ビジネスといった線。強面の、いかにも旧態依然のものが多く。
今作のデザインは、どこに向けたものでしょうか。

アルバムを聴くと、コケインという方が、ジョージ・クリントン親分を大変にお好きということはよく分かります。
ブーツィーがボーカルで参加した曲は、先に2016年の2枚組アルバム “King Of GFunk” にも収録されていました。そちらのアルバムは、ゲストにブーツィーの他にクリントン親分やスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)といった名前までも並んでいて、豪華、力作のようです。

こちらにも改めて収録された理由は分かりませんが、お求めやすく、そして収録時間も短い、CD一枚ものがあって幸いであります。


2020年7月3日金曜日

Well Red “Get Lucky”

George Clinton’s Bag ‘O’ Funk(1997)
Classic P-Funk Mastercuts Volume 1(1993)


Pファンクをネタにした両コンピ盤の、どちらにも収録されていたダブリ3曲の内の一曲が、ウェルレッドの “Get Lucky”(1987)。派手な曲調ではありませんが、これがとてもお気に入り。

ウェルレッド(Well Red)は英国の二人組。1987年の彼らのデビュー・アルバム “Motion” では、2曲のリミックス(のみ)をクリントン親分がプロデュース。
“Get Lucky” は、元の英国版アルバムでは5分ちょっとですが、米国向けには7分50秒ほどに尺を伸ばされて、ビートも強調されたサウンドに。(親分がどこまで口をはさんだものか)米国版アルバムには、曲順を変えてオープニング曲として収録。

一方、老舗シリーズ Mastercuts からのコンピ盤に収録されているのは、同じく長尺版ではあるものの、また微妙に異なる音で。

Well Red “Get Lucky (Original 12" Master Mix)”

元の英国版アルバムに近いながら、じわりじわりと焚きつけてくるような、くすぐられ感はこれが一番。米国産ファンクにはない魅力かも。

Well Red “Respect Due”


そしてウェルレッドのセカンド・アルバムですが。
1988年のアルバム “Respect Due” では、クリントン親分が(リミックスでなく)4曲をプロデュース。英国のPファンク傍系バンドとして、ぐっとそれらしいサウンドに。アンプ・フィドラー(Amp Fiddler)が参加した “Hard” を始め、こちらにも、もったいない曲が埋もれています。

ウェルレッドの片割れは、デニス・ボーヴェルのバンド(Dennis Bovell And The Dub Band)で叩いていたり、という相当なクセ者ドラマーですし。御大J.B のように、いつか Pファンク帝国も多種多様なテーマを持ったアンソロジーが組まれることでしょう。その際は、きっとウェルレッドも候補に挙げられることかと。


2020年7月1日水曜日

George Clinton’s Bag ‘O’ Funk

1997年。ジョージ・クリントン親分がプロデュース等で関わった楽曲を集めたコンピ盤。若き日のレッチリとか、主に80年代の時期を中心としたもの。
これに、アームス・ホールの1984年のアルバム “Gohead” から一曲が収録。

Eramus Hall “Checkin You, Checkin Yourself Out”

アルバム “Gohead” にはプロデュースにブーツィーも加わった2曲があり、その内の一曲がこれ。このアルバム、CD化が(今だに)待たれる一枚ですが、とりあえずこちらに収録ということで。いかにもクリントン親分がらみの80年代サウンドに、ブーツィーのベースが気持ち良く走っていきます。

この “Bag ‘O’ Funk” に先行して、同じくPファンクをネタにしたコンピ盤が、老舗シリーズである Mastercuts からもリリースされていました。

Classic P-Funk Mastercuts Volume 1


1993年。こちらは70年代の曲だったり、クリントン親分が関わっていない曲も含まれていたり、という幅広い選曲。ですが両コンピ盤は、収録曲が 3曲もダブっています。
ブーツィーにしても親分にしても、普通に選曲された各自のベスト盤より、こういったコンピ盤の方が楽しく聴けるものです。Mastercuts からのVol.2 は結局無いようで実に残念。

御大J.B が、まさにさまざまなテーマ、切り口でいくつものアンソロジーが組まれていますが。Pファンク帝国の広大な裾野もまた、それに値する沃野であります。

2020年6月10日水曜日

Vulfpeck ‎“Mr. Finish Line”

“Captain Hook (feat. Baby Theo, Bootsy Collins & Mushy Kay)”

2017年。ヴルフペックというこのバンド、結成されたのはデトロイトとのこと。ブーツィーが軽くボーカルを乗せた一曲ですが、軽すぎて、聴くというほどのこともなく。
もったいない使いかた、としか。日本盤にはオマケでインスト版も入っていました。


