2024年11月9日土曜日

Raul Midon “a world within a world”

Love Is Gonna Save My Life

2007年。ラウル・ミドン Raul Midon という方、写真を拝見しますと、南米はブラジルのシンガーソングライターなのかと思わせるような風貌をしております。スティーヴィー・ワンダーを彷彿とさせるなんて紹介しているのを見かけましたが。

米国を拠点に活躍中だという彼のこのアルバム、邦題は、世界の中の世界。ジャケットのデザインは、彼に聴こえる音、そして彼だけの世界を表現したものでありましょうか。彼は受け身ばかりではなく、ギターという音を発せられる道具を携えています。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello が参加したのは、あまりベースの出番もない、静かめの曲です。正直、ミシェルでなくてもいいような。とはいえ、もう間違いなく良い曲で。

なんとなく、ボブ・マーリィの歌など思い浮かべてみたり。ソウルフルとされる歌声と、ギター一本だけ、彼一人で充分に成り立つ曲をサポートするに徹するばかり。けして邪魔にならないようにしたら、この少ない音数になったのかもしれません。



2024年11月2日土曜日

Nguyên Lê Purple “Purple: Celebrating Jimi Hendrix”

Are You Experienced
Voodoo Child (Slight Return)

2002年。グェン・レ(Nguyên Lê)は1959年生まれ。両親がベトナム人で、彼自身はパリで生まれ育ったという、いわゆるベトナム系フランス人のギタリストだそう。
ジミのカバー集10曲、ですか。自身のオリジナル曲はなし、ですと。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello は二曲に参加。聴く前から期待値も上がる、ジミのあの代表曲、有名曲にてベースをプレイであります。

ミシェル自身もすでにジミをカバー。自分のアルバム “Bitter”(1999年)に、ジミのデビュー・アルバム(1967年)に収められていた “May This Be Love” を収録。
だから、一言ぐらいミシェルも教えてやれば良かったのに。ジミのカバーは、どれか自信のあるやつを一曲ぐらいにしておきなさいとかなんとか。
もう数多の皆々様がカバーしていますから。ましてアルバム一枚をジミでやるなんて。

この方も他との違いや自身の才気を見せたかったのでしょう、いろいろとアレンジして。ジャズに、ほんのりアジアン風味だったり。
タイトルを、トリビュートどころかセレブレーティングにまで持ち上げて。
聴く前に、こちらが勝手ながら想像したのは、この方のベトナムというワードだったでしょうか。そこに、ミシェルがからんでくるのだから、という期待だったかもしれません。

ドラムはテリ・リン・キャリントン Terri Lyne Carrington で、彼女とのつながりでミシェルが参加したと思われますが。彼女はかなり歌ったりもしていて。
ミシェルが歌うのも聴いてみたかった、もしもアジアン色がもっと出ていたら、とか実力派の強力なボーカルがいたなら、等々あったとしても。

数多のプロもベテランもアマチュアも。あの人もこの人も、誰もかれもがやった、それらを全てひっくるめた頭上のはるか遠くに、ジミ自身が光輝いて君臨しています。ぶっ飛んでいます。



2024年10月19日土曜日

Zap Mama “ReCreation”

African Diamond

2009年。マリー・ドルヌ Marie Daulne のソロ・プロジェクトだというザップ・ママ。
前作のアルバム “Supermoon”(2007年)に続いて、今回もミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello がベースで一曲に参加。

こちらはドラムがトニー・アレン Tony Allen によるもの。
ナイジェリアのラゴス生まれ、1970年代のフェラ・アニクラポ・クティ Fela Aníkúlápó Kuti を支えた伝説級ドラマー。

ということで、この曲の主役は歌として、準主役がトニー・アレンのドラム。
ことミシェルのベースに関しては、邪魔はしないとばかりに裏方に徹して引っこんでいます。曲の土台を支えるだけで、主張するようなフレーズはまったくなし。ミシェルのベースが目当ての者には、少々さみしい役割でしょうか。

アルバム全体としては、アフロ・ポップとかエスノ色みたいなワードはさほど気にせず聴けるものでしょうか。主役のキャラクターを飛び超えるとか、伴奏という以上に演奏をたっぷり聴かせるような展開は望めず。
このドラマーとミシェルの組み合わせであればもっと、という期待はまた次の機会に持ち越しであります。



2024年10月7日月曜日

Zap Mama “Supermoon”

Toma Taboo

2007年。ザップ・ママはマリー・ドルヌ Marie Daulne のソロ・プロジェクトだそう。
ウィキペディアによると複雑な背景を持った女性のようですが、2000年代以降はニューヨークを拠点に活動中とのこと。

この方の場合、コンゴ(旧ザイール)やピグミーといったワードも紹介されたりするようですが、このアルバムを聴くのにそれは特に気にしなくて良いかも。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello は一曲にベースで参加。この曲も、アフロ・ポップとかエスノ色は薄めのファンク寄り。
ミシェルのベースはいつも通りに重心低く、ズビズビと走っております。ではありますが、曲としてはどうも少し大人しく聴こえてしまうような。
“Red Hot + Riot”(2002年)や “Yerba Buena”(2003年)を聴いた後では、比べてしまうのも致し方ないところでしょうか。

