2023年12月23日土曜日

The Best Man: Music From The Motion Picture

Me’Shell NdegéOcello
“Untitled”

1999年。映画「ベストマン」のサントラ盤。スパイク・リー製作、従兄弟のマルコム・D・リーが監督・脚本ながら日本未公開、日本語版はビデオのみ(DVDなし)、という作品。サントラに関しては日本版CDありで、高名な顔ぶれが並ぶ中、ここにミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello のアルバム未収録曲も。これがファンク。

ミシェルのファースト・アルバム “Plantation Lullabies”(1994年)にも同じタイトルの曲がありますが、それとは別物。
こちらのプロデュースは(ギター、キーボード、プログラムも)Allen Dariest Cato 、歌とベースを始めその他の演奏がミシェル。要はふたりで制作したものでありましょうか。
“You Make Me Feel So Good” と幾度も繰り返される、この歌からは非常にセクシャルな印象も受けます。

曲の前半は、その色っぽいところも含めて、もしかするとプリンス?というシンセの音色やフレーズなどもあって。これは殿下へのリスペクトかと思わせつつも、それでは終わらず。
曲の後半は、余計なものを削ぎ落としたファンクに一転。ソリッドに刻まれるリズム・ギターが腰にきて、ミシェルも気持ち良さげな風、ベースを弾くのも止めてしまいます。
この部分は90年代末らしい、ディアンジェロ D’angelo の登場以降の音に。ミックスはそのディアンジェロのファースト・アルバムにも関わったボブ・パワー Bob Power 。

もしもプリンスからディアンジェロ、80’sから90’sを経て00’sへ、というラインを意図したものであれば、ビートは止まらず、継承されていく的なことでしょうか。(リスペクトどころか)過去のひと扱いをした、と捉えられてしまいそう。
アルバム未収録ですが、クレイグ・ストリート Craig Street と組んでダンサブルとは少し離れた “Bitter”(1999年)にはやはり似合わないですか。としてもミシェルの代表作のひとつと呼べるのでは。



2023年12月9日土曜日

Down In The Delta (Music From And Inspired By The Miramax Motion Picture)

Me’Shell NdegéOcello With Keb’ Mo’
“My Soul Don’t Dream”

1998年。映画「ダウン・イン・ザ・デルタ」のサントラ盤。ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello とケブ・モ Keb’ Mo’ の連名による共演曲を収録。

これが頭にドが付きそうな典型的なブルース、ミシェルがこの手を(ライブはともかく)録音して残したのはこの曲ぐらいでしょうか。アルバムには未収録。
典型的(つまりありきたりな?)、と申し上げたスタイルですが、ミシェルが歌うと新鮮に聴こえる、というとひいきの引き倒しでしょうか。ブルース向きとは言いがたい彼女の声ですが、ケブ・モの出番がもっと少なくても、いっそミシェルだけでも、ファンとしては構いませんけれど。

ミシェルは歌とベース、ケブ・モは歌とギター(ナショナル)。またアコースティック・ギターでAllen Dariest Cato 、ドラムは(ライ・クーダー Ry Cooder でお馴染みの)ジム・ケルトナー Jim Keltner 。プロデュースはクレイグ・ストリート Craig Street 。

神にも見放されたような失落感を歌うリリックはミシェルによるもの、曲は彼女と Allen Dariest Cato の作。
ミシェルにしろケブ・モにしろ、このヘビーな(つまり少々大げさな?)アレンジの音で歌うのはチャレンジだったのではないかという気も。それとミシェルの曲で “Soul” という言葉が出てくると引っかかります。

ミシェル自身がありきたりか、と思ったかどうかはともかく、この曲でも、聴きどころのひとつが曲の後半。どブルースから一転、スローなファンクに。涼しげな音がリフレインされますが、それまでのブルース・パートがあるからブルージィーに聴こえます。
もし前半がもう少しライトな曲調であったなら、この対比も弱かったのかも。



2023年12月3日日曜日

White Man’s Burden (Original Motion Picture Soundtrack)

Me’Shell NdegéOcello
“Time Has Come”

1995年。映画の邦題は「ジャンクション」。これビデオ化はされたようですが、日本版のDVDは無いもよう。このサントラ盤に、ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello によるあの古典名曲のカバーを収録。

オリジナルはチェンバース・ブラザーズ Chambers Brothers 、1967年のアルバムから。
アルバム版では11分におよぶ長尺の曲、(シングル版にはない)中盤からの、歪んだギター音が飛び交うサイケ仕様の展開が有名で。ロック・バンドによるカバーも多いようですけど、ブーツィーもこの曲やっていました。このリリックがまた。

I’ve been loved and put aside (Time)
I’ve been crushed by tumbling tide (Time) 
And my soul has been psychedelicized (Time)

ミシェル版では、後半部分をどうしたかというと。ロックな曲調から一転、ぐっとテンポを落としてスローなファンクに。それもマーヴィンの “Inner City Blues (Make Me Wanna Holler)” を思わせる展開です。
深読みすれば、1967年の曲から1971年の曲へと飛ぶこの間に、何があった?と連想できますか。映画のテーマにも関わる点かもしれません(未見ですけど)。

曲の後半になって、何気にすっとファンクに持ちこむというのは、他でもミシェルがよくやる奥の手。さりげなく今回も、腕の立つメンバーを揃えています。

ミシェルは歌とベース(カウベルも)、ドラムはジーン・レイク Oliver Gene Lake 、加えてオルガン(とコーラス)でバーナード・ライト Bernard Wright 、リードギターのデヴィッド・フュージンスキー David Fiuczynski 、Allen Dariest Cato はリズムギター(とコーラス)、プロデュースはデヴィッド・ギャムソン David Gamson 。



2023年12月1日金曜日

Batman & Robin (Music From And Inspired By The “Batman & Robin” Motion Picture)

Me’Shell NdegéOcello
“Poison Ivy”

1997年。映画「バットマン & ロビン Mr.フリーズの逆襲」のサントラ盤。ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello による、あの古典名曲のカバーを収録。

オリジナルはロサンゼルス出身のグループ、コースターズ The Coasters 。
Leiber & Stoller コンビ作による1959年の Doo-Wop ナンバー。R&Bチャート1位、Billboad Hot100チャート7位を記録だそう。1963年には当時新人のストーンズがこの曲のウブなカバーをシングル盤で披露、ビートルズもコースターズの他の2曲をカバーしていたり。
という歴史・古典ですが、今聴いてもカッコ良く。なにしろ Leiber & Stoller のコンビは、エルヴィスのハウンド・ドッグとかスタンド・バイ・ミーとか、あれもこれも不滅。

ポイズン・アイビー “Poison Ivy” は曲のタイトルであり、映画に登場するスーパーヴィランの名前でもあり。
ミシェルは歌とベース、副プロデュースも。プロデュースは(ドラム、プログラミングも)デヴィッド・ギャムソン David Gamson 。ギターでデヴィッド・フュージンスキー David Fiuczynski の名前もありますが、奥に引っこんでサポート役、あまり聴こえず。ミックスはゴウ・ホトダ Goh Hotoda 。

シンセポップといいますか、元曲と比べると拡がりのあるアレンジで、映画向けらしい感じ。ミシェルのベースはまったく目立ちませんが、ボーカルに徹してクールに歌い上げています。終盤のアレンジに、彼女らしさを感じるような。映画は未見。