2025年12月30日火曜日

Robert Glasper Experiment “Black Radio”

The Consequences Of Jealousy

2012年。米国の鍵盤奏者であるロバート・グラスパーの、全曲にゲスト・ボーカルを招いた歌ものアルバム。彼の名前を一躍高めて、続編も第3作まで制作されたヒット作。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello も一曲にボーカルで参加。
ドラムを担当したクリス・デイヴ Chris Dave とは、ミシェルはもう幾度も共演済みのお馴染みさん。
彼はミシェルのアルバム“Comfort Woman”(2003年)で全曲のドラムを叩いており。
ミシェルのプロデュースした “The Spirit Music Jamia: Dance Of The Infidel”(2005年)でも、アルバムの半数の曲のドラムを任されていて。

他にミシェルがゲスト参加した単発でもいくつか。
ドリー・パートン Dolly Rebecca Parton へのトリビュートである “Just Because I’m A Woman - Songs Of Dolly Parton” や、チャーリー・パーカー・リミックス・プロジェクトの “Bird Up - The Charlie Parker Remix Project” といったアルバム(どちらも2003年)。
そして英国のバンドであるレディオヘッド Radioheads のカバー集 “Exit Music: Songs with Radioheads”(2006年)では、Me’Shell NdegéOcello & Chris “Daddy” Dave と連名の名義にて曲を提供、すっかり気心の知れた仲に。

ロバート・グラスパーとも、すでにマイロンのアルバム制作できっちり共演済み。Myron “Myron & The Works”(2008年)

広くに売れたアルバムです。ピアノの音も美しく、まずはジェントル、温かな、オシャレめ、なんて印象を受けるでしょうか。
ミシェル自身の作品にもこんなヒットがあればな、とは思うものの。

ミシェルがここで歌った曲は、タイトルを直訳すると「嫉妬した末に」、ミステリ風なら「嫉妬の顛末」、昭和歌謡風なら「涙のジェラシー」ですか。
ささやくようなつぶやくような声で歌っております。いろいろな感情が渦巻いているような詞、曲であります。夜明けも近いのかまだ遠いのか、あまり万人に受ける方ではないような役割りを担った曲で。

さてアルバム・タイトルですが、やはり Black Radio Station を意識したものと思われます。こちらはラジオ局といえばあれ、We-Funk を思い浮かべてしまう耳ですが。



2025年12月21日日曜日

Victor Wooten “Word And Tone”, “Sword And Stone”

Get It Right

2012年。ヴィクター・ウッテンは米国の有名ベース弾き。最高水準の超絶技巧を操るとの評価も高く。
“Word And Tone” は全曲がボーカル有りの歌ものアルバムで、これと対になる “Sword And Stone” の方はボーカル無しの基本インスト版。それぞれに独自の曲も有って、両者はバラ売りかセット売りか選べて。

以前のアルバム “Yin-Yang”(1999年)も同じような歌もの&インストの二枚組でした。
ゲストに招かれたブーツィーが、一曲(“What Crime Is It?”)を歌っていたり。その後もお互い交流を深めていく始まりとなりました。

それから10年以上を経ての、こちらはベテランの落ち着いた安定作といえるアルバムでしょうか。
ボニー・レイット Bonnie Raitt の名バラード “I Can’t Make You Love Me” のカバーも収録。ほどよくジャジーな大人のアレンジで(これはインスト版はなし)、かってプリンスも歌っておりましたが(やっぱり女性ボーカルが安心な)この曲を始めとして、スティーヴィー・ワンダー Stevie Wonder の “Overjoyed” など(これもインスト版はなし)穏やかめの歌が多く。
歌の後ろではベースがブンブンと走っていたりしますけれど。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello も一曲に歌とベースでゲスト参加。沈みこむようなファンクに呟くボーカル、渋いです。
アルバム “Sword And Stone” に収録のボーカル無しインスト版の方では、ボーカルに代わってホーンがメロディを歌っており。ミシェルのベースがもっと長く(ソロ・パートとか)聴けるとかいうこともなく。それぐらいの違いがあると良かったのですが。

このアルバムで、ちらほらとスライを思わせるようなところがあるのですが、案外に、ヴィクターにスライというのは似合うのかも。



2025年12月10日水曜日

Miguel Migs “Outside The Skyline”

