2023年11月26日日曜日

Me’Shell NdegéOcello “Earth”

The Teaching (Non-Album Track)

2002年。全5曲入りのシングル盤。アルバム “Cookie: The Anthropological Mixtape”(2002年)からの曲を主にしたこちらにも、ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello のアルバム未収録曲 “The Teaching” が収録されています。

セカンド・アルバム “Peace Beyond Passion”(1996年)からに続いて、再び収録というのも珍しく。
素っ気なく “(Non-Album Track)” と表示されているだけなので、単純に同じ曲かと見過ごされそうですが、サントラ盤の “Money Talks - The Album” とシングル盤 “Stay (Soul Power Mix) / The Teaching”(1997年)に収録された最初のバージョンとは、かなり違うミックスが施されています。

実際、聴き比べれば細部まで音が違っていて。(例えばハウス仕様のダンス・ミックスとかではなく)同じ曲調のままで、最終的な仕上げをやり直したという感じ。
イントロからして、ミシェルの分厚いベースがのたうつように響いて。ドラムの音もぐっと大きく、スローなファンク・ナンバーに変わったような印象です。

元々の最初のバージョンの、プロデュースとミックス、それにドラム・プログラムはデヴィッド・ギャムソン David Gamson によるもの。今回のクレジットではプロデュースとだけ残されていて、その辺りをミシェルの音に入れ換えてあるのかもしれません。
ミシェルの歌を継いで盛り上げていた Allen Dariest Cato によるギターも残されてはいますが、少し引っこめられて、代わりにまた新たなブレイクを追加していたり。

今回の新しいバージョンは、ミシェル自身の意向によるものなのでしょうか。どのような意図や経緯があっての再収録だったのでしょうか。
売れ線のファンクばかりを期待される中、クレイグ・ストリート Craig Street を招いてのアルバムを制作(1999年)というエピソードもありますし。そして、Pファンクやヒップホップを思わせるようなジャケットをした “Cookie: The Anthropological Mixtape” を造ったものの、このシングル盤 “Earth” が、スローな曲ばかりを集めたもので。クレイグとの仕事を経て、とんでもなく凝った深い音を聴かせる曲ばかり。

さて、“The Teaching” の2つのバージョンですが、どちらが上ということはなく。どちらもぐっと来る曲なのは変わらずです。
Allen Dariest Cato は、ミシェルと連名で “Cookie: The Anthropological Mixtape” の大半の曲をプロデュース、またギター等でも活躍。



2023年11月20日月曜日

Money Talks - The Album

Me’Shell NdegéOcello
“The Teaching”

1997年。90年代ブラックムービーのサントラ盤、映画の邦題は「ランナウェイ」。こちらに、ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello の数多いアルバム未収録曲の中でも、代表となるような一曲が収められています。
アルバム未収録ですが、ミシェルのセカンド・アルバム “Peace Beyond Passion”(1996年)からのシングル盤にも収録。

Stay (Soul Power Mix) / The Teaching


1997年発売。曲としてはセカンド・アルバムと同時制作だったのか、映画のための新録音だったのかは不明ですが。
アルバム・ボツ曲だったのかもしれませんが、そうとしても、このまま彼女のオリジナル・アルバムに収めるのもちょっと違うか、というぐらいストレートな三拍子のソウル・バラード(アレサのナチュラル・ウーマンみたいな)。
プロデュース、ドラム・プログラム、ミックスはデヴィッド・ギャムソン David Gamson 。ミックスのヘルプとしてボブ・パワー Bob Power の名前も。そして Allen Dariest Cato のギター。歌とベースを始めその他の演奏がミシェル。

ミシェルのボーカルにしても、(らしからぬほどに)情感がこめられています。 
最愛の恋人を失くしたという歌詞ですが、ひょっとするともっと大きいものを(例えば信仰を)見失ってしまったと歌っているのかも、と聴こえてしまうぐらい。
それほど歌いあげているミシェルというのもなかなか、でありましょうか。

“Stay (Soul Power Mix) ” もアルバム版に比べると、よりしっとりとした雰囲気に生まれ変わって。シングル盤ではうまい具合に、Stay(ここにいて)から The Teaching へと対になったような流れですし。
そしてこの曲 “The Teaching” には、まだ続きがあります。



2023年11月7日火曜日

Rare On Air (Live Selections From KCRW’s Morning Becomes Eclectic, Vol.3)

Me’Shell NdegéOcello
“Ecclesiastes: Free My Heart”

1997年。米国のラジオ番組 Morning Becomes Eclectic で放送したライブのコンピ盤。カリフォルニアはサンタモニカのラジオ局 KCRW の、現在も続いている音楽番組だそう(ウィキペディアより)。
ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello のセカンド・アルバム “Peace Beyond Passion”(1996年)に収録の曲を、ライブ版で聴けます。

あのセカンド・アルバムのほとんどの曲で叩いていたドラムのジーン・レイク Oliver Gene Lake が、こちらでも。このドラマーがまた、スティーヴ・コールマン Steve Coleman を始め大変な顔ぶれの皆々さまと共演しているツワモノで。ミシェルもそのつながりの中の(若かった)ひとりであると、いえるかも。
なお、この曲のアルバム版で目立っていたギターのデヴィッド・フュージンスキー David Fiuczynski は不在、代わりのギターはミシェルとは関わりの深い Allen Dariest Cato が。

ライブ版とはいえ、曲としてはアルバム版とほぼ同じ感じ。もちろん、アルバム版とは熱量、迫力が違います。当時のライブ動画を見ると、ミシェルは歌に集中したいのか、歌うときはベースは弾かずに、スタンドに立てかけていました。
さてクレジットでは、Track 11: 20-06-96. と記されていますが、これが放送日なのかライブ収録した日なのか、そして番組上では他にも曲を放送したのか不明です。とにかく、元となるミシェルのライブ音源が何処かに存在しているということで。



2023年11月5日日曜日

The Fusion Syndicate “A Speedway On Saturn’s Rings”

The Bottle

2023年。この曲の作者はギル・スコット・ヘロン、彼とブライアン・ジャクソンの二人の名義のアルバム Gil Scott-Heron / Brian Jackson “Winter In America”(1974年)に収録。そもそもこの元曲が良いわけですが、きっちりと作りこまれた、印象的なカバーになっております。

ドラムはカーマイン・アピス、ギター、ベースでフェルナンド・ペルドモと、Carmine Appice & Fernando Perdomo Project のコンビに加えて、さらにフルート、エレピでオリジナル版のご本人であるブライアン・ジャクソンが参加。ブーツィーのボーカルも聴かせる仕上がりに。

この曲、都市の生活をシリアスに歌った内容ですから、おいそれと(例えば白人のロッカーが気軽に)カバーできるような曲ではないのも確かで。今回はその辺りもクリアしたブレンド具合、ミルク多めの黒すぎない出来ばえでありましょうか。

バンド名というかアルバムの名義が、フュージョン連合(そのまま訳せば、混じり合った集まりとも)。ジャズ・ロックなんて懐かしの名前も思いだされる、ジャズというよりは温度高めのガッツ溢れるギター・インストといった曲が並ぶ中、唯一ボーカル入りのこの一曲が、あえてのギル・スコット・ヘロン、あえてのブーツィー起用とは。ロック好きにはどのように聴こえるのでしょうか。

先に挙げたピンク・フロイドのカバー集に、このアルバムと、ブーツィーのゲスト参加作が重なりましたが、(どちらも同じ系列の会社からの発売とはいえ)とにかくブーツィーが聴ける機会が増えるのは感謝であります。