2025年5月24日土曜日

DJ Logic And Jason Miles “Global Noize”

A Jam 4 Joe

2008年。鍵盤のジェイソン・マイルス Jason Miles と、米国のDJ、ターンテーブリストによる連名のアルバム。
このDJ ロジックはジェイソン・マイルスのアルバムには先に幾度か参加していて、同じように、今作にはジェイソンのアルバム “Miles to Miles”(2005年)にゲスト参加した顔ぶれが引き続いて呼ばれたりしています。
ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello とドラムのジーン・レイク Gene Lake や、バーニー・ウォーレル Bernie Worrell 等、といった面々。

ミシェルが参加したのはアルバムのオープニングを飾る曲。
ミシェルのベースに、ヴァーノン・リード Vernon Reid によるギター、という組み合わせで。サックスでボブ・バーグ Bob Berg も、彼は1984年にマイルス・デイヴィス・バンドに参加して名を上げた、というジェイソン・マイルスと同じようなキャリアのお方。
聴きものはなんといっても、ミシェルのぐいぐい走るファンクなベース、アッパーなカッコ良さ。ヴァーノンもジェイソンも引き立て役に廻って、珍しくミシェルが主役でしょうか。

バーニー・ウォーレルの参加は2曲(2曲め “Spice Island” と9曲め “Pool Of Honey”)。曲も良いし、いつもの通りのバーニーの指さばき、鍵盤使いでこれも充分に楽しめます。 

このアルバム、世界中の音というタイトル通りにインドはボンベイ出身という女性ボーカルもいたりとエキゾチックな面もありますが、基本はダンサブルなインスト集。ビル・ラズウェル Bill Laswell をぐっとくだけさせたような具合でしょうか。あれほどインテリっぽく気取ってはいませんが。
クラブ向けのちょっとマニアなサウンドを聴かせそうなジャケットも、これがよく見るとチープ、なかなか雑な写真の切り貼りで。
その後、この Global Noize というグループ名で活動、スライのカバー・アルバム等を出しておりますが、やはりジェイソンという方は、スムースジャズの人のようであります。

ジェイソン・マイルスとミシェルのつきあいは古いようで、元々、米国のTV映画のサントラ盤だという “People: A Musical Celebration Of Diversity”(1995年)に収録されている、
Dave Koz and Jason Miles “Cara’s Theme”
という一曲があって。劇中曲でしょうか、これにミシェルがベースで参加している模様。この曲は翌年のジェイソン・マイルスのアルバム “Mr. X”(1996年)にも再収録。



2025年5月6日火曜日

Jason Miles “Miles to Miles”

Guerilla Jazz

2005年。鍵盤のジェイソン・マイルス Jason Miles という方、実際にマイルス・デイビス Miles Davis やマーカス・ミラー Marcus Miller とも共演しているそうですが、そのマイルスをネタにしたアルバム。
正式なアルバム・タイトルは “Miles to Miles: In the Spirit of Miles Davis” と紹介されている場合もあり。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello が参加したのはアルバム中でも地味な曲。
ミシェルはベースのみ。ドラムのジーン・レイク Gene Lake と共に、徹底して単調に、けして前には出てこないプレイに始終しています。
この二人なのだから、ちょっともったいない使い方かもしれませんが、それよりも、ミックスとかで、もっとズブズブと地を這うような、泥臭いファンクにも仕上げられるだろうなと思ったり。

このアルバムは、ミシェルも参加したロイ・ハーグローヴの Roy Hargrove Presents The RH Factor “Hard Groove” やジャック・シュワルツバルト Jacques Schwarz-Bart の “The Brother Jacques Project - Inspiration”(どちらも2003年)に近い音ではありますが、もっとスムースジャズ的といったら良いのでしょうか。よりBGMな。

他にも、“Voices On The Corner” という曲もあって、バーニー・ウォーレル Bernie Worrell とジェイソンの鍵盤同士二人だけでプレイしています。On The Corner ということでマイルスのあれをバーニーが!?と思いがちではありますが、まあ軽い冗談みたいなもので。肩すかしといいますか、これにしても藪の中に分け入っていくようなことはせず。

アルバム最大のおすすめ曲といえば、“Flamenco Sketches” かもしれません。
マイルスからインスパイアされた(と思われる)曲が並ぶ中で、唯一のマイルスのカバー曲。あのメロディを、愛されるスタンダード、あるいは人気の高いポップ・ソングとして、しっかりまとめたような。
ドラムはジーン・レイク、ピアノは松居慶子 Matsui Keiko が。とても気持ち良く。



2025年5月2日金曜日

The Brother Jacques Project “Inspiration”

Home

2003年。Brother Jacques とは、ジャック・シュワルツバルト Jacques Schwarz-Bart の別名(dubbed)とのこと(ウィキペディアより)。 
サックス吹きである彼は、カリブ海は西インド諸島のなか、フランスの海外県であるグアドループ Guadeloupe の生まれだそう。ジャック・シュヴァルツ - バルト、カタカナには難しい名前であります。

彼は、ディアンジェロ D’Angelo の2000年ライブ・ツアー The Voodoo Tour に参加、あの The Soultronics の一員でありました。
そしてロイ・ハーグローヴがグループとして発表したアルバム Roy Hargrove Presents The RH Factor “Hard Groove”(2003年)にも全面的に参加。プレイヤーとしてはもちろん、本人の作による一曲、“Forget Regret” も収録されて。ここでボーカルを取った Stephanie McKay は、彼の奥さまなのだとか(ウィキペディアより)。

そんな流れの延長にこのアルバムも。ジャック・シュワルツバルトに加えて実力派のメンツ(ドラムは Terreon Gully 、ベースは Jonathan Maron 、鍵盤の Jason Lindner )が、じわじわと聴かせます。
ロイ・ハーグローヴが色あざやかとすると、こちらはモノトーンな印象でしょうか。静かめながら、ファンクしてます。

“Forget Regret” も、こちらの方のメンバーでの演奏版で収録。ロイ・ハーグローヴ版とどちらを先に録音したのかは不明ですが、ボーカルは同じく奥さまが。この方、アルバムの数曲を歌っておりますが、他にも独自に活動している模様。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello がベースで参加したのは、アルバムのラストを飾る曲。ジャックと共に作曲(Composed)、副プロデュースとミシェルの名前がありますが、かなり地味であります。
ドラムがミシェルとはもちろん、スティーブ・コールマン Steve Coleman 等で叩いている実力派のジーン・レイク Gene Lake ですが。たまたまスタジオ見学に来たら即興でできたのかな、とそんな感じもする、良くいえば、素材の味深いオマケ曲でありましょうか。

このアルバムはフランスではストレートに、Jacques Schwarz-Bart “Rise Above” として発売(2010年)。2曲がカットされて、中盤の曲順も異なっていたりして、おそらくファンクな印象を強めたダイエット仕様ではないかと思われます。ジャケットもシャープなデザインに。

現在、ジャック・シュワルツバルトはフランスを拠点に、もっとカリブ海寄りの音を意識したジャズを聴かせたりしているようです。聴いてみたいアルバムもあり。
なお、鍵盤を担当したジェイソン・リンドナー Jason Lindner ですが、2009年の彼のアルバムはミシェルがプロデュースをすることに。ドラムはマーク・ジュリアナ Mark Guiliana が叩いておりますが、その後、ジェイソンとマークの二人は共に、D. ボウイの遺作となるアルバム製作のセッションに参加します。