Tonight
Close Your Eyes

2011年。ミゲル・ミグスは米国のDJ。ディープ・ハウス系とのことで、フロアで踊らせるだけでなく座って聴かせる系でもあるとのことで。
全曲にボーカル入りのこのアルバムも、要は歌もの。とてもオープンな空気感で、特別に音楽好きでない人にもすっと聴かせる親しみやすさ。ドライブ向けでしょうか。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello も二曲で歌っております。どちらもミゲル・ミグスとの共作で、ミシェルの歌を活かしたもの。サウンドに溶けこみながら、声の個性も消さずというバランス。
もっとダブっぽい処理やエコーをしていてもさらに好みだったりしますが、そこまで専門的にしないのが特長でもあり。

ミシェル本人は意識しているのかいないのか、2010年代にもなったこの頃には数少なめのポップ畑にぐっと寄ったお仕事であります。
この時期、クレイグ・ストリート Craig Street によるプロデュース仕事にも密に携わっていたミシェルでありますが、やはりこれも歌を聴かせる仕事なのは同じでしょうか。
ボーカル・ゲストとしてはミシェルの他にも、ハーフ・パイント Half Pint やフレディ・マクレガー Freddie McGregor といった、レゲエ畑から起用された名前も目立ちます。

ミシェルはこの後も再度、ミゲル・ミグスのアルバム “Dim Division”(2014年)で一曲を歌いますが。ミシェルが目当てであれば、まずは二曲入りのこちらがお買得。



2025年11月27日木曜日

Laïka “Nebula”

Visions

2011年。ライカ(ライカ・ファティエン Laïka Fatien の名前でも)はフランスはパリ出身の歌手。
アルバムはミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello によるプロデュース。ミシェルはアレンジと、また一曲のみベースのクレジットもあり。

なぜこのスローな曲(スティーヴィー・ワンダー Stevie Wonder “Visions” のカバー)だけベースをプレイしているのかは不明ですが、好きで選曲をしたとか、案外、最初はゲスト参加のつもりが結局はプロデュースまで手がけたとか。
ミシェルのプロデュースといっても、ミシェル自身のアルバムで聴かれるような音ではなく。ここは裏方で応援、主役の舞台設定を整えてあげたような感じで。

聴いていて気持ちの良いアルバムです。ジャズ・ボーカルのアルバムには違いありませんが、もっと広くに聴かれて欲しいような。ミシェルの狙いとしてもそんなところなのかも。
ビョーク Björk の “Boga” もやっておりますが、テンポを落としてこれも聴かせるカバーであります。

ミシェルのこの時期のオリジナル・アルバム、“Devil’s Halo”(2009年)、“Weather”(2011年)に参加し、ミシェルを支えた顔ぶれがこちらの方でもプレイしており。
ドラムのディアントニ・パークス Deantoni Parks に、ギターの Christopher Bruce (Chris Bruce) や、鍵盤の Keefus Ciancia の三人。
それにミックス、マスターはボブ・パワー Bob Power による、というミシェル陣営の顔ぶれ。

ミシェルのプレイした一曲を除いて、基本のベースは The Roots のマーク・ケリー Mark Kelley が担当、ドラムにはケンドリック・スコット Kendrick Scott の名前も。
またホーンで、三曲にオリヴァー・レイク Oliver Lake が。彼の息子でドラムのジーン・レイク Gene Lake とミシェルは度々共演していてお馴染みでありますが。

この時期、クレイグ・ストリート Craig Street によるプロデュース仕事にも密接に携わったミシェルですが、その良い影響、大げさにいえば共振も聴かれるような。アルバムは日本版もあり。


2025年11月22日土曜日

Amy Cook “Summer Skin”

2012年。前年の2011年から発表された、クレイグ・ストリート Craig Street によるプロデュース、そしてミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello がベースで全面的に参加、という女性歌手のアルバム3種の、そのひとつ。

エイミー・クックは米国の歌手。クレイグ・ストリートのプロデュースしたアルバム3種の中では、彼らしいカントリー・テイストも溢れつつ、これがもっともロック寄り。ドラムとギターの音がでかく、なにより腹にぐっと力を入れて声を出しているボーカル。
ゲストには大御所のロバート・プラント Robert Plant も二曲に参加。超有名な方ですが、ミシェルとの組み合わせというのも意外で面白いところ。

