実際、チョコレート色の才人(株)などと名乗っている、この主役(社長か)を皆で応援しているからこその集まりなのでしょうけれど、音の方は真面目というか地味め。アルバムの日本版にあるオビの宣伝文句には、「シルキーでメランコリックな美が詰まった真夜中の音楽」とありますが、その通りであります。
プロデュースはクレイグ・ストリート Craig Street が。
ミシェル・ンデゲオチェロ Me’Shell NdegéOcello も参加者の一人ですが、クレイグとのつきあいはアルバム “Bitter”(1999年)からとして、この後の2010年代に入っても続くことに。
プリンス Prince やディアンジェロ D’Angelo のような黒っぽい曲があったり、ディランだったり、ミシェルやクレイグも参加したジョー・ヘンリー Joe Henry のアルバム “Scar”(2001年)を思い起こさせたり。要は米国らしい多彩な曲が並んでおりますが、キーワードは都会でしょうか。
チョコレート・ジーニアスの黒っぽさを前に出さないボーカルは、肌の色を売りにせず、自由に多くの曲を歌い演奏したいからでしょうか。
ミシェルの存在は特に目立たず、はっきりこれと聴きとれるような曲もなし。他の有名プレイヤーたちも同様で、まず曲ありきのアレンジ。クレジットも参加者たちの名前がひとくくりで並べてあるだけで、担当した楽器やら曲目といった詳細はなし。
強烈な個性やポップなつかみがなくても。じわじわと、聴くほどに彼のパーソナルな世界に引きこまれて。いつのまにか好きになっているような。