2024年6月22日土曜日

Just Because I’m A Woman - Songs Of Dolly Parton

Me’Shell NdegéOcello
“Two Doors Down”

2003年。ドリー・パートン Dolly Rebecca Parton へのトリビュートであるアルバム。ドリーの曲はそもそも誰彼となくカバーされて、多数ヒットもしていました。
映画の主題歌になって特大ヒットした “I Will Always Love You” とか、Zapp まで濃厚なカバーを披露していましたが。カントリー畑とソウル畑は隣りあわせの結びつき、という良い例でもあります。
こちらのアルバムは、そのドリー本人まで参加で一曲歌っていますから、まさに公認でしょうか。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello が、数あるドリーの曲の中でもこれをカバーすることになったのは、元曲の方に2バージョンがあって、アルバム版と、加えてディスコティックなシングル盤向けバージョンがあるから、でしょうか。ミシェルにぴったり、なんて単純な理由かもしれません。
なんにしても、ミシェルはこの歌を自分らしい色に染めあげていますけど。

元曲にある、いつまでも閉じこもっていないで(ふたつドアの向こうの部屋で開かれている)パーティに、思いきって顔を出しにいこう、という前向きさ、健康さはまるで失せています。
同じ曲、歌詞でも、立場の違う者が歌っているという感じ。

同じ2003年に発表されたミシェルのアルバム “Comfort Woman” は、ミシェルと Allen Dariest Cato のプロデュース、それにドラムのクリス・デイヴ Chris Dave を交えた三人が核となって作られたものでした。
ドリーをカバーしたこちらの一曲では、クリス・デイヴとミシェルの二人のみ。ドラム以外の、ギター、シンセ、プログラム、それにボーカルをミシェルが担当している形となっています。
この顔ぶれでの流れを引き継いで、今回もまたソリッドな。歌のバックでざくざくと鳴るミシェルのギターも印象的、ロックしてる感じ。

さてミシェルの色といいますが、説明するとなると難しい。



2024年6月8日土曜日

Disappearing Acts

Black Beautiful & Independent (Remember)

2000年。米国のテレビ放映向け映画、日本語版は「フェイス・イン・ラブ」の邦題でDVDとビデオ化もされた、というドラマのサントラ盤。
ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello の、アルバムには未収録の一曲がここに。

ミシェルの作、プロデュースはミシェルと Allen Dariest Cato 。
二人としては、先に映画「ベストマン」のサントラ盤 “The Best Man: Music From The Motion Picture”(1999年)に収録された、ミシェルの “Untitled” に続いての仕事です。曲のタイトルは “Remember” の場合もあり。

シンプルなビートに、起伏の少ないメロディ。ほのかな甘さと、セクシャリティ。じわじわと染みこんでくる良い曲であります。
抑えに抑えた音ですが、それでもいける、という自信もうかがえるような。

ライブでも主にギターを担当することが多い Allen Dariest Cato は、ミシェルとはバンド仲間で身内のようなものでしょうか。この二人が組むと、独特のソリッドな音になるようです。かなり、貢献の男。

この後、二人は “Cookie: The Anthropological Mixtape”(2002年)、続いて “Comfort Woman”(2003年)と二枚のアルバムをプロデュース。外部からのプロデューサーの力を借りることなく、自分たちでまとめ上げることに。
ファンカデリック Fankadelic の曲のカバーを含んだり、ラッパーをゲストに招いたり、あるいはレゲエしながら、自分たちにしか出せない音で、ひとつの節目になるような作品にまとめ上げます。




2024年5月25日土曜日

The Hurricane (Music from and Inspired by the Motion Picture)

Me’Shell NdegéOcello
“Isolation”

2000年。映画「ザ・ハリケーン」のサントラ盤。レイ・チャールズ、ボブ・ディランら超大物からそれなりの名前が並ぶコンピ盤。
ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello が提供した一曲は、ミシェルの作、プロデュースはミシェルとデヴィッド・ギャムソン David Gamson(ミックスも)。クレジットの記載はこれだけで、詳細はわからず。

演奏は二人だけなのでしょうか。
タイトルの通りに、孤立、隔絶された状態について、ミシェルがつぶやいていきます。シンプルなビートに、不穏なムード、誰かをなじるというよりは、現状への不満をタラタラとぼやいているような。

隔絶といえば、例えば男女の性差や、宗教観や国籍の違い、あるいは牢屋の中と外とか、状況もさまざまでしょうけれど。当事者として、分け隔てられた側から歌われる歌詞は、簡単には翻訳できず。意訳というか解釈もかなり必要な。
ミシェルの曲の中では、音楽よりも歌詞、言葉の方に寄った一曲でしょうか。とはいえ、まるでブーツィーか、というブチブチのベースも聴かせていますけど。

