2025年8月14日木曜日

Myron “Myron & The Works”

2008年。マイロンなる方が全曲を歌いプロデュースも本人がというアルバム。
ジャケットのデザインからするとジャズ系、少し小難しそうな印象もありますが、フックの効いたわかりやすい曲ばかり。案外に、切ない系、夏の終わりにいかがみたいな。

全9曲、チャールズ・ヘインズ Charles Haynes のドラムに、ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello がベース、エレピ(ローズ、ウーリッツァー)でロバート・グラスパー Robert Glasper という顔ぶれ。その他のギターやシンセをマイロン本人が。

充分に、ディアンジェロ D’angelo 好きにもお勧めできるような、歌ものアルバムであります。バンドの演奏も楽しめますし。
もしもディアンジェロがもっと頻繁に、3年置きほどにアルバムを発表していたら、このような一枚もあったかも、とそんな気もしないでもないような。

シンプルにラヴソング、夏の夕暮れに、みたいな風情で、親しみやすいジャケットにしてアピールするのも似合うかも。
とはいってもこの顔ぶれですから、歌伴にとどまらずに、さらに自由な演奏も聴いてみたいところ。一曲ぐらいインストを入れるとか、もう少しジャズに寄せたような。

なお、CDトレイの内側にはギターを抱えたマイロンの写真が。お気に入りなのでしょうか、Tシャツの胸にはジミの顔が。
本国盤CDを見ると、この写真がジャケットに使用されています。ですが、モノクロ 二階調化されていて、その際に加工したのか、ジミの顔も消されて別の模様に差し替えられています。




2025年7月27日日曜日

Steve Lehman “Demian As Posthuman”

Vapors
Logic - Meshell
Community

2005年。スティーヴ・リーマン Steve Lehman はニューヨーク生まれのサックス吹き。ジャズ、それに実験的 experimental music と紹介されていますが(ウィキペディアより)。
ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello がベースで参加したのは3曲。ドラムはエリック・マクファーソン Eric McPherson が、2曲でピアノのヴィジェイ・アイヤー Vijay Iyer も、という顔ぶれ。それに Turntables, Electronics としてDJの Jahi Lake が変な音を差しこんできたり。

緊密な無駄のない演奏。タイトながらバネがきいているというのか、引きこまれます。
この3曲を一日で録音したと記されているのですが、何回ほど練習したのか知りたいところ。やっぱり最初は譜面を渡されるのでしょうか、事前にデータで聴いているのでしょうか。
実験的といっても小難しいわけではなく、自分にとってカッコ良い音を狙ってる感じでしょうか。

なお全曲がスティーヴ・リーマンの作とクレジットされていますが、アルバムのエンディングでもあり “Community” と題された(共同体?仲間?)曲だけは、リーマンに加えて上記の参加者4名による作となっています。澄ました顔してそこはポイントだったのかも。



2025年7月6日日曜日

Mike Stern “Who Let The Cats Out?”

KT
Texas

2006年。マイク・スターンは米国ジャズの有名ギター弾き。80年代の若手時代には、マイルスやジャコともやっているくらいですから、フュージョンとかロックといった方面は当然のこと、スタンダードなジャズももちろん。
このアルバムもギター一辺倒でがむしゃらに弾き倒すわけではなく、ベテランとして、管楽器や鍵盤も交えたバンドで、自作曲を色々と展開しています。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello は2曲に参加。
どちらの曲も7分から8分と、じっくりと聴かせる長さで。正直、似たような曲調の2曲ですが、それだけに、あえて前には出てこない、ミシェルのスタイルが堪能できます。太く重いベースで曲を支えつつ、要所では、けっこうズビズビ走ったり跳ねたり。
“KT” には、トランペットでロイ・ハーグローヴ Roy Hargrove も参加。

また、別にヴィクター・ウッテン Victor Wooten が参加の曲もあり。これもアタマにどの字が付くようなファンクなベース。ミシェルとはまた違うスタイルですが。
ヴィクターの超絶技巧ぶりに関しては、彼がメンバーであるハードフュージョンなアルバムの諸作品でたっぷりと聴くことができます。強烈です。



2025年6月16日月曜日

Joshua Redman Elastic Band “Momentum”

Greasy G

2005年。ジョシュア・レッドマンは米国ジャズの有名サックス吹き。という彼の、ジャズ・ファンクなと紹介されることの多いアルバム。わざわざバンド名義の扱いにしてある、というのもそれっぽいところでしょうか。

Elastic とは、弾力のある、伸縮自在、しなやか、だそう。ブーツィーのラバーバンドとまったく同義、重なる名前なのですけども。
例えば先にロイ・ハーグローヴがグループとして発表したアルバム Roy Hargrove Presents The RH Factor “Hard Groove”(2003年)と比べてみても。このアルバムを聴くのは、大半がジャズ好きの方ではないかなという印象であります。部屋で座ってリスニング、みたいな。

主役のサックスが丹念にフレーズを重ねて、なにしろ真面目さが伝わってきます。真面目すぎて、部屋の掃除でもしながら、とか晴れた日のドライブに、には向いていないような。取っつきやすい歌もの曲もなし。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello は一曲に参加。太く重く、さすがにファンクなベースを聴かせます。
ゲストとしては、他にドラムのクエストラブ Questlove もプレイしている一曲があり。

