2025年10月29日水曜日

Alyssa Graham “Lock, Stock & Soul”

2011年。この年から翌2012年にかけて発表された、クレイグ・ストリート Craig Street によるプロデュース、そしてミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello がベースで全面的に参加、という女性歌手のアルバム3種の、これもそのひとつ。

アリッサ・グラハムは米国の歌手。さわやかなクセのない声、カントリー・テイストをうまくフォーキーに仕上げて、ゆったりとしたメロディで。このアルバムは日本版も発売。
逆にクレイグ・ストリートということでは、彼らしいダークな面までも期待すると少々物足りないかも。夜半ではなく、良く晴れた日中にも聴ける作品ということで。

ミシェルが目当てとなると、また違う聴きどころが。
クレイグ・ストリートのプロデュースしたこちらのアルバム3種には、ミシェルだけでなく、この時期のミシェルのオリジナル・アルバムの制作に携わったバンドの顔ぶれも幾人か参加していて。

ミシェルのこの時期のアルバムというのが、
“Devil’s Halo”(2009年)、“Weather”(2011年)、それに、“Pour une Âme Souveraine: A Dedication to Nina Simone”(2012年)(ニーナ・シモン追悼作)。

ギターの Christopher Bruce (Chris Bruce) は、ミシェルのこの3作品と共に、クレイグ・ストリートのプロデュースしたアルバム3種にもすべて参加。
かってPファンク一派の若手バンド、インコーポレーテッド・サング・バンドの一員だったギター弾き。アルバム INCorporated Thang Band “Lifestyles Of The Roach And Famouth”(1988年)でもしっかり弾いています。
ミシェルとPファンクのつながりや、しかも相当に頼りにされたというのが嬉しいところ。

それどころか彼は、ミシェルの “Comet, Come to Me”(2014年)、“Ventriloquism”(2018年)、“The Omnichord Real Book”(2023年)、“No More Water: The Gospel of James Baldwin”(2024年)とその後も現在までアルバムに参加し続けているのが驚き。ミシェルの女房役なのか懐刀なのか、その変化にずっとつき合っているのは確かで。
彼の場合、ミシェルに限らずかなり広い範囲の音楽家の方々ともやっておりますが。

鍵盤の Keefus Ciancia も、“Devil’s Halo” と “Weather” に参加、そしてこちらのアリッサ・グラハムのアルバムにも。
クレイグ・ストリートとミシェル陣営はこの時期とても密だったようです。



2025年10月19日日曜日

Madeleine Peyroux “Standing On The Rooftop”

2011年。この年から翌2012年にかけて発表された、クレイグ・ストリート Craig Street のプロデュースによる女性歌手のアルバム3種に、ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello がベースで全面的に参加しており。その内のひとつがこちら。

マデリン・ペルーは米国の歌手。ジャズ系と紹介されることが多いようですが、つまりブルースからカントリーにロック、ポップスまで幅広く歌いこなすわけで。
その声や歌に、よく引き合いに出されるのがビリー・ホリデイ Billie Holiday の名前。本人も相当に意識しているようですが、嫌みは感じられず。

完全に歌が主役の、落ち着いたスロー系のアルバムですから、バンドのバッキングも過度に前に出ることはなく、ミシェルのベースも控えめですが、とはいえ。

ドラムはチャーリー・ドレイトン Charley Drayton で、しぶい仕事ぶりを多々見せる技巧派。一方で、キース・リチャーズ Keith Richards のソロ活動バンドや、ロベン・フォード Robben Ford のアルバム “Tiger Walk”(1997年)では、スティーヴ・ジョーダン Steve Jordan とバーニー・ウォーレル Bernie Worrell を相手にベースを担当したりも。
ギターの Christopher Bruce (Chris Bruce) は、かってPファンク一派の若手バンド、インコーポレーテッド・サング・バンドで活躍していたお方。アルバム INCorporated Thang Band “Lifestyles Of The Roach And Famouth”(1988年)でもしっかり弾いていました。
他にギターではマーク・リボー Marc Ribot や、またピアノでアラン・トゥーサン Allen Toussaint といった名前も。
ひと癖ありげな独特の顔ぶれでしょうか。マデリン・ペルーの自作の曲と共に、ビートルズやボブ・ディラン、ロバート・ジョンソンのカバーも交えながら、最後まで飽きさせません。

クレイグ・ストリートらしいダークさも良い塩梅で。彼のプロデュース作品でも、カサンドラ・ウィルソン Cassandra Wilson や、ミシェルのアルバムに比べれば、こちらは気軽に手に取りやすく。長く聴けるアルバムなのは同じ。