2020年4月30日木曜日

Hi-Tek “Hi-Teknology²: The Chip”

“We Get Down” Featuring – Bootsy Collins, Mos Def, Raphael Saadiq

2006年。オハイオはシンシナティの出身というビートメイカー、ハイテックの2枚目のリーダー・アルバム。2001年のファースト・アルバムの続編ということで、タイトルに2と付いています。
これのDVDを付けた2枚組仕様の限定版の方に、ブーツィーの名前が。通常版は15曲のところ、Exclusive Track とされたオマケの3曲の中の一曲。

ですがこれ、ブーツィーは聴こえませんね。スタジオには遊びにでも来ていたのでしょうか。アルバムとしては、じっくり聴かせてくれる一枚です。ヒップホップ好きのその筋からは信頼されているハイテック氏ですから、ここできっちり参加しておいてくれれば。


2020年3月28日土曜日

Party On Plastic (What’s Bootsy Doin’?)

Party On Plastic (What’s Bootsy Doin’?) - With Rap  3:48
Party On Plastic (What’s Bootsy Doin’?) - Without Rap  3:35
Party On Plastic (P.O.P.)  6:59
A Creative Nuisance (Nobody Understands) Party Mix  6:30
P.O.P. Da House Mix  4:51
P.O.P. Da Combat Dance Mix  6:21

1988年。前作から間の空くこと6年ぶり、ブーツィーは何してるの? “What’s Bootsy Doin’?” とタイトルされたアルバムの1曲めに飛びだすのが “Party On Plastic”。パーティしてるよ、というオープニング、最初のシングル曲としても選ばれた強力ナンバーです。

まさに勝負曲、7インチ、12インチなど各種あるシングル盤に散らばっていたこれのリミックス 6バージョンを、すべてCD一枚に集めた便利な盤がこちら。
Special Mixes とされたプロモ盤です。専用の厚紙ジャケット付き(さすがに裏面は印刷なしの無地)。この曲が大好きなファンにはこれはお宝となります。

アタマの2曲はアルバム版と同様(ラップの有り無しが違い)ですが、次の3曲め “Party On Plastic (P.O.P.)” と続くことで、計10分を越えるロング・バージョンに。
さらに4曲め “創造的な迷惑(誰も理解しない)” へとつながっていきますが、このタイトルも可笑しい。

もともと、派手な音づくりをされた一曲です。ラジオのエアプレイを意識した、とはブーツィー本人の弁。大メジャーであるCBSからのリリースですが、ここの関連会社が、先にマイケルの “BAD”(1987年)という大ヒットを飛ばしていますし。シングル曲 “Speed Demon” とか。
ブーツィーとしてもちょっと異色かもしれない、これをプラスチックというかもしれない、80年代末のこの音、今も愛聴しています。

2020年2月23日日曜日

Geri Allen “Open On All Sides In The Middle”

1987年。スティーブ・コールマンに少なからず関連したミュージシャン、プレイヤーの中でも、人気が高いというか、幅広くから支持を集めた筆頭といえば、ピアノ弾きのジェリ・アレンでしょうか。
スティーブ・コールマンとその一派の立ちあがりの時期、80年代後半の諸作に参加していた彼女の、三作めのソロ・アルバムがこれ。

聴けばすぐに彼女の才媛ぶりや明朗さが伝わってきます。オープニングの一曲めに、まず高揚させられて。スティーブ・コールマンをゲストに招いたファンクな曲だったり、アブストラクトな曲だったりと、多彩です。

Geri Allen “Twylight”(1989)
Geri Allen “Maroons”(1992)


ジェリ・アレンの持つ響き、ジャズ、あるいはファンクといったスタイルにとどまらない魅力や独創性は、次のアルバム “Twylight” でもまったく変わらずに。

アルバム “Maroons” では、ベースがドゥエイン・ドルフィン(Dwayne Dolphin)に。
フレッド・ウェズリー(Fred Wesley)のバックで、手堅く絶妙にファンクするベースを聴かせてくれる存在です。なんだかアフリカなパーカッションが展開したり、スティーブ・コールマン&ファイブ・エレメンツのアルバムでもやった “And They Partied” の再演があったりと、これも楽しめる一枚。

様々な方々と広く共演を果たしているジェリ・アレンですが、ドゥエイン・ドルフィンとは、彼の初リーダー作 “Portrait of Adrian”(1993)でも再び共演することに。それより先にフレッド・ウェズリーのアルバム “New Friends”(1990)に参加していたりも。
ジャズ畑での活躍が知られる彼女ですが、90年前後の諸アルバムなどは、ジャズ好きだけに聴かせるのはもったいない音が鳴っているような。