ギターはデヴィッド・ギルモア David Gilmore ですが、もちろんロック畑で有名なあの方ではなく、スティーブ・コールマン Steve Coleman のアルバム等に参加したジャズ畑のギタリスト。
マリー・ドルヌの歌が中心とはいえ。演奏との間に距離があるというか浮いているような気も。



2024年9月30日月曜日

Yerba Buena “President Alien”

Follow Me

2003年。アンドレス・レビン Andres Levin 率いるイエルバ・ブエナ(ジェルバ・ブエナ)Yerba Buena のファースト・アルバム。

アンドレス・レビンはベネズエラはカラカスの出身、メンバーもキューバ出身等々で、活動拠点はニューヨークだそう。アフロ・キューバン、それにルンバ、サルサ、クンビア、ソカ、ブーガルー、そんなワードがマルチに飛びかうアルバムであります。

スペシャル・ゲストとして招かれた顔ぶれも、カルリーニョス・ブラウン Carlinhos Brown や、トレス Tres でマーク・リボー Marc Ribot に、ギターのデヴィッド・フュージンスキー David Fiuczynski やロイ・ハーグローヴ Roy Hargrove といった曲者ぞろい。
90年代後半にアート・リンゼイ Arto Lindsay を支えた仕事も評価されているアンドレス・レビンですが、フェラ・アニクラポ・クティへのトリビュート盤 “Red Hot + Riot”(2002年)に続いて、ここでもプロデュース、ミックスや録音に編集を始め、キーボードやギターもプレイと活躍。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello も一曲に、ベースおよびボーカルで参加。
アルバム “Red Hot + Riot” でアンドレス・レビン/イエルバ・ブエナと組んだ勢いそのままに、こちらも疾走する一曲。ロン・ブレイク Ron Blake のサックスも気持ち良く。彼はイエルバ・ブエナとしてアルバム全曲に参加。後半に少しだけ聴こえるミシェルの声も効果的。

アルバムとしては、エスニック度も上がって本格的に濃い曲もあるアルバムですが、ミシェルのこの曲は、“Red Hot + Riot” が気に入ったようなファンク好きも満足できる一曲でしょうか。実は同じセッションで録音したといわれても納得しそうなほど。

スペイン語のグループ名イエルバ・ブエナ(ジェルバ・ブエナ)は「良いハーブ」“good herb” と訳されるそう(ウィキペディアより)。ジャケットを見ればなんか思いきり吸いこんでいますが、暗いこと。それより、裏面の写真。ロバの背中にはターンテーブルが。こちらを楽しんでいる女性の図は明るく健康。



2024年9月23日月曜日

Red Hot + Riot

Me’Shell NdegéOcello + Yerba Buena! Featuring Ron Blake
“Gentleman”
Common, Me’Shell NdegéOcello + Djelimady Tounkara
“Tears + Sorrow”

2002年。フェラ・アニクラポ・クティ Fela Anikulapo Kuti へのトリビュート盤。
90年代から今も続く、Red Hot Organization の企画するチャリティ・アルバムのひとつですが、これが今聴いても気持ち良いこと。

アフロ・ポップ、エスノなアルバムということになりますが、ファンク好きにも充分に楽しめるさじ加減。
ディアンジェロ D’Angelo が二曲に参加。彼のアルバム “Voodoo”(2000年)の屋台骨を支えた顔ぶれがそっくりこちらにも、という具合で、その他色々と聴きもの多数であります。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello はニ曲に参加。
プロデュースはアンドレス・レビン Andres Levin とミシェルの共同で。ボーカルにベース、キーボードにウーリッツァーもと、ミシェルも聴かせます。

イエルバ・ブエナ(ジェルバ・ブエナ)Yerba Buena! と組んでの “Gentleman” では、ミシェルの地を這うベースが7分近く曲を突進させ、さらにバンドに燃料を注ぎこんで焚きつけていく感じ。
続く、1分30秒ほどの曲 “Tears + Sorrow” で、熱くなったエンジンをクールダウン。こちらは小品ながら、西アフリカのマリ共和国出身というギター弾きのジェリマディ・トゥンカラ Djelimady Tounkara と、ラップでコモン Common が参加。

どちらの曲にも参加したサックスのロン・ブレイク Ron Blake ですが、90年代にはロイ・ハーグローヴ Roy Hargrove の諸作、2000年代にはクリスチャン・マクブライド Christian McBride の諸作、といったアルバムでプレイしているサックス吹き。
この後の2005年の彼自身のアルバム “Sonic Tonic” は、ミシェルがプロデュースをすることに。また、同年のミシェルがまとめたアルバム “The Spirit Music Jamia: Dance Of The Infidel” の方にも一曲に参加していたり。
彼だけでなく、他の曲でもロイ・ハーグローヴ Roy Hargrove やアーチー・シェップ Archie Shepp といったジャズ屋がちらほらと。アフロ・グルーヴといいますか、それに似合う太いホーンを要所で聴かせてくれます。

イエルバ・ブエナ(ジェルバ・ブエナ)を率いるのが、アンドレス・レビン。
彼はこのアルバムの半数以上の曲にも関わっていて、プロデュースやエンジニア等、裏方としても重要な働きをしたと思われます。そしてこの後、イエルバ・ブエナ(ジェルバ・ブエナ)のファースト・アルバムを制作することに。