今作ではところどころでサイケ風味も聴かれて。ジャケットを見ると、これもサイケなデザインに思えてくるような。
写真のエイミー・クック氏が化粧というかペイントをしていて、額から鼻筋に引かれた線が、なんだか昔の70年代初期のSF映画を思わせるような。
フェイス・ペインティングは、ミシェルもアルバム “Comet, Come to Me”(2014年)でやることに。ミシェルの場合、未来のSFぽくもあり原始部族ぽくもあるデザインで。

さて、クレイグ・ストリートと密に関わったミシェルでありますが、この時期のオリジナル・アルバムというのが、
“Devil’s Halo”(2009年)、“Weather”(2011年)、それに、“Pour une Âme Souveraine: A Dedication to Nina Simone”(2012年)(ニーナ・シモン追悼作)。

これらの3作品と、クレイグ・ストリートのプロデュースしたアルバム3種は、幾人かの演奏者が共通していて。例えばギターの Christopher Bruce (Chris Bruce) は、アルバム6種のすべてに参加していたり。

ミシェルのこの時期の3作品に加えて、その前の “The World Has Made Me the Man of My Dreams”(2007年)でもドラムを叩いていたのが、ディアントニ・パークス Deantoni Parks という方であります。
ミシェルの4枚ものアルバムで、最重要ポジションである、ドラムという大役を務めた実力と実績。ミシェルを支えた重要人物のひとりといえますが。

なのですが、このドラマーに限っては、クレイグ・ストリートのプロデュース作品には、どこにも名前がなし。
この方、とあるインタビューで、ポップにはまるで興味がなしと言いきっていた人物であります。見事に対象外というのを徹底しているようで。



2025年10月29日水曜日

Alyssa Graham “Lock, Stock & Soul”

2011年。この年から翌2012年にかけて発表された、クレイグ・ストリート Craig Street によるプロデュース、そしてミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello がベースで全面的に参加、という女性歌手のアルバム3種の、これもそのひとつ。

アリッサ・グラハムは米国の歌手。さわやかなクセのない声、カントリー・テイストをうまくフォーキーに仕上げて、ゆったりとしたメロディで。このアルバムは日本版も発売。
逆にクレイグ・ストリートということでは、彼らしいダークな面までも期待すると少々物足りないかも。夜半ではなく、良く晴れた日中にも聴ける作品ということで。

ミシェルが目当てとなると、また違う聴きどころが。
クレイグ・ストリートのプロデュースしたこちらのアルバム3種には、ミシェルだけでなく、この時期のミシェルのオリジナル・アルバムの制作に携わったバンドの顔ぶれも幾人か参加していて。

ミシェルのこの時期のアルバムというのが、
“Devil’s Halo”(2009年)、“Weather”(2011年)、それに、“Pour une Âme Souveraine: A Dedication to Nina Simone”(2012年)(ニーナ・シモン追悼作)。

ギターの Christopher Bruce (Chris Bruce) は、ミシェルのこの3作品と共に、クレイグ・ストリートのプロデュースしたアルバム3種にもすべて参加。
かってPファンク一派の若手バンド、インコーポレーテッド・サング・バンドの一員だったギター弾き。アルバム INCorporated Thang Band “Lifestyles Of The Roach And Famouth”(1988年)でもしっかり弾いています。
ミシェルとPファンクのつながりや、しかも相当に頼りにされたというのが嬉しいところ。

それどころか彼は、ミシェルの “Comet, Come to Me”(2014年)、“Ventriloquism”(2018年)、“The Omnichord Real Book”(2023年)、“No More Water: The Gospel of James Baldwin”(2024年)とその後も現在までアルバムに参加し続けているのが驚き。ミシェルの女房役なのか懐刀なのか、その変化にずっとつき合っているのは確かで。
彼の場合、ミシェルに限らずかなり広い範囲の音楽家の方々ともやっておりますが。

鍵盤の Keefus Ciancia も、“Devil’s Halo” と “Weather” に参加、そしてこちらのアリッサ・グラハムのアルバムにも。
クレイグ・ストリートとミシェル陣営はこの時期とても密だったようです。