2020年1月26日日曜日

Opus Akoben “Art Of War”

1997年。強面三人衆の仏頂面、いかにもなジャケットの通り、ラップ・ボーカルのアルバム。プロデュースがスティーブ・コールマン(Steve Coleman)。

バックを固めるのはファイブ・エレメンツのメンバー。ジーン・レイク(Gene Lake)のドラムに、レジー・ワシントン(Reggie Washington)のベース。それにギターがデヴィッド・ギルモア(David Gilmore)、という強力な人力演奏であります。

これに先駆けて、ドラムとベースが同じ顔ぶれで、スティーブ・コールマン自身の名前をつけたアルバムもリリースされていました。

Steve Coleman And Metrics ‎“A Tale Of 3 Cities:The EP”(1994年)
Steve Coleman And Metrics ‎“The Way Of The Cipher”(1995年)


Metrics とは、直訳すれば、韻律学、作詞学とのこと。ファイブ・エレメンツとの違いは、ラップを前に立てているかどうかです。
“Sine Die” 以降の90年代前半も、独自にファンクしてきたスティーブ・コールマンですから。ドラムとベースを肝にしたソリッドなビート、JBズ的なホーンで裏方に徹したノリがこの上なく気持ち良く。

この頃、スティーブ・コールマンはザ・ルーツ(The Roots)のアルバム “Do You Want More?!!!??!”(1994年)、“Illadelph Halflife”(1996)に参加したり、ジーン・レイクもディアンジェロ(D'Angelo)の“Brown Sugar”(1995年)で一曲叩いていたり。
そして Metrics の延長に、Opus Akoben のこのアルバムが来ます。

Metrics でも大活躍したラッパー達が主役であります。ドラムとベースが肝なのは変わらず。タイトル “Art Of War” を訳すなら、“兵法” でしょうか。
これらのラップを前に立てた路線は、リズムはシンプルに、ホーン隊各自のソロ演奏も引っ込むとなれば、(ファイブ・エレメンツに比べて)不満を持つファンもいるかもしれませんが。
ファンクとしては、どれも気持ち良いこと極まりない演奏が聴けます。


2020年1月5日日曜日

Kevin Bruce Harris & Militia “And They Walked Amongst The People”

スティーブ・コールマン&ファイブ・エレメンツのアルバム “Sine Die”(1988)では、ケヴィン・ブルース・ハリスのゴリっとしたベース・プレイが、サウンドを魅力づけていました。
彼のファンクなベースは、グループがファイブ・エレメンツと名づけられてから最初の三枚のアルバムで聴けます。
そして1989年にリリースしたのが、初のソロ・アルバムであるこれ。

ケヴィンと民兵団(Militia)なんて物騒な名前ですし、ベースの音はもちろん大きめ。ベースのみという曲があったり、デヴィッド・ギルモア(David Gilmore)がロックなギターを鳴らしたり。とサービスはしてくれますが。ではありますが、これは普通にフュージョンでありましょうか。

なるほど策士スティーブ・コールマンが関わるか否か、活かすも殺すも深謀次第、でしょうか。残念なことに、“Sine Die” 以降のファイブ・エレメンツのアルバムには参加していないケヴィン・ブルース・ハリスであります。

それ以降の彼のベースを楽しむには、カサンドラ・ウィルソンの1990年代前半、彼女がブルーノートに移る前までの諸作が最適となるでしょうか。

Cassandra Wilson “Jumpworld”


1990年。このアルバムにはスティーブ・コールマンを始め、一派のメンバーも多数参加、改めてファンクしています。
それから1991年のライブ盤 “Live” も。“Sine Die” から等、ファイブ・エレメンツの曲をやっていたり。バンドの見せ場もしっかり用意されています。
とはいえ、ボーカルの伴奏であります。演奏だけをもっと集中して聴きたいと思っても、そうはいきません。

やっぱり、“Sine Die” 以降にも、ケヴィン・ブルース・ハリスが参加したファイブ・エレメンツのアルバムが(もう一枚か二枚ぐらい)あれば理想的でしたか。スティーブ・コールマン的には、単なる繰り返しかもしれないですが、ファンクな奴が。

Kevin Bruce Harris “Folk Songs - Folk Tales”


1994年。そしてそして登場した、二作めのソロ・アルバム。これが、さらに普通のフュージョン。穏やかめ、軽やかな曲ばかり。ファンクを期待すると不発。あのベースが鳴ってはいるのですが、もう一歩も二歩も、ファンク寄りでお願いしたいところ。