2024年2月17日土曜日

Ain’t Nuthin’ But A She Thing

Vanessa Williams
“Open Your Eyes You Can Fly”

1995年。ヴァネッサ・ウィリアムス Vanessa Williams は1983年、アフリカ系アメリカ人初のミス・アメリカに選ばれた(ウィキペディアより)という快挙を成し遂げた後、ポップス畑で活躍する歌手(ディズニー映画の主題歌まで)、出演作多数の女優(日本のCMにまで登場)と活躍、本国では超がつくほどの有名人でしょうか。

そのような方が歌うバックで、ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello がベースをプレイ。
曲そのものは明快です。それまで低いところを悶々とウロウロしているような風情だったのが、サビに入った途端に、視界がぱっと開けて、大空に向けて舞い上がるようなメロディに。明るく歌われているのがタイトルのままの歌詞 “Open Your Eyes You Can Fly” 、ポップです。わかりやすい展開、さわやかなボーカルです。

アルバムは、(ジャケットを見るとまるでカントリー系みたいな絵柄ですが)幅広くから女性歌手ばかりを集めたコンピ盤。女性の権利のためのチャリティー作品だそうで、日本版には日本人女性の曲も収録されているようです。各曲がこのための新曲だったのかは不明ですが。
曲の冒頭にはミシェルじゃないかと思われる声で、チャンスをつかむことを怖れないでと聴こえます。アルバムの趣旨を知った上での参加なのでしょうか。彼女のファースト・アルバムが発表されたのが前年(1994年)のことでした。

(ミシェルのファンとはいいませんが)ファンク好きであれば、肝心かなめの、このポップで前向きなサビがなくても、かまわないのですけれど。悶々とウロウロしたまま、ミシェルのベースがブチブチ、べベンと鳴っていてくれれば、その方が気持ち良いわけです。
このサビ、この手の似たような曲は、応援ソングといいますか、日本でも通じるというのが不思議。



2024年2月11日日曜日

Guru - Jazzmatazz Volume II (The New Reality)

For You

1995年。ジャズ マ タズは、ギャング・スター Gang Starr のグールー Guru がソロ活動で当てたシリーズ、その第二作め。
ジャズ屋を始めとしてレゲエ方面からも等、様々なゲストが広く呼ばれています。
グールーの相棒であるDJプレミア DJ Premier も参加していて、シングル盤にもなったその曲にはチャカ・カーン Chaka Khan とブランフォード・マルサリス Branford Marsalis も参加、という具合。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello がベースとボーカルで参加したこの曲には、ケニー・ギャレット Kenny Garrett のサックスが。
ミシェルの場合、ヒップホップとジャズという似たようなコンセプトを持ったコンピ盤 “Stolen Moments: Red Hot + Cool”(1994年)に、すでに参加済みでした。あちらでは自分が取り仕切った曲が自分の名義で収録されていましたが、こちらはあくまでもゲスト・プレイヤー。

全曲のプロデュース、アレンジ、ミックスを担当しているのはグールー。ですが、正直、興味は主役よりもインスト・パートの方に。
ミシェルのベースは、ひたすら重心低く突き進んで、まるで The JB’s のブーツィーを思わせるようなプレイを聴かせます。サックスも合わせて辛抱強くフレーズを重ねて。
残念ながら、ここから自由に演奏するか、いよいよ展開するかというところで、エンディングに。

ジャズに突入していく手前で止まるわけですが、いっそ主役のラップよりも、ミシェルに歌わせるとか好き勝手にブツブツつぶやいてもらうとか、その方が(今となってはなおさら)もっと面白かろうにとも。
それこそミシェルがらみでお気に入りの曲(とかオリジナル・アルバムには未収録の曲)を集めたベスト盤を自作するなら、まず第一集は主に彼女の90年代を代表するような仕事から選んだ曲目になるでしょうが、これはそこに食いこむほどではないか。

アルバム・タイトル Jazzmatazz も気になるところ、razz ma tazz というスラングがあって、そのまま jazz を引っ掛けたよう。元々、razzle-dazzle とか、ジャズ畑ではバカ騒ぎすることをそのように呼びならわしていたらしく。razz でからかうとか、逆にうるさがられるとか。他にも、pizzazz とか、Danceable Jazz を略して duzz とか。そうなると、jazz という名称の語源も、、、そもそも口語、、、

それと、ブルーノートを意識したジャケットだそうですが、米国と欧州でウラオモテの写真を入れ替えて印象を変えています。諸肌脱いだラッパー、それに昔日のニューヨークはハーレムのブラックマン、というイメージ2種ですが、まあどっちにしても。



2024年2月3日土曜日

How Stella Got Her Groove Back Soundtrack: Music From The Motion Picture

Me’Shell NdegéOcello
“Let Me Have You”

1998年。映画は日本未公開ながら、ビデオスルー(DVDスルー)ということで邦題は「ステラが恋に落ちて」。サントラ盤の方は日本版ありで、ジャム&ルイス Jimmy Jam & Terry Lewis による全面プロデュース、英米のヒットチャートに登場しそうな方々(のたぶん新曲ばかり)が並ぶコンピ盤です。

映画の舞台がジャマイカだからレゲエ寄りの人選が多いのも少し意外でしょうか。R&B寄りのレゲエという点では、マキシ・プリーストなどはヒットしそうな好曲ですが。
そんなにぎやかな顔ぶれの中に、ジャム&ルイスとミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello の組み合わせ。地味です。

結論からいえば、ミシェルのオリジナル・アルバムには未収録の曲ですが、そちらに収まっていても遜色ないスローナンバーです。
ジャム&ルイスは出しゃばらずにアシストしたという感じ。ヒットとは無縁の仕事ではありますが。
彼らが80年代に手がけたS.O.S.バンドの名バラード群なんかもありますし、ジャム&ルイスがプロデュースしたヒット狙いのミシェル、という曲ももっと他に聴いてみたいような。

この曲では副プロデュース、作者としてミシェルの名前がクレジットされていますが、それ以外の記載はなし。シンセ一台があれば事足りそうなシンプルなバックですから、ミシェル一人でコンポーズしたのかもしれません。流麗なストリングスも入ってくるのではありますが。
あなたを待っている、ここから連れ出して、という待ち人来らずな歌詞ですが、この曲タイトル “Let Me Have You” を直訳すると、わたしを離さないで、でしょうか。
ミシェルとしては、かってプリンスとも縁のあったジャム&ルイスのことをどう思ったのでしょうか。

もしもミシェルがらみでお気に入りの曲(とかオリジナル・アルバムには未収録の曲)を集めたベスト盤を自作するなら、まず第一集としては、主に彼女の90年代の仕事から選んだものになるかと。(と勝手に想定すると)この曲は、そのCDのラストに配置、第一集のエンディングを締めくくる曲として良いかも。
ミシェル氏、守備範囲は広がる一方で、節操なし。頼もしくも楽しい限り。