歌の後ろでずっとハーモニカが聴こえますが、ミシェルとも何度か共演しているグレゴア・マレ Grégoire Maret かもしれません。
ミシェル自身のアルバムには未収録。これ以降に、デヴィッド・ギャムソンとの仕事はなかったかと。



2024年5月18日土曜日

Scritti Politti “Anomie & Bonhomie”

Die Alone
The World You Understand (Is Over + Over + Over)

1999年。スクリッティ・ポリッティはグリーン・ガートサイド Green Gartside を中心とした英国のロック・グループ。80年代に、彼らと密接に関わっていたデヴィッド・ギャムソン David Gamson が、このアルバムの数曲にプロデュースやミックスで参加。その内の2曲に、ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello もベースとボーカルで参加。

デヴィッド・ギャムソンは、ミシェルのファースト・アルバム “Plantation Lullabies”(1994年)とセカンド・アルバム “Peace Beyond Passion”(1996年)にプロデュース等で関わった人物。
アルバムの他にも、ミシェルとはサントラや企画もの等のコンピ盤のためや、ゲストに招かれたりといった単発の仕事を数多くこなしてきた人物。
両者とも多方面の幅広いジャンルに対応できますし。お互いに招いたり招かれたりの協力関係だったかと思われますが。

このアルバムには、ミックスでボブ・パワー Bob Power や、ウェンディ&リサのウェンディ・メルヴォイン Wendy Melvoin 、それに Allen Dariest Cato といった方々も参加。ミシェルの仕事でもその後も見かける顔ぶれです。
2曲ともにミシェルのベースが走って、ボーカルも少々。特に “Die Alone” の冒頭1分ちょっとはミシェルも引き立って、このパートがずっと続いても良いのですが。

この年のミシェルの三作めのアルバム “Bitter” のプロデュースはクレイグ・ストリート Craig Street に。



2024年5月3日金曜日

Indigo Girls “Come On Now Social”

We Are Together
Compromise

1999年。インディゴ・ガールズ Indigo Girls はジョージア州アトランタ出身の女性デュオ。小学校で出会って以来のつきあいという二人だそうですが、多くにフォーク・ロックなどと紹介されております。

ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello は2曲にベースで参加。さわやかめの曲に激しめの曲と、デュオそれぞれの持ち味が活かされたという2曲ですが。
ミシェルに関しては、さほどの聴きどころは認められないような。

ベースのプレイはズビズビといつも通りの手抜きなし。ですが両曲ともに、これといって印象に残らず。使い方でしょうか。たまたまやっていた曲に参加してもらった、なんてこともあるでしょうから。

ところでライナーノーツの最後のページには、“Resources” として九つほど活動団体の名前とアドレス、活動内容の紹介が記載されています。いずれも弱者や少数派を支援するような団体等のようで、例えば筆頭に挙げられているのは、
Women’s Action for New Directions (WAND)

(楽曲よりも)こんなところでミシェルとつながっているのかも、なんて思ったりもして。



2024年4月27日土曜日

Holly Palmer “Holly Palmer”

Come Lie With Me
Lickerish Man

1996年。ホリー・パーマーは米国の女性シンガー。フォーキーながら案外ダンサブル、穏やかめのロック、といったところのデビュー作。2曲にミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello が参加。

デビュー作という割には、ジャケットが地味なイラスト、ポートレートの写真じゃないの的な、カントリーのような、70年代のような。
ホリー・パーマーはカリフォルニアはロサンゼルスを拠点に活動、生まれも海に面した街サンタモニカだそう。
ミシェルといえば、どちらかといえば東海岸なイメージでしょうか。陽光きらめく西海岸の女性ボーカルとの組み合わせでありますが。あくまでイメージですが、米国の東と西というのは、ジャズでもヒップホップでも匂いや肌ざわりの違いがつきものでした。

強烈なキャラとか声高になにか主張するといったタイプではないホリー・パーマーですから、この2曲もさらりと聴かせてくれる良い曲。
“Come Lie With Me” の出だしで、歌の裏にベースが入ってくる瞬間などはミシェルの細やかなプレイが聴けて、“Lickerish Man” では童謡のようなメロディをプリンスを思わせるようなファンク仕立てに。
なおこの2曲にはマーク・プラティ Mark Plati も参加、90年代にボウイと多くの仕事を行った彼とのつながりで、後にボウイのアルバム “hours...” と、そのツアー(1999年)にホリーが参加することになったのかも。

ミシェルにとってはマドンナだろうとホリーだろうと(呼ばれさえすれば)関係ないのでしょうけれど、彼女が後に三作めのアルバム “Bitter”(1999年)のプロデュースを、クレイグ・ストリート Craig Street に頼むことになるのも、案外こんなところからつながっていったのかもしれません。