ヒップホップよりは人力の、70年代なノリが溢れるサウンドですから、これはいっそライブ・アルバムとしてやってくれたらどうなのかな、なんて。ジャズ好きからは却下でしょうか。
それと、ジャケットのデザインはモノクロ写真で地味ながら、ブックレットの中面は転じて鮮やかなカラー写真に。それも本人の顔写真ばかり。バンド・メンバーやらスタッフやらは一切なし。



2025年5月24日土曜日

DJ Logic And Jason Miles “Global Noize”

A Jam 4 Joe

2008年。鍵盤のジェイソン・マイルス Jason Miles と、米国のDJ、ターンテーブリストによる連名のアルバム。
このDJ ロジックはジェイソン・マイルスのアルバムには先に幾度か参加していて、同じように、今作にはジェイソンのアルバム “Miles to Miles”(2005年)にゲスト参加した顔ぶれが引き続いて呼ばれたりしています。
ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello とドラムのジーン・レイク Gene Lake や、バーニー・ウォーレル Bernie Worrell 等、といった面々。

ミシェルが参加したのはアルバムのオープニングを飾る曲。
ミシェルのベースに、ヴァーノン・リード Vernon Reid によるギター、という組み合わせで。サックスでボブ・バーグ Bob Berg も、彼は1984年にマイルス・デイヴィス・バンドに参加して名を上げた、というジェイソン・マイルスと同じようなキャリアのお方。
聴きものはなんといっても、ミシェルのぐいぐい走るファンクなベース、アッパーなカッコ良さ。ヴァーノンもジェイソンも引き立て役に廻って、珍しくミシェルが主役でしょうか。

バーニー・ウォーレルの参加は2曲(2曲め “Spice Island” と9曲め “Pool Of Honey”)。曲も良いし、いつもの通りのバーニーの指さばき、鍵盤使いでこれも充分に楽しめます。 

このアルバム、世界中の音というタイトル通りにインドはボンベイ出身という女性ボーカルもいたりとエキゾチックな面もありますが、基本はダンサブルなインスト集。ビル・ラズウェル Bill Laswell をぐっとくだけさせたような具合でしょうか。あれほどインテリっぽく気取ってはいませんが。
クラブ向けのちょっとマニアなサウンドを聴かせそうなジャケットも、これがよく見るとチープ、なかなか雑な写真の切り貼りで。
その後、この Global Noize というグループ名で活動、スライのカバー・アルバム等を出しておりますが、やはりジェイソンという方は、スムースジャズの人のようであります。

ジェイソン・マイルスとミシェルのつきあいは古いようで、元々、米国のTV映画のサントラ盤だという “People: A Musical Celebration Of Diversity”(1995年)に収録されている、
Dave Koz and Jason Miles “Cara’s Theme”
という一曲があって。劇中曲でしょうか、これにミシェルがベースで参加している模様。この曲は翌年のジェイソン・マイルスのアルバム “Mr. X”(1996年)にも再収録。



2025年5月6日火曜日

Jason Miles “Miles to Miles”

Guerilla Jazz

2005年。鍵盤のジェイソン・マイルス Jason Miles という方、実際にマイルス・デイビス Miles Davis やマーカス・ミラー Marcus Miller とも共演しているそうですが、そのマイルスをネタにしたアルバム。
正式なアルバム・タイトルは “Miles to Miles: In the Spirit of Miles Davis” と紹介されている場合もあり。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello が参加したのはアルバム中でも地味な曲。
ミシェルはベースのみ。ドラムのジーン・レイク Gene Lake と共に、徹底して単調に、けして前には出てこないプレイに始終しています。
この二人なのだから、ちょっともったいない使い方かもしれませんが、それよりも、ミックスとかで、もっとズブズブと地を這うような、泥臭いファンクにも仕上げられるだろうなと思ったり。

このアルバムは、ミシェルも参加したロイ・ハーグローヴの Roy Hargrove Presents The RH Factor “Hard Groove” やジャック・シュワルツバルト Jacques Schwarz-Bart の “The Brother Jacques Project - Inspiration”(どちらも2003年)に近い音ではありますが、もっとスムースジャズ的といったら良いのでしょうか。よりBGMな。

他にも、“Voices On The Corner” という曲もあって、バーニー・ウォーレル Bernie Worrell とジェイソンの鍵盤同士二人だけでプレイしています。On The Corner ということでマイルスのあれをバーニーが!?と思いがちではありますが、まあ軽い冗談みたいなもので。肩すかしといいますか、これにしても藪の中に分け入っていくようなことはせず。

アルバム最大のおすすめ曲といえば、“Flamenco Sketches” かもしれません。
マイルスからインスパイアされた(と思われる)曲が並ぶ中で、唯一のマイルスのカバー曲。あのメロディを、愛されるスタンダード、あるいは人気の高いポップ・ソングとして、しっかりまとめたような。
ドラムはジーン・レイク、ピアノは松居慶子 Matsui Keiko が。とても気持ち良く。