2020年1月26日日曜日

Opus Akoben “Art Of War”

1997年。強面三人衆の仏頂面、いかにもなジャケットの通り、ラップ・ボーカルのアルバム。プロデュースがスティーブ・コールマン(Steve Coleman)。

バックを固めるのはファイブ・エレメンツのメンバー。ジーン・レイク(Gene Lake)のドラムに、レジー・ワシントン(Reggie Washington)のベース。それにギターがデヴィッド・ギルモア(David Gilmore)、という強力な人力演奏であります。

これに先駆けて、ドラムとベースが同じ顔ぶれで、スティーブ・コールマン自身の名前をつけたアルバムもリリースされていました。

Steve Coleman And Metrics ‎“A Tale Of 3 Cities:The EP”(1994年)
Steve Coleman And Metrics ‎“The Way Of The Cipher”(1995年)


Metrics とは、直訳すれば、韻律学、作詞学とのこと。ファイブ・エレメンツとの違いは、ラップを前に立てているかどうかです。
“Sine Die” 以降の90年代前半も、独自にファンクしてきたスティーブ・コールマンですから。ドラムとベースを肝にしたソリッドなビート、JBズ的なホーンで裏方に徹したノリがこの上なく気持ち良く。

この頃、スティーブ・コールマンはザ・ルーツ(The Roots)のアルバム “Do You Want More?!!!??!”(1994年)、“Illadelph Halflife”(1996)に参加したり、ジーン・レイクもディアンジェロ(D'Angelo)の“Brown Sugar”(1995年)で一曲叩いていたり。
そして Metrics の延長に、Opus Akoben のこのアルバムが来ます。

Metrics でも大活躍したラッパー達が主役であります。ドラムとベースが肝なのは変わらず。タイトル “Art Of War” を訳すなら、“兵法” でしょうか。
これらのラップを前に立てた路線は、リズムはシンプルに、ホーン隊各自のソロ演奏も引っ込むとなれば、(ファイブ・エレメンツに比べて)不満を持つファンもいるかもしれませんが。
ファンクとしては、どれも気持ち良いこと極まりない演奏が聴けます。


2020年1月5日日曜日

Kevin Bruce Harris & Militia “And They Walked Amongst The People”

スティーブ・コールマン&ファイブ・エレメンツのアルバム “Sine Die”(1988)では、ケヴィン・ブルース・ハリスのゴリっとしたベース・プレイが、サウンドを魅力づけていました。
彼のファンクなベースは、グループがファイブ・エレメンツと名づけられてから最初の三枚のアルバムで聴けます。
そして1989年にリリースしたのが、初のソロ・アルバムであるこれ。

ケヴィンと民兵団(Militia)なんて物騒な名前ですし、ベースの音はもちろん大きめ。ベースのみという曲があったり、デヴィッド・ギルモア(David Gilmore)がロックなギターを鳴らしたり。とサービスはしてくれますが。ではありますが、これは普通にフュージョンでありましょうか。

なるほど策士スティーブ・コールマンが関わるか否か、活かすも殺すも深謀次第、でしょうか。残念なことに、“Sine Die” 以降のファイブ・エレメンツのアルバムには参加していないケヴィン・ブルース・ハリスであります。

それ以降の彼のベースを楽しむには、カサンドラ・ウィルソンの1990年代前半、彼女がブルーノートに移る前までの諸作が最適となるでしょうか。

Cassandra Wilson “Jumpworld”


1990年。このアルバムにはスティーブ・コールマンを始め、一派のメンバーも多数参加、改めてファンクしています。
それから1991年のライブ盤 “Live” も。“Sine Die” から等、ファイブ・エレメンツの曲をやっていたり。バンドの見せ場もしっかり用意されています。
とはいえ、ボーカルの伴奏であります。演奏だけをもっと集中して聴きたいと思っても、そうはいきません。

やっぱり、“Sine Die” 以降にも、ケヴィン・ブルース・ハリスが参加したファイブ・エレメンツのアルバムが(もう一枚か二枚ぐらい)あれば理想的でしたか。スティーブ・コールマン的には、単なる繰り返しかもしれないですが、ファンクな奴が。

Kevin Bruce Harris “Folk Songs - Folk Tales”


1994年。そしてそして登場した、二作めのソロ・アルバム。これが、さらに普通のフュージョン。穏やかめ、軽やかな曲ばかり。ファンクを期待すると不発。あのベースが鳴ってはいるのですが、もう一歩も二歩も、ファンク寄りでお願いしたいところ。